1990年2月11日日曜日の正午、米国の土曜日夜のゴールデンタイムに合わせて、統一世界ヘビー級王者マイク・タイソンとWBC3位、WBA4位のジェームス・バスター・ダグラスのゴングが鳴らされました。
37年後の現在、東京は非常な寒波に見舞われていますが、その日は生暖かい南風が強く吹き、曇り空が蓋をした蒸し器のような東京都心は16度まで気温が上昇していました。

=写真=5年ぶりの寒波に見舞われたオハイオ州コロンバスでロードワークするダグラスの毛糸の帽子は雪と汗で凍りつき、氷柱まで垂れ下がっていました。
「タイソンが怖いか?何度も聞かれた質問だが、答えはNOだ。今までの対戦者は、タイソンに勝つ気がなかったが、俺は違う。休日を入れずに毎日練習してきた。人生でこんなに追い込んだことはない」。
「タイソンのビデオはどれだけ見たかわからない。はっきりしている事がある。奴は、長身のジャバーが苦手だ。そして、ラウンドが進むにつれ急速に集中力を失っていく。気をつけるのは、インサイドからの一発だけだ」。
勝者の言葉にありがちですが、完璧な予言ですね。
父親のビリー〝ダイナマイト〟ダグラスは、カルロス・モンソン時代に元世界ミドル級3位まで登り詰め、日本でも試合をしています(1973年5月21日東京、スティーブン・スミスに3ラウンドKO勝ち)。
弟もプロボクサー、家族でタイソンを分析していたのでしょう。
外の季節はずれの蒸し暑さは全く関係なく、空調の効いた東京ドームで、真昼の決闘が始まりました。
今思えば…つまりは結果論ですが、その前兆はいくつもありました。
かつてタイトルを強奪した相手、トレバー・バービックを始め豪華なスパーリング・パートナーを引き連れたタイソンは、〝気心の知れた〟バービック相手には見事なボクシングを披露してみせるも、フィル・ブラウンの長いジャブに何も出来ずに棒立ち、慌てた陣営がスパーを中止するというハプニングもありました。
ブラウンは三流のロートル。長身でリーチも長く〝仮想ダグラス〟として招聘されたのですから「タイソンピンチ」と多くのメディアが報じましたが、試合の興味を引くための余興だと、誰も間に受けませんでした。
さらに、元王者グレグ・ペイジにはダウンを奪われ、そのコンディションが万全で無いことは明らかだったのですが…。
2月3日、後楽園ホールで行われた有料公開スパーリング(観戦料5000円)では、圧倒的なスペクタクルの予行演習を一目見ようと、抽選で選ばれた700人を超えるファンが詰めかけましたが、ペイジ相手にいいところなく終わってしまいます。
何かが起きる。その予兆はいくらでもありましたが、それでも誰一人として世紀の大番狂わせなど予想できませんでした。
「極東の経済大国が、世界ヘビー級タイトルマッチを〝円のパワー〟で引っ張り込んだが、その内容はエキビジョンだ。好景気に酔う日本人は、高い買い物をしているとは気付かず、なんでも買うようだ」。
米国メディアの悪意ある報道の通り、タイソンは問題なくエキビジョンをこなし、試合後にリングサイドのイベンダー・ホリフィールドを挑発する場面が、この興行の最大の目玉になるはずでした。
ホリフィールドが失望に首を振って、東京ドームの席を立つシーンなど、夢想だにできませんでした。
37年後の現在、東京は非常な寒波に見舞われていますが、その日は生暖かい南風が強く吹き、曇り空が蓋をした蒸し器のような東京都心は16度まで気温が上昇していました。

=写真=5年ぶりの寒波に見舞われたオハイオ州コロンバスでロードワークするダグラスの毛糸の帽子は雪と汗で凍りつき、氷柱まで垂れ下がっていました。
「タイソンが怖いか?何度も聞かれた質問だが、答えはNOだ。今までの対戦者は、タイソンに勝つ気がなかったが、俺は違う。休日を入れずに毎日練習してきた。人生でこんなに追い込んだことはない」。
「タイソンのビデオはどれだけ見たかわからない。はっきりしている事がある。奴は、長身のジャバーが苦手だ。そして、ラウンドが進むにつれ急速に集中力を失っていく。気をつけるのは、インサイドからの一発だけだ」。
勝者の言葉にありがちですが、完璧な予言ですね。
父親のビリー〝ダイナマイト〟ダグラスは、カルロス・モンソン時代に元世界ミドル級3位まで登り詰め、日本でも試合をしています(1973年5月21日東京、スティーブン・スミスに3ラウンドKO勝ち)。
弟もプロボクサー、家族でタイソンを分析していたのでしょう。
外の季節はずれの蒸し暑さは全く関係なく、空調の効いた東京ドームで、真昼の決闘が始まりました。
今思えば…つまりは結果論ですが、その前兆はいくつもありました。
かつてタイトルを強奪した相手、トレバー・バービックを始め豪華なスパーリング・パートナーを引き連れたタイソンは、〝気心の知れた〟バービック相手には見事なボクシングを披露してみせるも、フィル・ブラウンの長いジャブに何も出来ずに棒立ち、慌てた陣営がスパーを中止するというハプニングもありました。
ブラウンは三流のロートル。長身でリーチも長く〝仮想ダグラス〟として招聘されたのですから「タイソンピンチ」と多くのメディアが報じましたが、試合の興味を引くための余興だと、誰も間に受けませんでした。
さらに、元王者グレグ・ペイジにはダウンを奪われ、そのコンディションが万全で無いことは明らかだったのですが…。
2月3日、後楽園ホールで行われた有料公開スパーリング(観戦料5000円)では、圧倒的なスペクタクルの予行演習を一目見ようと、抽選で選ばれた700人を超えるファンが詰めかけましたが、ペイジ相手にいいところなく終わってしまいます。
何かが起きる。その予兆はいくらでもありましたが、それでも誰一人として世紀の大番狂わせなど予想できませんでした。
「極東の経済大国が、世界ヘビー級タイトルマッチを〝円のパワー〟で引っ張り込んだが、その内容はエキビジョンだ。好景気に酔う日本人は、高い買い物をしているとは気付かず、なんでも買うようだ」。
米国メディアの悪意ある報道の通り、タイソンは問題なくエキビジョンをこなし、試合後にリングサイドのイベンダー・ホリフィールドを挑発する場面が、この興行の最大の目玉になるはずでした。
ホリフィールドが失望に首を振って、東京ドームの席を立つシーンなど、夢想だにできませんでした。
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