Breez is Nice!

プロボクシングは公平なスポーツではありません。

AサイドとBサイドが厳然として存在します。二つを隔てる基準はやはりお金です。つまり人気です。より人気があるボクサーが興行をリード、Aサイドのボクサーは自分の土俵で戦えるのです。

ホームで試合を開催し、ルールの範囲内で自分のスタイルに有利なグローブ、リングの大きさ、マットの硬さ、ロープの緩み等を設定できます。

スーパーバンタム級以下のクラスは、日本が最も強力な市場です。英国やメキシコのほんの一握りの選手を例外にして、このクラスの世界戦の日本人の報酬は破格ですから、日本人がAクラスになります。

しかし、フェザー級以上になると少し様相が変わってきます。フェザー級だとメキシコのレオ・サンタクルス、アブネル・マレス、英国のカール・フランプトンあたりの人気選手になると、日本人世界王者よりも高い報酬を得ており、日本のリングに呼ぶには莫大な費用が必要になってしまいます。

他の選手は日本人よりはるかに少ない報酬しか得ていないことがほとんどですが、そんな彼らでもサンタクルスら人気選手と拳を交えるチャンスが期待出来るわけですから、フェザー級以上の世界ランカーにとっては日本人との試合は本命ではなく第二志望になるのです。

アメリカや日本、英国、メキシコ、プエルトリコといった経済やボクシング人気のバックボーンがある国の選手でなければ、世界王者になってもBサイドでの戦いを強いられることが普通です。マニー・パッキャオのような規格外なことをやり続けてBサイドのオセロを全部Aにひっくり返すような例は、まずありえません。

フェザー、スーパーフェザー、ライトと日本人なら相当に難易度が高いクラスで3階級制覇を果たしたベネズエラ人のホルヘ・リナレスもBサイドで踏ん張り続ける一人です。日本の帝拳、アメリカのゴールデンボーイプロモーションズという東西2大プロモーターの傘下に入っても、悲しいかな、日本にもアメリカにもリナレスの〝ホーム〟はありません。

WBAとリング誌のライト級王者であるリナレスは、日本時間の明日早朝に英国のマンチェスターアリーナでアンソニー・クローラと防衛戦を行います。「半年前の初戦が接戦、激戦だったから再戦となった」というのは冗談にもほどがあります。

初戦は1〜2ポイント差でリナレスの判定勝ちでした。その数字だけを拾えば接戦なんでしょうが、明らかなクローラ贔屓の判定で、現実のリングで起きたことはリナレスの完勝でした。

今回のオッズがクローラ勝利が約2.7倍に対して、リナレス勝利は約1.5倍という賭け率が、前戦の内容を正確に表しています。

じゃあ、どうして再戦なのか?

簡単な話です。初戦の契約に再戦条項(クローラが負けた場合、クローラが望めばリナレスは再戦を拒否できない)が盛り込まれていたからです。ただ、それだけの話です。実力で劣っていても’Million Dollar’の異名の通りクローラはリナレスよりも商業的な価値がはるかに大きいAサイド。仕方がないことです。だから、クローラは完敗してもまた有利な条件が揃った地元で戦えるのです。

リナレスにとって直近で完勝したクローラと再戦する意味はほとんどありません。遠回りに見えるかもしれませんが、Bサイドには近道は用意されません。Aサイド恒例の温室マッチメイクとも無縁です。目の前の試合を勝ち続けるしかありません。

しかし、こんな試合からリナレスにもパッキャオロードが開ける可能性が見えてきました。まさに瓢箪から駒です。

ESPNのインタビューにリナレスが答えています。
「私のゴールはアメリカで成功を収めること。今回のクローラ戦は全米でTV放映(ショウタイム)される。ここでファンの目を引く勝ち方をして、アメリカで人気の高い選手との試合につなげたい。もっと大きな試合に勝って、自分の評価を高めたいんだ」。

アメリカで名前を売る初っ端でアントニオ・デマルコ、セルヒオ・トンプソンと格下相手に星を落としてしまい、今年32歳になるリナレスのアメリカでの評価は高くありません。それでも彼は、クローラにもう一度勝つことで、ショウタイムとのつながりも続くと信じています。

この試合の勝者には、リナレスが拳の故障で休養したため空位となったWBC王座に就いたデジャン・ズラティカニンを鮮烈なKOで粉砕したマイキー・ガルシアとの統一戦が用意されていると言われています。

