プロボクシングは公平なスポーツではありません。
AサイドとBサイドが厳然として存在します。二つを隔てる基準はやはりお金です。つまり人気です。より人気があるボクサーが興行をリード、Aサイドのボクサーは自分の土俵で戦えるのです。
ホームで試合を開催し、ルールの範囲内で自分のスタイルに有利なグローブ、リングの大きさ、マットの硬さ、ロープの緩み等を設定できます。
スーパーバンタム級以下のクラスは、日本が最も強力な市場です。英国やメキシコのほんの一握りの選手を例外にして、このクラスの世界戦の日本人の報酬は破格ですから、日本人がAクラスになります。
しかし、フェザー級以上になると少し様相が変わってきます。フェザー級だとメキシコのレオ・サンタクルス、アブネル・マレス、英国のカール・フランプトンあたりの人気選手になると、日本人世界王者よりも高い報酬を得ており、日本のリングに呼ぶには莫大な費用が必要になってしまいます。
他の選手は日本人よりはるかに少ない報酬しか得ていないことがほとんどですが、そんな彼らでもサンタクルスら人気選手と拳を交えるチャンスが期待出来るわけですから、フェザー級以上の世界ランカーにとっては日本人との試合は本命ではなく第二志望になるのです。
アメリカや日本、英国、メキシコ、プエルトリコといった経済やボクシング人気のバックボーンがある国の選手でなければ、世界王者になってもBサイドでの戦いを強いられることが普通です。マニー・パッキャオのような規格外なことをやり続けてBサイドのオセロを全部Aにひっくり返すような例は、まずありえません。
フェザー、スーパーフェザー、ライトと日本人なら相当に難易度が高いクラスで3階級制覇を果たしたベネズエラ人のホルヘ・リナレスもBサイドで踏ん張り続ける一人です。日本の帝拳、アメリカのゴールデンボーイプロモーションズという東西2大プロモーターの傘下に入っても、悲しいかな、日本にもアメリカにもリナレスの〝ホーム〟はありません。
WBAとリング誌のライト級王者であるリナレスは、日本時間の明日早朝に英国のマンチェスターアリーナでアンソニー・クローラと防衛戦を行います。「半年前の初戦が接戦、激戦だったから再戦となった」というのは冗談にもほどがあります。
初戦は1〜2ポイント差でリナレスの判定勝ちでした。その数字だけを拾えば接戦なんでしょうが、明らかなクローラ贔屓の判定で、現実のリングで起きたことはリナレスの完勝でした。
今回のオッズがクローラ勝利が約2.7倍に対して、リナレス勝利は約1.5倍という賭け率が、前戦の内容を正確に表しています。
じゃあ、どうして再戦なのか?
簡単な話です。初戦の契約に再戦条項(クローラが負けた場合、クローラが望めばリナレスは再戦を拒否できない)が盛り込まれていたからです。ただ、それだけの話です。実力で劣っていても’Million Dollar’の異名の通りクローラはリナレスよりも商業的な価値がはるかに大きいAサイド。仕方がないことです。だから、クローラは完敗してもまた有利な条件が揃った地元で戦えるのです。
リナレスにとって直近で完勝したクローラと再戦する意味はほとんどありません。遠回りに見えるかもしれませんが、Bサイドには近道は用意されません。Aサイド恒例の温室マッチメイクとも無縁です。目の前の試合を勝ち続けるしかありません。
しかし、こんな試合からリナレスにもパッキャオロードが開ける可能性が見えてきました。まさに瓢箪から駒です。
ESPNのインタビューにリナレスが答えています。
「私のゴールはアメリカで成功を収めること。今回のクローラ戦は全米でTV放映(ショウタイム)される。ここでファンの目を引く勝ち方をして、アメリカで人気の高い選手との試合につなげたい。もっと大きな試合に勝って、自分の評価を高めたいんだ」。
アメリカで名前を売る初っ端でアントニオ・デマルコ、セルヒオ・トンプソンと格下相手に星を落としてしまい、今年32歳になるリナレスのアメリカでの評価は高くありません。それでも彼は、クローラにもう一度勝つことで、ショウタイムとのつながりも続くと信じています。
この試合の勝者には、リナレスが拳の故障で休養したため空位となったWBC王座に就いたデジャン・ズラティカニンを鮮烈なKOで粉砕したマイキー・ガルシアとの統一戦が用意されていると言われています。
