リング誌認定/WBAスーパー 世界ライト級タイトルマッチ 5月12日マディソン・スクエア・ガーデン スポーツアリーナ 王者ホルヘ・リナレスvs挑戦者ワシル・ロマチェンコ
素晴らしい熱戦でした。
最後のパンチは見えませんでした。
第1ラウンドを様子見に使い、序盤でペースを掌握して、中盤で相手を圧倒して棄権に追い込む。ウクライナのハイテクは、余裕綽々の戦いぶりでPFP1位(ESPN)まで上り詰めました。
そのハイテクが、開始ゴングから一気に距離を潰して、王者リナレスに迫ります。何かに急かされているように。最初から全力で戦わなければ危ない相手だ、そう考えたのでしょう。
そして、ハイテクの頭脳が導き出したその考えは正解でした。リナレスは、これまでの相手とは違いました。
手数で上回りながらも決定的な場面を作れないロマチェンコに、リナレスのパンチも予想されたような空転はほとんど見られず、ロマチェンコの体にヒットします。
リナレスの直線的で純粋なスピードは、まさにアスリート。ロマチェンコのポジショニングと角度を絶妙にブレンドしたスピードは、ダンサーのそれです。
アスリートとダンサーの舞いは見事に噛み合いました。
それにしても、6ラウンドの右ストレート一閃!お見事でした。
ロマチェンコのガードが、打たれた後に上がってくるスローモーション再生は、リナレスの真っ直ぐなスピードをウクライナのハイテクが制御しきれていないことを如実に物語っていました。
やはり、純粋なスピードはリナレスの方が速い。
しかし、ロマチェンコも只者ではありません。
浜田剛史が「ロマチェンコは本当に頭のいい選手」と正鵠を射ていたように、ハイテクは肉体だけでなく、その頭脳にも当てはまります。
攻められたら瞬時に反撃、ジャッジが容易にリナレスにポイントを振るラウンドを作りません。4回戦でもわかっていることですが、攻められているのです、この定石を実行できるボクサーはトップ選手でも多くはいません。
それでも、ダウンのダメージからはすぐに回復したものの8ラウンド以降はカンバスに滑ったり、躓いたり、いつもの自分のペースで進める試合とは違い、ロマチェンコの疲労は明らかでした。
もちろん、リナレスも疲れています。心配されていた左目もカットしてしまいました。十分な戦力が残っている段階で、勝負をかけなくてはなりません。
10ラウンド、リナレスは踏み込みっぱなしだったアクセルを、壊れても構わないとばかりに更に踏み込みます。この勝負の判断は間違っていません、大正解です。
リナレスがカットした目をめがけてたたみ込まれるパンチから傷を守ろうとガードを固めたのは、ウクライナのハイテクがボディのガードをルースにするための冷酷なトラップでした。
リナレスが勝負に出たことは、ロマチェンコにもすぐに伝わりました。第一ラウンドからフルストッロルの展開は、この10ラウンドで一気にマックスまでボリュームを引き上げます。
リナレスが重くて速いコンビネーションを上下に散らすと、ロマチェンコは軽くてもより数多くのパンチをリナレスの左顔面に集めます。超一流のジャズのセッションのようでした。
そして、このジャズには指揮者がいました。ロマチェンコがリナレスの左顔面にパンチを続けた理由は、カットした傷を狙ったからではありません。リナレスの注意をその傷に集中させたかったからです。
ロマチェンコは最後まで精密に冷静に試合を読んでいました。リナレスの脇のガードがルースになった一瞬を、ウクライナのハイテクが見逃すわけはありません。
最後のパンチはWOWOWの解説陣はもちろん、ESPNの解説ブースでも「何が起きたんだ?」と戸惑う見えないパンチでした。
フィナーレまでの9ラウンドの採点は一人が85−85のイーブン。残る二人はリナレスの86−84とロマチェンコの86−84。三者三様のドローでした。
リナレスは大健闘しました。ライト級史上に残るスピードスター同士の名勝負でした。
ロマチェンコ「あの右はgreat punchだった。ダウンは仕方がない。10ラウンドからが勝負になるのはわかっていた。トレーナーのアナトリー(父親)の『最後にボディを叩くコンビネーションを使え』という指示を実行できた。リナレスが偉大なチャンピオンだから、ファンにとっても誰にとっても素晴らしい試合になった」「リナレスにはお礼を言いたい。ありがとう。私に、この奥深いスポーツについてまた一つレッスンを施してくれた」。
リナレス「ダウンを奪ったパンチは完璧なタイミングだった。 ロマチェンコの動きは想定内だった。ただ、あのボディショットは予想していなかった。試合を続けたかったがレフェリーに止められてしまった」。
今、リナレスは悔しさに泣いているかもしれません。
しかし、あのロマチェンコに「ボクシングのレッスンをしてくれてありがとう」と言わせたのです。あのロマチェンコに、です。
リナレスは惜敗に納得できないでしょうが、ファンにとっては誇らしい敗北です。ファンからもお礼を言いたいです。ホルヘ、素晴らしい試合をありがとう。ロマチェンコも素晴らしい試合をありがとう。ホルヘの分まで頑張って、もっともっと強くなって下さい。
素晴らしい熱戦でした。
最後のパンチは見えませんでした。
第1ラウンドを様子見に使い、序盤でペースを掌握して、中盤で相手を圧倒して棄権に追い込む。ウクライナのハイテクは、余裕綽々の戦いぶりでPFP1位(ESPN)まで上り詰めました。
そのハイテクが、開始ゴングから一気に距離を潰して、王者リナレスに迫ります。何かに急かされているように。最初から全力で戦わなければ危ない相手だ、そう考えたのでしょう。
そして、ハイテクの頭脳が導き出したその考えは正解でした。リナレスは、これまでの相手とは違いました。
手数で上回りながらも決定的な場面を作れないロマチェンコに、リナレスのパンチも予想されたような空転はほとんど見られず、ロマチェンコの体にヒットします。