1階級下でPFP10傑にも名を連ねる、誰もが認める〝ハイテク〟ワシル・ロマチェンコとガルシアの一騎打ちは、全階級屈指の好カードとして実現が待たれていますが、リナレスにはこのシナリオをぶち壊す絶好のチャンスが与えられるわけです。

「ガルシア、そしてロマチェンコと戦いたいね。ガルシアは素晴らしい王者だが、一番興味をそそられることは彼が無敗であることだ。ガルシアの無敗を止めることに全精力を注ぐ覚悟がある。ロマチェンコは速くてとてつもない技術の持ち主だけど、私の方が速い。彼がライト級に上げてきたらイスマエル・サラスとじっくりゲームプランを練るさ。私はこの二人に勝つことが出来る。しかし、今はクローラと戦いに100%集中するよ、ここから全てが始まるわけだから」。

クローラに勝ってもBサイドの戦いは続きますが、ガルシアとロマチェンコに勝つようなことがあれば、重たいオセロもひっくり返るでしょう。さらに一つ上のスーパーライト級にはテレンス・クロフォードも控えています。

明朝ゴングが鳴るクローラ戦が夢の扉になるのは間違いありません。

まだ底を見せていない無敗のガルシア、ロマチェンコ、クロフォードと戦うとなれば、Bサイドはもちろん、圧倒的不利予想も確実です。さすがに、ホルヘがこの3人に勝つ姿は想像が出来ません。

もし戦わば、好戦的で打たれ弱いホルヘは無事で済まないでしょう。キャリアにピリオドを打たざるをえないような酷い負け方をする可能性が大です。

そうだとしても、マンチェスターに開かれた夢の扉の向こう側には、スターダムにつながるパッキャオロードが広がっています。こんな風景を拝める幸運なボクサーは滅多にいるもんじゃないです。

そして何より、そこがボクシングのリングである限り、何が起きたって不思議ではありません。そう、誰も予想だにしなかったことでも当たり前のように起きるのが、ボクシングのリングです。

Jorge ¡Venga Vamos!

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1ヶ月後に迫ったアンソニー・ジョシュアvsウラジミール・クリチコ。この一戦がボクシングの中心を再びヘビー級に引き戻す導火線となるのか?

今でこそヘビー級は、17階級の一つでしかありませんが、80年代まではその存在は圧倒的でした。ボクシングとはすなわちヘビー級であり、ヘビー級こそがボクシングだったのです。その歴史を紐解くと、スポーツの枠を超えた社会的な存在ですらありました。ヘビー級の歴史を振り返るには100年以上も前に遡らなければなりません。

19世紀後半、プロスポーツなど実質ボクシングしかありませんでした。おそらくスポーツという概念も無かったでしょう。ピュギリスト(職業拳闘家)たちは殴り合いを見世物にして、観戦入場者から集金した興行主から報酬を受け取って生業としていました。テレビもラジオもない時代、ゲート収入が唯一の売り上げでした。

1890年から2017年までの127年をディケイド(10年刻み)で辿っていきます。

■1890〜1899年:グローブ時代の夜明け■
最高のヘビー級王者はジム・ジェフリーズ。
トップ選手のスパーリングパートナーとして貴重な経験を積み重ねたジェフリーズは1899年にボブ・フィッツモンズをKOして世界王者に就きます。フィッツモンズは、ロイ・ジョーンズJrが2003年にジョン・ルイスを破ってヘビー級王者になるまでの104年間に渡り、史上唯一のヘビー級を制したミドル級王者でした。

ベアナックル最後の伝説、ジョン・L・サリバンからジム・コーベット、フィッツモンズと移ったグローブルール黎明期のボクシングはジェフリーズによって20世紀に引き継がれたのです。

■1900〜1909年:ガルベストンの巨人がカラーラインを引き千切る■
この時代、人種差別は違法ではありません。スポーツの世界ですら。黒人と同じリングに上がることを拒否できる権利「カラーライン」を使って、世界王者たちから敬遠されたジャック・ジョンソンは「黒人ヘビー級王座」の防衛を着々と重ねながら、王者トミー・バーンズとの対戦を熱望。世界中どこでもバーンズを追いかけまわし、1908年ついに豪州シドニーでバーンズをリングに引き上げます。

試合は一方的になってもジョンソンがトドメを刺さず、残酷な展開が進み、14回白人警官がリングに上がり込んで試合をストップ。〝TKO〟でジョンソンが悲願の世界王者になりました。この時のジョンソンの報酬は3万5000ドル、今の貨幣価値だと150万ドル!でした。