1階級下でPFP10傑にも名を連ねる、誰もが認める〝ハイテク〟ワシル・ロマチェンコとガルシアの一騎打ちは、全階級屈指の好カードとして実現が待たれていますが、リナレスにはこのシナリオをぶち壊す絶好のチャンスが与えられるわけです。
「ガルシア、そしてロマチェンコと戦いたいね。ガルシアは素晴らしい王者だが、一番興味をそそられることは彼が無敗であることだ。ガルシアの無敗を止めることに全精力を注ぐ覚悟がある。ロマチェンコは速くてとてつもない技術の持ち主だけど、私の方が速い。彼がライト級に上げてきたらイスマエル・サラスとじっくりゲームプランを練るさ。私はこの二人に勝つことが出来る。しかし、今はクローラと戦いに100%集中するよ、ここから全てが始まるわけだから」。
クローラに勝ってもBサイドの戦いは続きますが、ガルシアとロマチェンコに勝つようなことがあれば、重たいオセロもひっくり返るでしょう。さらに一つ上のスーパーライト級にはテレンス・クロフォードも控えています。
明朝ゴングが鳴るクローラ戦が夢の扉になるのは間違いありません。
まだ底を見せていない無敗のガルシア、ロマチェンコ、クロフォードと戦うとなれば、Bサイドはもちろん、圧倒的不利予想も確実です。さすがに、ホルヘがこの3人に勝つ姿は想像が出来ません。
もし戦わば、好戦的で打たれ弱いホルヘは無事で済まないでしょう。キャリアにピリオドを打たざるをえないような酷い負け方をする可能性が大です。
そうだとしても、マンチェスターに開かれた夢の扉の向こう側には、スターダムにつながるパッキャオロードが広がっています。こんな風景を拝める幸運なボクサーは滅多にいるもんじゃないです。
そして何より、そこがボクシングのリングである限り、何が起きたって不思議ではありません。そう、誰も予想だにしなかったことでも当たり前のように起きるのが、ボクシングのリングです。
Jorge ¡Venga Vamos!
AサイドとBサイドが厳然として存在します。二つを隔てる基準はやはりお金です。つまり人気です。より人気があるボクサーが興行をリード、Aサイドのボクサーは自分の土俵で戦えるのです。
ホームで試合を開催し、ルールの範囲内で自分のスタイルに有利なグローブ、リングの大きさ、マットの硬さ、ロープの緩み等を設定できます。
スーパーバンタム級以下のクラスは、日本が最も強力な市場です。英国やメキシコのほんの一握りの選手を例外にして、このクラスの世界戦の日本人の報酬は破格ですから、日本人がAクラスになります。
しかし、フェザー級以上になると少し様相が変わってきます。フェザー級だとメキシコのレオ・サンタクルス、アブネル・マレス、英国のカール・フランプトンあたりの人気選手になると、日本人世界王者よりも高い報酬を得ており、日本のリングに呼ぶには莫大な費用が必要になってしまいます。
他の選手は日本人よりはるかに少ない報酬しか得ていないことがほとんどですが、そんな彼らでもサンタクルスら人気選手と拳を交えるチャンスが期待出来るわけですから、フェザー級以上の世界ランカーにとっては日本人との試合は本命ではなく第二志望になるのです。
アメリカや日本、英国、メキシコ、プエルトリコといった経済やボクシング人気のバックボーンがある国の選手でなければ、世界王者になってもBサイドでの戦いを強いられることが普通です。マニー・パッキャオのような規格外なことをやり続けてBサイドのオセロを全部Aにひっくり返すような例は、まずありえません。
フェザー、スーパーフェザー、ライトと日本人なら相当に難易度が高いクラスで3階級制覇を果たしたベネズエラ人のホルヘ・リナレスもBサイドで踏ん張り続ける一人です。日本の帝拳、アメリカのゴールデンボーイプロモーションズという東西2大プロモーターの傘下に入っても、悲しいかな、日本にもアメリカにもリナレスの〝ホーム〟はありません。
WBAとリング誌のライト級王者であるリナレスは、日本時間の明日早朝に英国のマンチェスターアリーナでアンソニー・クローラと防衛戦を行います。「半年前の初戦が接戦、激戦だったから再戦となった」というのは冗談にもほどがあります。
初戦は1〜2ポイント差でリナレスの判定勝ちでした。その数字だけを拾えば接戦なんでしょうが、明らかなクローラ贔屓の判定で、現実のリングで起きたことはリナレスの完勝でした。
今回のオッズがクローラ勝利が約2.7倍に対して、リナレス勝利は約1.5倍という賭け率が、前戦の内容を正確に表しています。
じゃあ、どうして再戦なのか?
