「5月25日に米国でジャーメル・ヘリング」とだけ決まっていたWBOジュニアライト級チャンピオン伊藤雅雪が臨む二度目の防衛戦。

その会場が決定しました。

フロリダ州キシミーのオシオラ・ヘリテージ・パーク、昨年7月28日に1-4のオッズをひっくり返してクリストファー・ディアスを大差判定で下したキシミーシビックセンターです(ネーミングライツがついて名称が変わったのでしょうか)。

いずれにしてもゲンのいい場所です。

ヘリングは33歳のサウスポーで、身長・リーチともに178㎝(伊藤は身長174㎝/リーチ179㎝)の米国人。

米国代表チームのキャプテンを務めて2012年ロンドン五輪(141ポンド階級/1回戦敗退)に出場するなどエリートアマからプロ入り。

ここまでの戦績は19勝10KO2敗。

二つの黒星は、デニス・シャフィコフ(2016年7月2日:10ラウンドTKO負け)、ラダリウス・ミラー(2017年8月22日:10ラウンド判定負け)に付けられてものです。

リング誌やESPNのジュニアライト級ランキングはもちろん、現時点ではWBOですらもランキングされていません。

「試合決定→ランキング登場」というアルファベット団体お決まりのコースを辿るのでしょうが、ヘリングが少なくとも実績上は世界基準のボクサーで無いことは明らかです。

「アマ経験なしであのボクシングを見せる伊藤には驚くしかない。しかし、彼は私との戦いで大きなトラブルに巻き込まれることになる。ディアス(身長168㎝)やイブゲニー・チュプラコフ(167㎝)と私は全く違う。彼は私を見上げて戦うことになる。私には彼らにはない長くて速くて強いジャブも、打ち下ろしの左まである」と、イラク戦争に二度も従軍したこともあるヘリングは自信を見せ「こんなチャンスはもうないだろう。人生の全てを賭ける」と意気込んでいます。

そして、ヘリングは5月25日という日にも運命を感じています。

この日はMemorial Day(戦没者追悼記念日)週間にもあたりますから、元海兵隊にとっては特別な意味があります。

しかし、そんなことが瑣末に思えるほど5月25日は彼にとって特別すぎる日付なのです。

「世界タイトルマッチがこの日付だと知らされたときは、心底驚いた。娘の誕生日だったんだ。彼女は2009年7月27日にSIDS(幼児性突然死症候群)で天国に行ってしまった。今でも誕生日には彼女の年齢を数えて泣いている」。

ヘリングは涙目で語ります。

「それにしても、こんなことってあるのだろうか?誰も私が勝つとは予想してないから、もし伊藤に勝てばとんでもないシンデレラストーリーになる。そして、そんなことがどうでもいいくらいに、娘へ送る最高の誕生日プレゼントになるんだよ。こんなことが現実にあるなんて…こんなチャンスが私に訪れるなんて…」。

イラク戦争で国のために命がけで戦い、五輪で星条旗を背負ったヘリングは愛娘の誕生日のリングに不撓不屈の精神で上がるでしょう。
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海兵隊の旗を広げる同僚に囲まれ勝利を祝福されるヘリング。

米軍とその家族を優遇、配布しているリング誌は「米国人ならヘリングを応援しない理由はひとかけらもない。謙虚でいつも気遣いを忘れないヘリングは、公平であるべきメディアから見ても好感度のかたまりだ」と、ヘリングに異例のエールを送っています。

しかし、こちとら日本人です。

海兵隊もヘリングの人生も、そんなもん知ったこっちゃありません。

誰だって負けられない物語の一つや二つを背負って、リングに向かうのです。

伊藤にとっては貴重な経験になります。

恐るべきハートで立ち向かってくる相手を迎え撃つことができるのですから。 

ヘリングの娘が「お父さん、あんなに強いチャンピオンと戦って立派だったよ。素晴らしいプレゼントをありがとう」と笑ってくれるような、そんな試合にしてみせましょう。

まあ、伊藤には関係の無いことです。

いつもと同じように、かっこよく戦って、かっこよく勝つだけです。