しかし、人種差別が歴然と存在する時代に、白人王者を嬲りものにした末に倒して莫大な報酬も受け取ることが許されたなんて、軽率な言動かもしれませんが、自由の国の度量の大きさもまた感じさせられます。よく暗殺されなかったとすら思いますね。

この時代ですでにヘビー級タイトルマッチは社会的なイベントであり、〝事件〟でした。それにしても、異なる人種のボクサーを同じリングに上げないカラーラインは、忌むべき人種差別でしたが、その事態は黒人の能力に恐れおののいた白人たちの見苦しい必死の自己防衛でした。

■1910〜1919年:転石苔むさず/デンプシー時代の幕開け■
1910年、無敗のまま引退していた19世紀の伝説、ジェフリーズが白人の復権を懸けてジョンソンに挑戦する世紀の対決が実現しますが完全なミスマッチに終わります。15ラウンド KOで王座を防衛したジョンソンは、過酷な差別に苦しめられていた黒人たちの希望の星でした。

全米各地でジョンション勝利を祝ったパーティーが暴動と見なされ、射殺される黒人までいました。しかし、黒人は白人に劣ってると叩き込まれ下を向いて生きるしかなかった彼らの真っ暗闇の心の中に、ジョンソンは一筋の光を、決して消えることのない光を確かに差し込ませたのです。

どんなに強いボクサーでも絶対に勝てない相手がいます。時間です。1915年、37歳になったジョンソンは、キューバはハバナの決闘で身長198㎝の巨漢ジェス・ウィラードに屈します。

白人復権を果たして〝アメリカの神〟になったウィラードが1919年7月4日に防衛戦を行った相手は身長185㎝、体重84kg、ヘビー級としては貧弱な24歳。この日が歴史にその名を刻むスーパースターの誕生日になるとは誰一人予想してなかったでしょう。

序盤から無名の若者の暴風雨のような猛攻を受けた王者は、鼻骨と3本も肋骨をあっという間にへし折られてしまいます。滅多打ちにされる神様の姿に大観衆は悲鳴をあげ、3ラウンドが終了するとコーナーはタオルを投げて、鮮烈すぎる王者交代劇が完了しました。

■1920〜1929年:転石苔むさず/ラジオの時代■
日雇い仕事を求めて全米を放浪していたジャック・デンプシーが1914年のデビュー戦で受け取った報酬はたったの3ドル50セント。それから7年後、1921年ニュージャージー州ジャージーの特設スタジアムに8万183人の大観衆を集めた防衛戦の興行規模は史上初の100万ドルを突破します。この頃のデンプシーの報酬は10万ドルを優に超え、大統領はもちろん、ベーブ・ルースも凌駕し、ヘビー級王者はとにかく別格という印象を世界に焼き付けました。

この時の相手はこれぞフランス人という〝蘭の男〟ジョルジュ・カルパンチェで、現役の世界ライトヘビー級王者。デンプシーのパワーと、カルパンチェのスピードの対決は、デンプシーの4ラウンドKO勝利に終わります。

カルパンチェが勝てば打ち上がるはずの蘭の花に模した薄紅色の花火を見ようと、パリでは多くのファンが夜空を見上げていました。しかし、パリっ子たちが待ち焦がれた花火はいつまでたっても上がらず、漆黒の夜空にようやく開いたのはフランス希望の花が撃ち落とされたことを伝える一筋の青い花火でした。

また、この試合は史上初めてラジオで実況生中継され、全米がリングの興奮をリアルタイムで共有出来る時代が幕を開けました。ゲート収入は依然として売上のほとんどを占めていましたが、唯一無二の収入源ではなくなりました。ラジオ放送権料、ラジオCMが収入を支えるようになります。ボクシング、世界ヘビー級タイトルマッチの興行規模と注目度、存在感は膨れ上がる一方でした。

どんなに強い王者にも必ず落日の時が訪れます。

1927年シカゴ・ソルジャー球技場。デンプシーのタイトルはジーン・タニーに〝ロングカウント事件〟の末にタイトルを明け渡します。73年後のタイソンvsダグラスは8ラウンドですが、この時は7ラウンドでした。6連発のデンプシーロールがヒットするとタニーはダウン。ここでニュートラルコーナーに行かなかったため主審がすぐにカウントを始めず、15秒近い回復時間を与えられてタニーが盛り返して、判定をものにしたのです。

