チェコの小さな町、ドマジュリツェに〝凱旋〟した北口榛花。

NHKをはじめ、多くの民法テレビが報道したので目にした方も多いのではないでしょうか。

人口1万人の町で、200人のお出迎え。こじんまりした〝凱旋〟でしたが、日本人として見ていて嬉しくなる映像でした。

「(チェコ名物の)ビールは好きか?」と聞かれた北口は「ビールは苦くて嫌いだったけどチェコに来て飲めるようになった」と答えていたのが、印象的でした。

ここからは私の勝手な想像ですが、彼女は今もビールを好きではないと思います。

大会で優勝してレポーターから「今、何がしたい?」と聞かれるのを何度か見ましたが、「チェコのビールが飲みたい!」とは一度も聞いたことがないからです。

実際はそうではなくても、そう発言したならチェコをますます喜ばせることができるのに、彼女はそういう、良い意味でリップサービス、悪くいうとウソはつけないアスリートです。

そんなわざとらしさが微塵もないのも、魅力の一つかもしれません。



月陸、雑誌「月刊陸上」のチャンネルです。



…高校時代、野球部と兼部する形で陸上競技部にも籍を置いていた私。

短距離と跳躍、複合競技をこなす、ひとつ上の先輩から「野球やってるならヤリを綺麗に飛ばせるって言われてんの知ってる?これ、逆もまた然りなんやけど。強肩やって聞いてるで、君」と、私にちょっと投げてみろとヤリを渡してきたことがありました。

野球の強肩選手は投擲種目にも向いているーーーというのはメカニクス的にも正しいのですが、だからといって全く同じではありません。

私が初めて投げたそのヤリは、急に失墜する紙飛行機のように20メートルほどゆらゆら飛ぶと地面に刺さることなくパシャっと腹這いにワンバウンドしました。

先輩は、何度投げてもきれいな放物線を描かない私の槍を大声で笑いまくりました。

先輩が短い助走で力感なくスッと投げると、槍は放物線の弧を描きながら、30メートルほど飛んで土のグラウンドにきれいに刺さりました。

「君は中長距離を走ってればよろしい」と言われた私は全く悔しくなかったのですが、槍は奥深いなあと感心したのを覚えています。

記録会や試合のスタンドには、強豪校の投擲ブロックが作った応援横断幕がいつも翻っていました。

そこには、力強い真っ黒の筆文字で「描け、大放物線」と揮毫されているのです。



中高だけでなく、大学の陸上競技部でも投擲ブロックに入部する選手が世代を繋げず、槍やハンマー、円盤、砲丸が手入れもされずに錆びたり、劣化して使い物にならず、廃棄されているというニュースを聞きました。

1年ほど前に、よく顔を出す高校の野球部の子が「体育倉庫にあったコレはなんだ?」と2枚の円盤を重ねてガチャガチャ鳴らしながら聞いて来たことがありました。

円盤の周囲をぐるっと回る鉄枠が錆びついているのを見ると、さすがに悲しくなりました。

最近はカーボンファイバーを使った最新型が流通していて、しっかり手入れをしていてもとっくに〝引退〟している代物ですが、かつてこの高校の陸上競技部にも円盤投げの選手がいたということです。

北口榛花の活躍を見て、私も投げてみたい、俺も大放物線を描きたいという中高生が増えてくれたら嬉しいのですが…。