
昨夜、放送された「映像の世紀バタフライエフェクト」をNHKの配信サービスで見直しながらお昼ご飯。
秀逸なドキュメンタリーの新章、その第1回にモハメド・アリが選ばれたことはボクシングファンは静かな喜びでした。
番組テーマは「蝶の羽ばたきのような、ひとりひとりのささやかな営みが、いかに連鎖し、世界を動かしていくのか?」?
アリの行動を「ささやか」というには少し無理がありますが、アリの羽ばたきにマイノリティが呼応し、米国史上初の黒人大統領を生み出すまでに世界を変えたのは紛れもない事実です。

4日後に迫った「村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン」のメガファイトからも、私たちはこの試合が何を意味しているのかをしっかり受け止めなければなりません。
村田諒太という突然変異が五輪のミドル級という、プロのアルファベット王者になるよりも遥かに難しいハードルをクリアし、世界的な人気階級で大きな爪痕を残すために大企業がプロジェクトチームまで立ち上げて重厚にサポート。
そして、主役の村田が勝利を収めるということを除いて、ついに彼らのミッションは達成されました。
これが「日本ボクシング史上最大の戦い」の経緯書ですが、これを「もう日本では見ることが出来ない」と喜ぶだけでは、未来は何も変わりません。
この試合は、ささやかなButterfly Effect ではありません。Deep Impact として受け止めて、未来につなげなければなりません。
井上尚弥や井岡一翔と、村田諒太との違いは何なのか?
「五輪に出れなかった組」と、「金メダリスト」の差だけではありません。むしろ、それは瑣末なことです。
ジュニアバンタム級やバンタム級と、ミドル級の差です。それだけが全て…そう言い切っても、全く過言ではありません。
残酷な物言いになってしまいますが「小さな体で生まれた時点でボクサーとしては不幸」(ファン・フランシスコ・エストラーダ)、「もしミドル級で同じことをやっていたら住む家も乗る車も何もかもが違った」(カリド・ヤファイ)ということです。
井上や井岡が五輪出場を逃したのは、問題の本質ではないのです。
ヤファイが言うまでもなく、彼らがジュニアバンタム級やバンタム級でやっていることを、ミドル級でもやればボクシング界に大きな衝撃を与えることができます。
ソフトボールのトップ選手とMLB選手が同列に語れないようなものです。五輪では統括団体が同じでも、全く違う世界なのです。
しかし、日本のメディアと、帝拳や大橋ジムなどの興行主は「軽量級でもラスベガスでメガファイトがある」と嘘を垂れ流してきました。
「MGMグランドガーデンアリーナで高額のPPVイベント、ファイトマネー20億円」なんて、ライト級以下の軽量級ではありえません。
4月9日のメガファイトで、フライ級やバンタム級ではラスベガスやニューヨークでメガファイトなどあり得ないこと、もし世界(世界を米国だとするなら)に本気で衝撃を与えたいなら、ミドル級やウェルター級などの人気階級でなければならないこと、がもっと伝われば、これからボクシングに取り組む若い人たちの目線も下ではなく、上を向くと思います。
遠くない未来、井上のような才能が複数階級制覇を意識して無理やりジュニアフライ級から世界を狙うなんてことがなくなり、肉や骨を削るような減量をせずに、強い肉体を作り上げて、カネも注目度も高い「上」のクラスで勝負するようになれば最高です。
何度も書いていますが、無理やりの減量は新陳代謝の劣化を早め、成人しているにもかかわらず、肉体は大きくなろうとする歪な生理に陥ってしまいます。
「減量がキツイなんて人に言ったらダメ。なんでそんなキツイ減量してるのかっていったら、ちょっとでも弱い相手と戦うためでしょ」(渡辺二郎)というのは、不人気階級が寄せ集まる軽量級で特に顕著です。
「減量って結局は弱いヤツと戦えるからやってる。あんまりカッコいとは思わない」(石井慧)という観点が必要です。
無理やり減量で層の薄いクラスを狙うのをやめてしまうと「世界王者の数は減るし、人気階級狙いなんてチャンスもなかなか回って来ない」というかもしれませんが、そもそも世界チャンピオンなんてそんなに沢山いたらおかしいし、チャンスがあちこちに転がってる方がおかしいのです。
もちろん、ストロー級がベストウエイトの選手は5階級制覇してもまだ不人気クラスのバンタム級ですが、そこは日本のマーケットが受け入れます。
もちろん、ラスベガスやニューヨーク、ロンドンでメガファイトが繰り広げられるヘビー級やミドル級などの人気階級とは報酬が違いますが。
それが嫌なら、スタート階級で「少しでも下」という従来の発想とは真逆の「少しでも上」を目指すしかありません。
土曜日の試合が「バンタム級だけどラスベガスでメガファイト」なんて嘘はもう通用しない、そんなキッカケにもなればいいのですが…。