激動の20年代から次の時代へ。新しい世界が胎動していました。

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ボクシング界の中心がヘビー級から離れてから幾星霜。

パウンドフォーパウンドも複数階級制覇もマネーvsパックマンも、ヘビー級とは無縁ですが、それらはある意味で詭弁でしかありません。パウンドフォーパウンドはヘビー級に勝てないボクサーの言い訳ですし、無差別級にとって複数階級制覇など必要ありません。メイウエザーとパッキャオは法外な報酬を手にしましたが、二人は大きな商売に成功した優秀なビジネスマンでしかなく、本当の最強を決める舞台は昔も今もヘビー級でしかありえません。

ヘビー級の権威、人気が失墜したというのはアメリカ国内の話ですが、ジャック・デンプシーやジョー・ルイス、モハメド・アリ、ジョージ・フォアマン、マイク・タイソンら世界的なスターを輩出してきたヘビー級の最大市場であるアメリカの没落は、ボクシングがニッチのスポーツに完全に追いやられた象徴でもあります。

来月、4月29日にロンドン・ウェンブリースタジアムで地元のアンソニー・ジョシュアとウラジミール・クリチコが WBAスーパー、IBF、空位のIBOタイトルを懸けて激突します。王者ジョシュアはロンドン五輪金メダルからプロ転向して18戦18KO無敗の27歳。対するクリチコは2015年にタイソン・ヒューリーに王座を明け渡すまで、兄ビタリとともに15年に渡ってヘビー級を実質支配してきたウクライナの誇りです。


【リング誌5月号の特集は「史上最強のヘビー級は誰か?」。ウラジミール・クリチコは非米国人では最高位の16位にランクイン】

大会場に用意された9万席のシートは既に完売、英国BBCでもジョシュアを「伝説の途上」と大々的に特集するなど、注目度の高さを改めて実感させてくれています。

ヘビー級のタレント不足が深刻な状況は変わりませんが、このメガファイトの勝者がアメリカ復権の希望を一身に背負うWBC王者デオンティ・ワイルダー(37戦全勝36KO)と激突するクライマックスは、ヘビー級人気再来を期待させてくれるストーリーです。

現時点では、ウィリアムヒルのオッズでジョシュアが2−1と有利。内訳ではジョシュアの判定勝ちが1.1倍で鉄板。一方、クリチコの判定勝ちも1.2倍ですから、判定にもつれこんだら五分の様相です。KO、ストップ勝ちならジョシュアに大きく傾き、5〜8ラウンドでジョシュアが試合を終わらせるという結果が約13倍で最も低い倍率になっています。

両者の会見は、非常に紳士的で好感が持てましたが、リング誌のインタビューでクリチコはジョシュアについて率直に語っています。「五輪王者でプロ無敗だが、試されていないことが多すぎる。恐れを知らない相手を前にしたら?何度もパンチを浴びても心身が耐えられるのか?倒されても立ち上がって戦う勝負根性があるか?劣勢で試合が進んでも流れを変える引き出しを持ち合わせているか?これら多くの問題に直面したとき、乗り越える能力がないのであれば、彼はもう一人のフランク・ブルーノに過ぎない」。

ブルーノは80〜90年代に活躍して、WBC王者にも就いた英国で爆発的な人気を博したヘビー級。40勝(38KO)5敗の成績を残しましたが、5つの黒星は全てKO負け。相手はジェームズ・スミス、ティム・ウィンザスプーン、タイソン(2敗)、レノックス・ルイスと、文句無しの一流どころではありましたが、この大一番に防御技術の低さと打たれ弱さ、そして精神的な脆さを露呈してことごとく敗北してしまうのです。キャリア最終盤にオリバー・マッコールに判定勝ちして、WBCタイトルをようやく掴んだものの、次戦でタイソンにあっさり敗れて引退。

ブルーノもまた、ボーンクラッシャー(骨まで砕く強烈なパンチを持つ)の異名を持つスミスに試されるまで、無敵の強さを魅せ続けていました。

「ブルーノとはアマチュアとしてのバックボーンが違う(技術の裏付けがしっかりしている)」「ブルーノのように過剰にちやほやされていない」と英国メディアはジョシュアに援護射撃を送っていますが、全ての答えは4月29日のリングの上で明らかになります。

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マニー・パッキャオが8階級制覇したスパンは108ポンド(50.80kg)から154ポンド(69.85kg)までの46ポンド(19.05kg)。現在の17階級の47%を占めます。

