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リング誌は東京ショッカーを「EPIC UPSET」と伝えました。

BIGでもMASSIVEでもない〝EPIC〟UPSET。

絶対に倒れるはずのない鉄人が枯れ枝のように朽ち落ちた瞬間は、まさに神話や叙事詩に描かれた一場面のように映りました。

リング誌をそのまま抜粋拙訳します。

◼︎◼︎世界最凶の男が初回からコントロールされ、痛めつけられ、圧倒された。映画の中のスローモーションのように、マイク・タイソンが東京のリングに沈んでいった。

予想もしない光景に、東京ドームの観客は静まり返り、短い神話が終わった。

ジョー・ルイスやジャック・デンプシーの再来とまで言われた若者の疾走は4年間で終わったのだ。

ダグラスは緻密に研究した計画を周到に実行した。日本に渡る直前に最愛の母親が急逝してしまったことも、彼のモチベーションをさらに刺激したことだろう。

母親からかけられた最後の言葉を試合中のダグラスは、何度も頭の中で思い出していたはずだ。

「いってらっしゃい。あなたはタイソンに必ず勝てる」。

(中略)

タイソンが再戦条項を使うかどうかは微妙だ。

自分を怖がらずに、我慢強くジャブを突き続けて右のタイミングを測るダグラスは、タイソンキラーだ。

タイソンが左ジャブを避ける方向、位置も完全に読まれていた。このクセを修正するのは難しいだろう。

ダグラスだけが見抜いたクセだとしても、タイソンの行く手は厳しい。

技術的な問題以上に、タイソンでも倒れるという当たり前のことを、世界中のボクサーに気づかれてしまったからだ。

1990年2月11日、神話は終わった。これからは誰もが畏怖してくれる神ではなく、一人の人間として、タイソンが本当の強さを見せられるかどうかが注目される。

ジョー・ルイスやモハメド・アリのように、恐れず強い決意で立ち向かってくる強豪を、より強靭な精神で迎え撃つことが出来るのか?
 
もはや神話は終わってしまった。これからタイソンが戦うのは、生身の物語だ。彼がルイスやデンプシーを追いかける生身の物語がこれから始まるのだ。 ◼︎◼︎



8ラウンドに「ロングカウント事件」が起き、試合後もドン・キングが「この結果は無効だ」と騒ぎ立てWBA、WBC、IBFは立場を保留しましたが、数日後に「タイソンTKO負け」の結果を承認しました。

〝ロングカウントがあったとはいえ、〟ダグラスの圧勝劇でしたが、試合後に公表されたジャッジペーパーも大きな物議を醸し出し、今なお世界中から批判を浴びています。

3人のスコアは、ラリー・ラザディラが88−82で、ダウン以外はダグラスが圧倒。

フルマークでダグラスを支持していたリング誌は「フルマークか、譲ってもラザディラのスコア以外はあの展開では付けようがない」と断じる数字です。

ところが、残る二人、ともに日本人ですが、内田正一は86−86のイーブン、森田健に至っては87−86とあろうことかタイソンリードの採点をしていたのです。

「日本では攻勢を評価する」とかいうレベルではありません。そもそもパンチの数、ヒット数はもちろん、攻勢もダグラスが終始とっていたのですから。
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=写真=このジャッジペーパーは、海外で「日本の判定は酷い」という根拠の一つにされています。アブナル・マレスが長谷川穂積のオファーに「日本に行ったらどんな判定をされるかわからない」と、この試合の狂気のジャッジを拒否理由に挙げました(他にも報酬や条件面も折り合わなかったのですが)。「日本の恥」としてしっかり記憶されるべきです。

主題から逸れてしまいますが、ジャッジペーパーで注目すべきはもう一つ。

ラザディラは1つ、森田は3つ、内田は2つのラウンドを「10−10」のイーブンと評価しているのです。世界で最も議論を呼んだジャッジペーパーを例に挙げるのは適当ではありませんが、何が何でも10−9に振り分けるという強迫観念に支配された、現在のジャッジは見習うべきですね。

「各ラウンドは独立した単位で評価される」が、「10−9に振らなければならない」なんてルールはないのですから。 試合に引き分けがあるように、ラウンドごとにも引き分けはあるべきなのです。