フェザー級10回戦

那須川天心vsルイス・グスマン・トーレス

天心はいつの日かセットされる世界戦まで、あとどれだけの〝調整試合〟を重ねるのでしょうか? いずれにしても、この試合が世界前哨戦などであるわけがありません。

デビュー前には「世界最短プロ2試合目での世界奪取」も噂されていた神童でしたが、そのチャンピオンロードは非常に慎重です。

プロモーターの本田明彦が「手探り」と表現しているように、ファンもこの素材の器を測りかねているのが現状です。

デビュー戦で伝わったその実力は「強い日本王者」レベル。好戦的な与那覇勇気を18分間かけても倒しきれない姿からは、パワーとタイミングの欠如が明らかでした。

もし、これが、プロ5年目で辿り着いた地点だとしたら、天心の未来は知れています。デビュー戦でいきなり日本ランカー(アルファベット団体の世界ランカーは極めて怪しい序列ですが、日本ランキングはずっとまともです)を翻弄した天心は、とんでもない潜在能力を秘めているのか?それとも、ある程度の完成形なのか?

それがわからないから「手探り」になるのでしょう。

手探りのキャリア作り、プロ2戦目。これから戦うグスマンはちょうど良い相手です。与那覇戦ではまだ息吹いていなかった能力を爆発させるのか、それともデビュー戦から本質的に変わらないボクシングをしてしまうのか。

キック時代から尋常ではない注目と重圧に慣れている天心に対しては失礼な物言いかも知れませんが、今回もプレッシャーは相当なはずです。

「鮮やかに勝ちたい」よりも「絶対に負けられない」という気持ちに支配されても不思議ではありません。


「世界戦(を差し置いてゴールデンタイムに抜擢)は意識していないですが、僕のことを(格闘技からの)外敵だと思っている人もたくさんいると思うのでしっかり見せたい。これはボクシングファンとの戦い」。

「変化を起こせるやつは期待もされるし、試される。今回はガチめの『どう生きるか』。プレッシャーをかけてくるなと思うけれど、やるだけ。対戦相手、お客さん、Amazon(プライムビデオ)で見ている人たちの心を巻き込めるような試合で、最終的に全員を『倒し』にいきたい」

いい心意気です。まあ、あなたのことを「外敵」と思ってるボクシングファンは、私を含めてほとんどいないでしょうけど。

さて、天心のハートと技術、お手並み拝見の時間です。

初回、右のショートカウンターでいきなりダウンを奪います。フラッシュダウン、ダメージはありません。

解説席も指摘しているように、デビュー戦とは明らかに距離が近い。そして、グズマン…遅いにも程がある、遅すぎる…いや、それは言うまい。

それにしても、与那覇勇気もグスマンもしっかり前に出てきました。あのレベルの選手にとっても、天心の攻撃は恐怖ではないと言うことです。

井上尚弥やアルツール・ベテルビエフと同列に語るな!と言われそうですが、そういうこと。天心の攻撃力は、少なくとも現時点で全く特別なものではありません。

第6ラウンドには、いいパンチが何度もクリーンヒットしましたが、決定的なダメージは与えられません。

もう「手探り」ではありません。

村田諒太は途中で明らかに気づいていました。

「当て勘」と言われる能力には二種類あります。ポンポンとクリーンヒットを重ねるメイウェザー型と、一撃必殺のベテルビエフ型。

残念ながら、天心は前者しか持っていません。それでも「当て勘」はあります。

山中慎介は「(KO)あと一歩でしたけどね」なんて、同情しちゃいけません。明らかに、決定力が欠落したボクサーです。

天心は、これでいい。この方向でトンガっていくしかありません。それで十分、その完成形は井上尚弥のジョーカーになりえます。

ディフェンス技術と勝負度胸はすでに世界基準、25歳の今からビッグパンチャーを目指す必要なんてありません。

今日の相手、井上はもちろん、山中でも簡単にノックアウトしてたでしょう。

天心が目指すべきは、パンチャーではありません。

それでも、マイクパフォーマンス、最高です。軽量級のメイウェザーになれると思います。

帝拳も「次こそKO勝ち」なんてマッチメイクは絶対にダメ!

「レベルの高い相手を次も完封する」という方向がハッキリした、その意味では収穫の多いボクシング転向2戦目でした。