これに匹敵する、あるいは凌駕するボクサーは、長いボクシングの歴史を紐解いても存在しないのか?少なくともパッキャオが誰も寄せ付けない複数階級制覇王者とは言い切れません。

【しかしマルガリートとの体格差はやばかったですね】

最初のライバルは偉大すぎる先駆者、ヘンリー・アームストロング。1930年代を席巻した伝説です。8階級時代にフェザー、ライト、ウエルターの3階級を制覇、ミドル級にも挑戦、優位に試合を進めながらも4階級制覇は失敗。現在、増設された水増し階級のジュニアフェザー、ジュニアライト、ジュニアウエルター、ジュニアミドルを加えると7階級制覇になりますが、そんなイフよりもアームストログの3階級制覇は1団体8階級時代に成し遂げられたもので、暫定王者や決定戦王者など不純物無しの正真正銘の3階級制覇です。

アームストロングの逸話としてはわずか10ヶ月でフェザー、ウエルター、ライトの順に3階級制覇、そのタイトルを同時に保持していたことです。8階級時代に3階級同時保持ですからチャンピオンマップの8つの欄の内3つまでもにアームストロングの名前が刻まれたいたわけです。

そして、フェザーからいきなりウエルター級に挑んだ時はさすがに体重が下限に届かず大量の水を飲んで体重計に乗ったと言いますから、まさにパッキャオの大先輩ですね。そして、アームストロングがウエルター級王座を19度も防衛した点は、階級渡り鳥のパッキャオのレガシーで欠落しているところです。「内容」ではどう考えてもアームストロングに分がありますね。

続いて、ジェームズ・トニーさん。MMAに挑戦したり晩節を汚しまくった自由人です。「才能だけならトニーに勝るボクサーはいない」とパッキャオやタイソンも教えたローチが断言する天賦の人です。

ミドル級160ポンド(72.57kg)からヘビー級200ポンド(90.72kg)の40ポンド(28.17kg)に渡って世界トップレベルのパフォーマンスを見せました。ロイ・ジョーンズJrのヘビー級制覇が「空き巣泥棒」と揶揄され、それに反論できない鈍重な相手から勝利した「ひったくり」の1試合だけだったことを考えると、イベンダー・ホリフィールドをKOした星を始め、ハシム・ラクマン、サミュエル・ピーターらと拳を交えたトニーさんの功績はもっと評価してあげていいと思いますね。

ヘビー級を90.72kgで定義するのはナンセンスですから、トニーさんは実際には40ポンドどころではない体重の大航海をやってのけたことになります。リングに上がった最も重いウエイトは237ポンド(107.5kg)ですから、体重計の目盛りの振幅はパッキャオの比ではありません。

人間が決めた「階級」「王座」ではなく、「世界トップレベルで戦った体重の幅」で考えると、パッキャオはトニーさんの軍門に下ります。

「世界王者」としての体重の幅という観点から見ると当然、パッキャオが最大の振幅を見せつけます。しかし、パックマンが制した最も重い階級はジュニアミドルですがその試合は150ポンドのキャッチウエイトで行われ、なおかつリングには144ポンド1/2で上がっているのです。

ウエルター級を侵略したミゲール・コット戦(これも145ポンドのキャッチウエイト)は144ポンド、直近のジェシー・バルガス戦でも144ポンド3/4とパッキャオはジュニアミドルのリミットはおろか、ウエルター級ですら明らかに適正階級ではないことがよくわかります。

リミットを1kg前後も下回った体重でリングに上がっているというのは、ボクシングの常識では考えられません。パッキャオの適正階級はライト〜ジュニアウエルター級か、あるいは最もスピードとパワーのバランスが高い次元で結晶するのはジュニアライト級なのかもしれません。その適正階級でのベースがとにかく図抜けて高いから、はるかに上、最もレベルの高いウエルター級でも十二分に通用するパフォーマンスが披露できるわけです。

自分の体格・体重とはお構いなしに、最もカネと名誉が稼げる階級を求めて、より大きな看板をぶら下げたビッグネームの体臭を嗅ぎつけて、アジアの猛獣が辿りついたのが、ヘンリー・アームストロングやシュガー・レイ・ロビンソンから、レナード、ハーンズ、デュラン、フェリックス・トリニダードの系譜に連なる、デラホーヤやコット、メイウエザーが住んでいるウエルター級だったのです。

