「偉大の三段重ね」。「偉大・偉大・偉大」と崇められる拳闘士がいました。

ただ広い裾野で350戦、山の頂に登って賞金稼ぎをするようになって43戦を戦った拳闘士は、そのほとんど全ての戦いで勝利していました。

負けたのは時間切れで、どちらが勝っていたのかを第三者の旗に委ねたわずかな試合だけでした。

しかし、この「零の寓話」の意味するところは「無敗」ではありません。

400戦以上も固い拳を互いの顎に叩きつける戦いを続けてきたというのに、偉大な拳闘士は、たったの一度も膝を着いたことがないのです。

この男ほど頑健な顎の持ち主は地球上には存在しません。

そんな偉大な拳闘士が、山から降りることを決めました。

遠く、遠く、遙か東に離れた、小さな島に住む一人の男が偉大な拳闘士との戦いを熱望していたのです。

山でも裾野でも、そんな小さな島国の男に勝てる道理がないと大笑いしていました。

しかし、彼らはあることを忘れていました。

また、あることを知りませんでした。

彼らが忘れていたことは、島国の男がかつて広い裾野で偉大な拳闘士も手の届かなかった金杯を獲得したことです。

そして、彼らが知らなかったことは、その島国の男の右拳が「零の寓話」を終わらせる破壊的な威力を持っていることです。

今日も、賭場での掛け率は六対一で偉大な拳闘士が有利と出ています。

偉大な拳闘士の登場曲は七カ国艦隊( Seven Nation Army)。まさに、一騎当千の彼にふさわしい楽曲です。

そして、小さな島国の大きな男は海賊の歌に乗って戦場に向かいます。


勝負がどちらに転ぶかなんて、誰にもわかりません。

わかっていることは、七日後、彩の国でどちらかの船が沈没する、それも撃沈するということだけです。