簡単な話です。初戦の契約に再戦条項(クローラが負けた場合、クローラが望めばリナレスは再戦を拒否できない)が盛り込まれていたからです。ただ、それだけの話です。実力で劣っていても’Million Dollar’の異名の通りクローラはリナレスよりも商業的な価値がはるかに大きいAサイド。仕方がないことです。だから、クローラは完敗してもまた有利な条件が揃った地元で戦えるのです。
リナレスにとって直近で完勝したクローラと再戦する意味はほとんどありません。遠回りに見えるかもしれませんが、Bサイドには近道は用意されません。Aサイド恒例の温室マッチメイクとも無縁です。目の前の試合を勝ち続けるしかありません。
しかし、こんな試合からリナレスにもパッキャオロードが開ける可能性が見えてきました。まさに瓢箪から駒です。
ESPNのインタビューにリナレスが答えています。
「私のゴールはアメリカで成功を収めること。今回のクローラ戦は全米でTV放映(ショウタイム)される。ここでファンの目を引く勝ち方をして、アメリカで人気の高い選手との試合につなげたい。もっと大きな試合に勝って、自分の評価を高めたいんだ」。
アメリカで名前を売る初っ端でアントニオ・デマルコ、セルヒオ・トンプソンと格下相手に星を落としてしまい、今年32歳になるリナレスのアメリカでの評価は高くありません。それでも彼は、クローラにもう一度勝つことで、ショウタイムとのつながりも続くと信じています。
この試合の勝者には、リナレスが拳の故障で休養したため空位となったWBC王座に就いたデジャン・ズラティカニンを鮮烈なKOで粉砕したマイキー・ガルシアとの統一戦が用意されていると言われています。
1階級下でPFP10傑にも名を連ねる、誰もが認める〝ハイテク〟ワシル・ロマチェンコとガルシアの一騎打ちは、全階級屈指の好カードとして実現が待たれていますが、リナレスにはこのシナリオをぶち壊す絶好のチャンスが与えられるわけです。
「ガルシア、そしてロマチェンコと戦いたいね。ガルシアは素晴らしい王者だが、一番興味をそそられることは彼が無敗であることだ。ガルシアの無敗を止めることに全精力を注ぐ覚悟がある。ロマチェンコは速くてとてつもない技術の持ち主だけど、私の方が速い。彼がライト級に上げてきたらイスマエル・サラスとじっくりゲームプランを練るさ。私はこの二人に勝つことが出来る。しかし、今はクローラと戦いに100%集中するよ、ここから全てが始まるわけだから」。
クローラに勝ってもBサイドの戦いは続きますが、ガルシアとロマチェンコに勝つようなことがあれば、重たいオセロもひっくり返るでしょう。さらに一つ上のスーパーライト級にはテレンス・クロフォードも控えています。
明朝ゴングが鳴るクローラ戦が夢の扉になるのは間違いありません。
まだ底を見せていない無敗のガルシア、ロマチェンコ、クロフォードと戦うとなれば、Bサイドはもちろん、圧倒的不利予想も確実です。さすがに、ホルヘがこの3人に勝つ姿は想像が出来ません。
もし戦わば、好戦的で打たれ弱いホルヘは無事で済まないでしょう。キャリアにピリオドを打たざるをえないような酷い負け方をする可能性が大です。
そうだとしても、マンチェスターに開かれた夢の扉の向こう側には、スターダムにつながるパッキャオロードが広がっています。こんな風景を拝める幸運なボクサーは滅多にいるもんじゃないです。
そして何より、そこがボクシングのリングである限り、何が起きたって不思議ではありません。そう、誰も予想だにしなかったことでも当たり前のように起きるのが、ボクシングのリングです。
Jorge ¡Venga Vamos!