ディミトリー・ビボルが「ライトヘビー級からスーパーミドル級に下げる可能性がある」と公言しました。


昨年末から、ビボルだけではなく多くのライトヘビー級が「条件が整えば」と7ポンドも軽いスーパーミドルに下げると宣言しています。

ビボルの「可能性」、多くのライトヘビー級選手が口にする「条件」とは、言わずもがな、カネロ・アルバレス との対戦です。

昨年、カネロがスーパーミドル級進出を発表したことで、1階級上のライトヘビーまでが色めきだったのです。
CaneloRingBelt_Hoganphotos3-770x433DAZNとアスリート史上最高の契約5年400億円を結んだカネロ。ビボルでなくても「肉と骨を削ってでも彼と戦いたい」と思うのは当然です。


一昨年、米国スーパーフライ興行から井上尚弥戦をオファーされたカリド・ヤファイ陣営はその提案を拒否しました。

カル本人は「評価の高い井上と戦いたい」と乗り気でしたが、プロモーターのエディ・ハーンが10万ドルにも満たない低報酬に「お前と私をバカにしたオファーだ」と説き伏せたのです。

多くの日本ファンには「井上が怖くてヤファイが逃げた」と映ったようですが、不思議な理屈です。

かつて、井上よりも凶悪なボクシングで恐れられていた全盛期のマービン・ハグラーやマイク・タイソン、マニー・パッキャオらには階級まで超えて数え切れない強豪、ビッグネームが対戦を熱望しました。

彼らにあって井上に無いもの、それは何でしょうか?

それは、リスクを無視できるだけの巨大なハイリターンという名の人気、つまりは飛び抜けて高い報酬です。

井上が選ぶ雑魚挑戦者を「勇気ある」と紹介するアナウンサーは、見当はずれも甚だしい勘違いを犯しています。

井上が選ぶ雑魚挑戦者たちは多くの場合、ボクシングは副業、小遣い稼ぎです。井上陣営が提示する100万円レベルのファイトマネーでもキャリア最高のビッグマネーなのです。

そして、彼らはおしなべて評価が低いC級以下のボクサーで、惨敗して失うものなど一つもありません。井上と対戦できなければ、4団体王者時代でも一生涯世界に挑戦できないかもしれないのです。

井上との対戦にリターンこそあれ、何のリスクもありません(タコ殴りされるリスクだけです)。

大橋秀行会長は、かつて交渉のテーブルに乗ったジェルウィン・アンカハスに「通常の挑戦者の4倍の報酬を提示したが逃げられた」と語りました。

「通常の挑戦者の報酬」とはいくらくらいなんでしょうか?1000万円に遥かに及ばないのは間違いありませんが、100~200万円くらいは提示しているのでしょうか。それともそれ以下?

だとすると「4倍」のアンカハスには400~800万円程度でしょうか?

もちろん、ファイトマネーは両者の〝山分け〟ですが、その分配率は人気によって決まります。

ノニト・ドネアと西岡利晃は80万ドルの報酬を、ドネア7、西岡1で分け合いました。この7:1でも西岡はもらい過ぎと言われてしまいました。

一方で、パッキャオvsブローナーでは、最終的にパッキャオが約2500万ドル超、ブローナーは10分の1以下の250万ドルを受け取りました。

判定には今でも文句を垂れ流しているブローナーですが、10分の1の報酬には何一つ文句はないようです。

さて、ビボルの話に戻ります。

聖ぺテルスブルク出身のロシア人は明日、自身が持つWBAライトヘビー級王座の5度目の防衛戦に臨みます。

今日の計量ではリミットを1.5ポンド下回る173.5ポンドでクリア。

秤の上でガッツポーズするビボルは「熱望するカネロのスーパーミドル級168ポンドに落とすのは難しくない」と豪語しているようにも見えました。

世界的な統括団体が存在しないプロボクシングの世界では、世界王者は営利目的の承認団体が決める怪しい称号に過ぎません。

井上の対戦相手を例にとると、オマール・ナルバエスは制覇した二階級でそれぞれ二けた防衛した〝世界王者〟でしたが瞬間PFPにすらカスリもしない低評価でした。

二階級下の井上の挑戦を受けた試合でも圧倒的不利を予想される始末。雑魚専の典型的な〝数字だけ王者〟でした。

また、日本では「10年無敗王者」と喧伝されたジェイミー・マクドネルが腰に巻いていたのは、そもそもがWBAセカインドタイトル、リング誌でもESPNでも世界王者とは認められてません。

100歩譲って世界王者だとしても、マクドネルが誰もが認める階級最弱王者だったことに誰も異論はないでしょう。

もちろん、ナルバエスやマクドネルは世界基準で雑魚ではありません。しかし、日本で騒がれたような「伝説の名王者」でも「難攻不落の10年無敗王者」でもありえません。

「伝説の名王者だけどPFPとは全く無関係」「難攻不落で10年無敗だけど、階級最弱」というパラドクスは洒落にもなりません。

井上の対立王者はチキンで、挑戦者は勇気があるというのも大間違いです。

彼らはリスクとリターンのバランスを考えて、井上との対戦に美味みを感じないだけなのです。

雑魚挑戦者たちは、彼らにとって見たことのない高額報酬に引き寄せられて日本に来ただけです(アントニオ・二エベスとは米国で戦いましたが、あのリングは井上にとって〝ホーム〟もちろん二エベスも保証書付きの雑魚でした。

そもそも軽量級に旬のビッグネームは稀有です。

シーサケット・ソールンビサイとファン・フランシスコ・エストラーダはPFPクラスの実力者ですが、井上の方が減量が厳しいと〝逃亡〟してしまいました。

井上の肉体がジュニアバンタムではビッグネームとの対戦を待てないほどに減量が限界に達していたのは嘘ではないでしょうが・・・。

バンタムには存在しない名前の通った実力者がひしめいていたジュニアバンタムから、バンタムに上げたのは事実です。

だったら今から井上は、誰に勝てばいいのでしょうか?

ノニト・ドネアに勝っても〝老人いじめ〟、ゾラニ・テテは〝グラスジョーの並王者〟、エマニュエル・ロドリゲスは〝何も試されていない青二才〟・・・。

WBSSで優勝しても、穿った見方は避けられません。

ただ、劣化版ドネアでもナルバエスよりは遥かに評価は上です。ドネアについては、彼が最も稼げるのは日本のリングだと思うんですが(一時期100万ドルの報酬を得ていたのはGBPとトップランクとの裁判沙汰の綱引きから報酬が高騰しただけで、ドネアはPPVは論外、大会場メインの需要もありません)。

もし、ドネアvsテテが後楽園ホールで開催されるなら間違いなくフルハウスでしょう。私もなにがなんでも観に行きます。

そして、テテもロドリゲスもマクドネルとは違い、階級最弱王者だなんて誰も揶揄しません。

WBSS優勝は井上に、昨年のオレクサンダー・ウシク並みの評価(全米ボクシング記者協会の年間最高選手賞など)をもたらしてくれるはずです。

軽量級に関心が低い欧米では「最近はロマゴンのPFP1位とか軽量級びいきの評価が多いなあ」とげんなりするファンも多いでしょうが、〝逆輸入評価〟にめっぽう弱い日本のメディアとファンは沸き立つはずです。

日本で軽量級のメガファイト、統一バンタム級王者・井上にシーサケットが二階級制覇を賭けて挑むPFP対決!・・・なんてカードが組まれるかもしれません。

東京ドームでも、好景気に膨張するバンコクの巨大サッカースタジアムでも、できそうです!