日本のボクシングファンの代表的な勘違いといえば「軽量級でもラスベガスが本場」「軽量級でも億単位の報酬が稼げる」「井上尚弥は世界的に有名なボクサー」…。

これらはファンだけでなく西岡利晃を西海岸に迷走させる歪な原動力にもなってしまいました。
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マニー・パッキャオvsファン・マヌエル・マルケス第3戦。プロモーショナルツアーのメキシコシチー編。

この会見場前に何と3万人以上のファンが詰めかけました。

さらに驚くべきは、完全アウエーのはずのパッキャオを、メキシコの大群衆が大歓声と喝采で迎えたことです。敵地でブーイングを受けないどころかマニーコールまで受けるというのは、異常です。

「ブーイングではなく歓迎」という点では、日本のサッカーファンがブラジル代表やバルサを日本のスタジアムに迎えるときの反応と似ていますが「日本人殺し」なんて異名がついたらどうでしょうか?

メキシコのファンは「強い」と認めた相手には、そいつが「メキシコ人殺し」でも関係ないようです。ファンもスポーツマン、メキシカンスタイルです。

メキシカンスタイルの権化パッキャオは、メキシコで最も人気があって最も有名な外国人の一人ですが、米国や世界的には…?


 
しかし、勘違いしやすいのは世界中のボクシングファン共通です。

その原因の一つは「自分たちが今見ているプロボクシングはかつてのようなメジャースポーツではない」という視点の欠落です。

アリの時代までは、世界ヘビー級チャンピオンとはあらゆるスポーツの王様でした。 

しかし、そんな時代は40年近くも昔の話です。 

「あらゆる事象が米国より10年遅い」 と言われる日本、ボクシングでも同じです。30年前の具志堅用高を最後に、アスリートとして誰もが知っているボクサーは絶滅しました(辰吉丈一郎や亀田兄弟はアスリートというよりも一つのブームでした)。



マニー・パッキャオが恐るべき左ストレートと、燃えたぎる勇気を武器に米国リングを席巻、その名声が最も轟いていた2011年のリング誌(11月号)の特集を拙訳します。

以前「スポーツナビ+」のブログでも書いたはずですが、どっかに行っちゃったので書き直します。

おそらく、この記事を読んだ誰もが「まさか、そんなバカな」と笑うでしょうが、2011年時点のパッキャオは香川照之でなくとも「神が介在している」と考える熱狂的な信者が世界中にいたのです。

スケールダウンはしますが、プライムタイムのロイ・ジョーンズも同じ。

さらにずーーーっと、ずーーーーーっとスケールダウンして一時期の長谷川穂積や現在の井上尚弥の評価も、当時のパッキャオのようにデミゴッド級(ほぼ神)でした(井上は現在進行形ですね)。

「長谷川は原田を超えて日本PFP1位か?」なんて叫んでたボクマガの記者はそんなこと言ったけ?みたいな感じですし、「そうだ!長谷川最強!」と推してたファンもみんなどっかへいっちゃいましたねぇ。



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IS MANNY PACQUIAO
THE MOST POPULAR ATHLETE
IN THE WORLD?
 
マニー・パッキャオは世界一有名なアスリートなのか?

マニー・パッキャオは多くのメディア、専門家、ファンから「現代で世界最高のボクサー」と認められている。

それは、事実だ。

しかし「史上最高のボクサー」「史上最高のスピードスター」「史上最高の攻撃型ボクサー」「史上最高のサウスポー」…それらは本当かもしれないし、そうでないかもしれない。

バート・シュガー(元リング誌編集長)は「史上最高のサウスポー」と認めたが、それは高名な専門家の私見にとどまる。

そして、熱狂的なファンはこの小さなフィリピン人を〝a cultural icon〟(文化的な象徴)、〝A demigod〟(もはや神)とまで崇めているのだ。

元世界ヘビー級王者レノックス・ルイスは、このフィリピーノを「アパルトヘイトから南アフリカを解放してノーベル平和賞に輝いたネルソン・マンデラに匹敵する」とまで語っている。


レノックスはフィリピンを取材訪問し「どれだけすごい存在かはあらかじめ学習していたが、そんな想像をはるかに上回る存在だった。彼はフィリピンを救うだろう」と述懐しているが、ネルソン・マンデラとの共通点はボクサーというキーワードでしかない。

もちろん、偉大なマンデラがパッキャオファンだったことも知っているが、今のパッキャオはマンデラと比較する人物ではない、一介のボクサーに過ぎない。



では、マニー・パッキャオは世界一有名なアスリートなのか?

この問いには先に答えが必要だろう。熱心なパックマニアが騒ぎ出すかもしれないから。

答えはノーだ。完全なノー。


あ!先に答えを言ってしまう方が、パックマニアが狂乱する!順番を間違えた!

しかし、答えは変わらない。

マニー・パッキャオは世界のスポーツ界では、低い知名度のマイナーな名前に過ぎない。



「フォーブスのスポーツ長者番付に上位で名前が刻まれてるのに、マイナーなわけがない」?

なるほど。

では、あなたは本物の世界長者番付の7位が誰か知っているのか?もしかしたら1位も知らないくせに、聞かれたら自信なさげに「ビル・ゲイツ?」と小さな声で呟いちゃう人かな?


マニー・パッキャオ。確かにボクシングファンで、その名前を知らない人は世界中にいないだろう。

しかし、ボクシングファンはサッカーやバスケット、クリケットはもちろん、世界的にはマイナーの野球と比べてでさえもファンの総数ははるかに小さなコミュニティなのだ。

そして、そのコミュニティーはブラックホールのように、どんどん縮小している。

その縮小の加速度は、近い将来、いつかなくなってしまうほどに。



リオネル・メッシ、ミハエル・シューマッハー、ウサイン・ボルト、コービー・ブライアント、ウェイン・ルーニー、デイビッド・ベッカム…。

パッキャオは彼らよりも世界的に有名(認知度が高い)なのか?

それとも、彼らより認知度は低いが次のグループには所属しているのか?


それとも、そもそも彼らと比較するようなビッグネームではないのか?


タイム誌をはじめ一般誌やファッション誌までカバーし、その自伝がニューヨークタイムスのベストセラーリストに27週間もステイしたパッキャオが有名じゃないなんてありえるのか?

「タイム誌の表紙を飾る」「ニューヨークタイムスのベストセラーリストにアップされる」…それらは全て有名な裏付けにはならない。

タイムという週刊誌(増刊を含めたら年に60冊以上、10年で約700冊)をカバーした人物を、あなたは全員知っているのか?しかも、たった一度だけカバーした人物だ。

あなたはモハメド・アリを、タイムの表紙で初めて知ったのか?

ニューヨークタイムスのベストセラーリストの本を読んだことは?

あなたは、そこにアップされている作品と作者の名前をいくつ、何人挙げることができる?

まさか一つの作品も、一人も思い浮かばない?

メッシはタイム誌をカバーしないし、ベストセラーリストに載る著作もないが、パッキャオよりもはるかに世界的に有名なのだ。

では「米国での認知度」という尺度から、A demigod マニー・パッキャオを測ってみよう。


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この記事は2015年以前に書かれたものです。

何が言いたいかというと2015年の「パッキャオvsメイウェザー」は、一般層まで関心が持たれたメガファイトだったということです。

意外かもしれませんが、ボクサーとしてとっくの昔にピークが過ぎてPFPランキングの下位にも名前が載らない現在の方が知名度は少し上がっていると見られます。