今から9年前の2010年12月、WBSSを先駆けてもう一つの〝バンタム級最強決定戦〟がスタートしました。

HBOと並ぶ2大プレミアムケーブルSHOWTIMEが企画した、トップ選手4人のトーナメントです。

2009年から2011年にかけてスーパーミドル級で展開されたSuper Six World Boxing Classic(スーパー6)のバンタム級バージョンで、日本では「バンタム4」とも呼ばれていました。

スーパー6は、各ボクサーが3試合ずつ別の相手とグループステージを戦い、勝利はKO3点/判定2点、ドローは1点、引き分け0点の得点合計で上位4人がサドンデスの準決勝以降に進出するトーナメントでした。

カール・フロッチとミッケル・ケスラー、アルトゥール・アブラハムら欧州の強豪と、アンドレ・ディレル、ジャーメイン・テイラー、アンドレ・ウォードの米国勢が激突する構図でしたが、ホーム&アウエイで実施するとしていた規約はなぜか反故にされてウォードだけが決勝までの全試合を米国で戦ったのは理解に苦しみました。

ウォードは、メディアやファンの低評価をあざ笑うように淡々と勝利を重ねて、優勝をかっさらいます。

しかし欧州vs米国という一見魅惑的な対決も、特に欧州で開催するカードはスーパーミドル級に関心が低い米国ファンの興味をそそるものにはなりえませんでした。

さらに、丸2年に渡る長いトーナメントでテイラーやケスラーが離脱、ボクシングにおけるトーナメントの難しさを浮き彫りにしてしまったのです。

この反省を生かして、出場4人がいきなり準決勝でぶつかる短期決戦、さらに欧米で全く需要がない反面、コストが大幅に削減できるメリットもある企画として展開したのがバンタム4でした。

当初、当時階級最強と目されていたWBCチャンピオン長谷川穂積と、PFP10傑にも数えられていたノニト・ドネアも招待されましたが、驚くほど低い報酬に二人は参戦を見送ります。

準決勝を勝ち抜けたのはビック・ダルチニアンにスプリットデジションで競り勝ったアブネル・マレスと、IBF王者ヨニー・ペレスに3−0判定で勝利を収めたジョセフ・アグベコ。

Mares' purse was $300,000 for the fight, with Agbeko at only $130,000.

この決勝での二人の報酬はゴールデン・ボーイ・プロモーションの秘蔵っ子マレスが30万ドル、アグベコが13万ドルでした。

階級最強トーナメントの決勝にもかかわらず、人気者のマレスで30万ドル(長谷川穂積が雑魚相手に日本で防衛をしていたのとほぼ同じ金額です)、アグベコに至ってはその半分以下わずか13万ドルだったのです。
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マレスとの決勝戦に向けてポスター撮影のポーズをとるキングコング・アグベコ。報酬13万ドルはあまりに安いと思われますが、それでも彼のキャリアハイでした。

これが、米国における軽量級、バンタム級の現実です。

1990年代に、バンタムよりも関心が低いジュニアフライ級でマイケル・カルバハルとウンベルト・ゴンザレスがラスベガス・ヒルトンの大会場でメインを張り、両者が100万ドルを超える報酬を受け取ったことがありました。

米国人として五輪銀メダルを獲得したカルバハル(当時はまだ五輪ボクシングが全米で地上波生中継されていました)と、生粋のメキシカンのゴンザレス。

あの二人による試合だけが、欧米で行われたフェザー級以下で両者が100万ドルを手にした極めて稀な、超常現象といって差し支えない出来事でした。

日本では「バンタム級でもラスベガスなら何十億も稼げる」なんて妄想が、一部の蒙昧なファンだけでなく、記者までもが記述してしまってますが、ありえません。

亀海喜寛や三浦隆司、伊藤雅雪らの活躍を見て「軽量級のボクサーも本場米国で戦え」というのも完全な見当はずれです。

彼らは軽量級じゃないから米国を選んだのです。それに見合う報酬が約束されるから、太平洋を渡ったのです。

昨年「スーパーフライ」興行に出た井岡一翔の報酬は2万5000ドル、同じ興行でメインをつとめたメキシカンのファン・フランシスコ・エストラーダでも10万ドル、8年前のアグベコ以下なのです。

それが、米国の軽量級です。日本で戦う方がはるかに大きな報酬と、露出が期待できるのです。

日本では一部の(多くの?)ファン が「軽量級でも何でもかんでもラスベガスが本場」と妄信・誤解していますが、これが米国軽量級ボクシングの現実なのです。