そういう意味ではパッキャオのジュニアライト級以降の階級制覇は、ロマゴンに代表されるような「この階級で体重を作ることはもう難しい」という肉体的な要因は全く無く、露骨に剥き出した「カネと名誉」への欲望に身を任せて拳を振り回し、突っ走った結果でした。

カネと名誉に目が眩んでいた頃のパッキャオは本当にエキサイティングなファイターでした。

しかし、あれほど飢えた猛獣でもカネと名誉を全て手に入れてしまったら、やはしパートタイムの番犬みたいになってしまうんですね。パックマンの貯金通帳には改めて桁を数えなければ、一目でいくらかわからない金額が記帳されていることでしょう。羨ましい限りですが、彼はもう一つ、貯金通帳を持っています。

もう彼の試合にギラギラの欲望の炎が燃え盛ることは期待出来ないということを十分にわかっていながら「まだヤツには猛獣の血が流れているはずだ」と多くのファンがやっぱり期待してしまいます。それこそが、彼がこの15年間大暴れするたびに貯め込んで来た目には見えない貯金通帳です。

この通帳残高がゼロになるまでパッキャオは戦い続けるつもりかもしれませんが、個人的にはもう十分です。ハイエナに莫大な貯金を食い尽くされる前に、何より健康な体のまま引退して、本物の貯金通帳をしっかり管理しながら母国を幸せにするために働いて下さい。

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ドジャースタジアムにそぼ降る雨を、アメリカの涙雨にしてやりましょう。

WBCの選手ほど割に合わない商売は滅多にないと思います。選手の報酬は200万円余りで、優勝で約400万円が加算、さらに優勝賞金(たった270万ドル、約3億円)の分配がありますが、山田哲人や坂本勇人の年俸は3億5000万円です。NPBシーズンでの故障やピークを早めたことでの不調で成績下降、来期減俸となるリスクを考えると経済的な魅力は皆無です。

さらに、サッカーワールドカップのようにそこで活躍したらビッグクラブが破格の報酬で迎えに来るという、選手の見本市・市場といった意味もありません。牧田明久がどんなに素晴らしいピッチングをしてもMLBのスカウトは「サブマリンは慣れられたらそこで終わり」と見向きもしないでしょう。

それなのに彼らは戦場に向かいます。まさに侍です。



それなのに、それなのにアメリカはWBCはそっちのけで、最大のスポーツメディア、ESPNの扉はプロバスケットの話題で埋められています。米国内の関心が低いことから今回が最後、なんて話も出てる始末です。お前らが始めたんだから少しは盛り上がれよ!

WBCの記事を見ても「この大会は日本では国民的な行事。今回で4回目で3回目の優勝となると東京の街はお祭り騒ぎになるだろう」と他人事です。

ESPNで日本を特集している記事を見つけたので紹介します。

*******「無敗の日本代表は本当に強いのか?*******
2006、2009年大会の優勝チーム並みに強いのかどうかはわからないが、このまま2連勝して前回大会のドミニカのように無敗のまま優勝する可能性は十分にある。

ただ日本チームは不安点も抱えている。まず予選ラウンドが恵まれていた。MLBに才能を吸い取られた抜け殻のキューバ、チームも国も揺らいでいる韓国は日本の敵ではなかった。オランダはMLB選手をそろえたチームだったが、やはり最後の最後まで苦しめられた。つまり強い相手をねじ伏せての全勝ではない。

そして青木宣親の3番。唯一のMLBプレーヤーだが、かつて日本代表のラインナップを彩った全盛期のイチロー、福留孝介、岩村明憲、城島健司らと比較すると35歳の青木の存在は頼りない。

さらに絶対的な投手がいない。優勝した日本代表には松坂大輔や上原浩治、岩隈久志、ダルビッシュ有、田中将大といったMLBで通用する投手を擁していた。今日先発の菅野智之は大谷翔平に次ぐ日本のNo.2投手だが東京ドームでは打ち込まれるシーンもあった。菅野の出来が少しでも悪ければ、サブマリンやサイドスローのアメリカ代表が慣れていない救援陣を迷うことなくつぎ込んでくるだろう。

打線の中核は筒香嘉智、昨年のNPBの好成績をMLBの成績に変換すると2割8分4厘、23本塁打というデータもある。侮れない。トップバッターの山田哲人もセカンドの守備さえクリアできればMLBでも間違いなく打つだろう。
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菅野、抜群の立ち上がり!行け行けーーーーー!!!

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