リナレスの直線的で純粋なスピードは、まさにアスリート。ロマチェンコのポジショニングと角度を絶妙にブレンドしたスピードは、ダンサーのそれです。
アスリートとダンサーの舞いは見事に噛み合いました。
それにしても、6ラウンドの右ストレート一閃!お見事でした。
ロマチェンコのガードが、打たれた後に上がってくるスローモーション再生は、リナレスの真っ直ぐなスピードをウクライナのハイテクが制御しきれていないことを如実に物語っていました。
And now, Lomachenko (11-1, 9 knockouts) found himself on the seat of his pants, the result of a pinpoint Linares right hand in Round 6. For the first time in his illustrious career, Lomachenko was knocked down. リナレスのピンポイントの右でロマチェンコがダウン。ロマチェンコの輝かしいキャリアで、これが初のダウンだ。〜リング誌電子版〜
やはり、純粋なスピードはリナレスの方が速い。
しかし、ロマチェンコも只者ではありません。
浜田剛史が「ロマチェンコは本当に頭のいい選手」と正鵠を射ていたように、ハイテクは肉体だけでなく、その頭脳にも当てはまります。
攻められたら瞬時に反撃、ジャッジが容易にリナレスにポイントを振るラウンドを作りません。4回戦でもわかっていることですが、攻められているのです、この定石を実行できるボクサーはトップ選手でも多くはいません。
それでも、ダウンのダメージからはすぐに回復したものの8ラウンド以降はカンバスに滑ったり、躓いたり、いつもの自分のペースで進める試合とは違い、ロマチェンコの疲労は明らかでした。
もちろん、リナレスも疲れています。心配されていた左目もカットしてしまいました。十分な戦力が残っている段階で、勝負をかけなくてはなりません。
10ラウンド、リナレスは踏み込みっぱなしだったアクセルを、壊れても構わないとばかりに更に踏み込みます。この勝負の判断は間違っていません、大正解です。

リナレスが勝負に出たことは、ロマチェンコにもすぐに伝わりました。第一ラウンドからフルストッロルの展開は、この10ラウンドで一気にマックスまでボリュームを引き上げます。
リナレスが重くて速いコンビネーションを上下に散らすと、ロマチェンコは軽くてもより数多くのパンチをリナレスの左顔面に集めます。超一流のジャズのセッションのようでした。
そして、このジャズには指揮者がいました。ロマチェンコがリナレスの左顔面にパンチを続けた理由は、カットした傷を狙ったからではありません。リナレスの注意をその傷に集中させたかったからです。
ロマチェンコは最後まで精密に冷静に試合を読んでいました。リナレスの脇のガードがルースになった一瞬を、ウクライナのハイテクが見逃すわけはありません。
最後のパンチはWOWOWの解説陣はもちろん、ESPNの解説ブースでも「何が起きたんだ?」と戸惑う見えないパンチでした。
フィナーレまでの9ラウンドの採点は一人が85−85のイーブン。残る二人はリナレスの86−84とロマチェンコの86−84。三者三様のドローでした。
リナレスは大健闘しました。ライト級史上に残るスピードスター同士の名勝負でした。
“Thank you to Jorge Linares,” Lomachenko said, “for giving me one more lesson in this interesting sport.”
ロマチェンコ「あの右はgreat punchだった。ダウンは仕方がない。10ラウンドからが勝負になるのはわかっていた。トレーナーのアナトリー(父親)の『最後にボディを叩くコンビネーションを使え』という指示を実行できた。リナレスが偉大なチャンピオンだから、ファンにとっても誰にとっても素晴らしい試合になった」「リナレスにはお礼を言いたい。ありがとう。私に、この奥深いスポーツについてまた一つレッスンを施してくれた」。
リナレス「ダウンを奪ったパンチは完璧なタイミングだった。 ロマチェンコの動きは想定内だった。ただ、あのボディショットは予想していなかった。試合を続けたかったがレフェリーに止められてしまった」。
今、リナレスは悔しさに泣いているかもしれません。
しかし、あのロマチェンコに「ボクシングのレッスンをしてくれてありがとう」と言わせたのです。あのロマチェンコに、です。
リナレスは惜敗に納得できないでしょうが、ファンにとっては誇らしい敗北です。ファンからもお礼を言いたいです。ホルヘ、素晴らしい試合をありがとう。ロマチェンコも素晴らしい試合をありがとう。ホルヘの分まで頑張って、もっともっと強くなって下さい。
コメント
コメント一覧 (5)
井上はポストパックを志すなら現在通常体重フェザーとのことですので、カネロのような増量も込みで考えるなら最終的にはライトでロマチェンコに初黒星を付ける事を日本中から期待されるのではないでしょうか
>全力出して戦える相手をついに見つけた
そうですね。今までのロマチェンコは試合後会見で対戦相手の悪口を言うのが気に入りませんでした。たとえそれが「ボクサーは死ぬ気でリングに上がるべき。途中棄権は最低」という正論だったとしても。
今日の会見では、ロマチェンコも最後まで諦めずに戦ったリナレスを「スピードと技術だけじゃない」と最高に尊敬していましたね。
ロマチェンコは階級の壁、じゃなくて全力出して戦える相手をついに見つけたと言う感じがしました。これからの二人にも期待大です。
お読みいただきありがとうございます。本当にいい試合でした。こういう試合が増えればボクシングの面白さがもっと広く伝わるのですが…。
リゴンドーとは全然違うプロフェッショナルでした