井上尚弥がファン・カルロス・パヤノを沈めたワンツーには、彼の常套句である強引さは微塵も見られませんでした。

WBSSバンタム級トーナメントのオッズも、井上優勝はさらに強含みになるでしょう。

気の早い話ですが、座間の怪物がモハメド・アリ杯を抱いて、日本へ凱旋する、その日が今から楽しみです。

「パッキャオのようになりたい」。井上の目標は現時点でも非常に遠い高みです。

ボクシングの世界は「誰に勝ったか」でしか評価されず、その報酬も「誰に勝ったか」で決まります。

この「誰」は同じではありません。

バンタム級では準決勝でエマニュエル・ロドリゲス、決勝でライアン・バーネットに勝てばお山のテッペンです。

その勝利によって、バンタム最強は証明されます。

しかし、彼らに勝ったところで報酬、世界的知名度はたかがしれています。

バンタム級はマイナー階級なのです。

報酬、おカネの話で軽量級を見渡すと、ストロー級からジュニアフェザー級には100万ドルファイターは存在しません。それどころか10万ドルファイターすらも稀な存在です。

この階級スパンでは、日本のボクサーが最も恵まれた報酬に浴しています。リング誌もESPNも「後楽園ホールが軽量級のメッカ」と断言する所以です。

バンタム級も井上とバーネットを例外にすると10万ドルファイターは存在しません。

WBSS優勝賞金は100万ドルとも言われてますが、どこからその金額が出てくるのかはっきりしません。ジャパンマネーが流れるならわかりますが、世界的に需要のない階級で、その金額はにわかに信じることは出来ません

ファーストステージのクルーザー、スーパーミドルの報酬も当初発表されていた金額から随分寂しい数字になりました。

WBSSバンタム級優勝は世界中のマニアと専門メディアから賞賛されています。その通り、階級最強決定戦を立ち上げた功績は測りしれません。

しかし、バンタム気では普通に考えるとビッグマネーは手に出来ません。ボクシングは破格の報酬が大きな話題になることが珍しくありません。

しかし、それは何級でしたか?

パッキャオとメイウェザーは?カネロは?

バンタム級、軽量級で100万ドルファイターなんて、現役はおろか、歴史上でも何人聞いたことがありますか?

もちろん、日本で井上人気が沸騰して、スポンサーが多く集まるのなら分かりますが。

当たり前に100万ドルファイターが存在するのはウェルター級近辺です。しかし、井上のバンタム級118ポンドからウェルターの147ポンドは流石に遠すぎます。

では、小さな井上尚弥のレーダーでは100万ドルファイターは捕獲できないのか?

1階級上のアイザック・ドグボーが先日の初防衛戦で手にしたのは6万5000ドル。先週3度目の防衛に成功したダニエル・ローマンも5万ドルです。ボクシング大国メキシコのレイ・バルガスですら10万ドルがやっとです。

日本で戦う井上尚弥の半分にも満たないのです。残念ながらジュニアフェザーにも、大金稼ぐ人気者は一人もいません。

が、しかし。
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軽量級のボクサーとして単独でリング誌の表紙を飾ることも100万ドルファイターの夢も、元PFPキングのローマン・ゴンザレスですら叶いませんでした。欧米では軽量級を表紙にしても雑誌が売れないからです。軽量級は世界的には人気がなく、昨夜の横浜でもリングアナウンサーがバンタム級をフライ級と間違えましたが、そんなことも海外では珍しくありません。ただし、どんな世界でも例外はあります。

126ポンド、フェザー級まで目線を上げると100万ドルファイターが、ホームの観客を熱狂させる人気者が少なくとも3人はいます。

英国軽量級きっての人気者、カール・フランプトン。全米ボクシング記者協会が2016年の年間最高選手に選んだ実力も兼ね備えたビッグネームです。

そして、西海岸で飛び抜けた人気を誇るレオ・サンタクルス。バンタム級時代に山中慎介が対戦を熱望したメキシカンですが、全く相手にされず、〝El Terremoto(大地震)〟はより稼げる相手を求めてフェザー級に震源地を移してしまいました。

そして、アブナル・マレス。ゴールデン・ボーイ・プロモーションの秘蔵っ子として、当時全盛期だった長谷川穂積との対戦を回避するなど大切に育てられ「GBP生え抜き選手は世界王者になれない」というジンクスを初めて打ち破りました。これまた軽量級ではありえない人気者です。

この3人の他にも英国のジョシュ・ウォリントンもスターダムに急接近しています。
 
WBSSの仕掛け人、カレ・サウザーランドは「ジュニアフライなど軽量級でもWBSSを開催したい」と目論んでいますが、フェザー級では難しいでしょう。

WBSSが食指を伸ばしたクルーザー、スーパーミドル、ジュニアウェルター、バンタムの4階級は一見何の脈絡もないように見えますが「メキシコや米国のスター選手がいないニッチ階級」という共通点があります。

井上にはモハメド・アリ杯を獲得したら「WBSSには恩義がある」とか言ってジュニアフェザーのWBSSなんかに出場せず、フェザーのビッグネームに挑んで欲しいですね。

まさに、それは、それこそがマニー・パッキャオが辿った道、スター狩りの道なのですから。