リング誌の歴史は波瀾万丈でした。

創刊からして1922年、ローリングトゥエンティです。世界が七転八倒した時代です。

創刊号の表紙は、米国でのプロモーター、テックス・リカードと、今もBBB of C(英連邦王者)のベルトに肖像が残るロンズデール卿が飾りました。

今でいうならアル・ヘイモンとマウリシオ・スライマンあたりがでっち上げた雑誌にでも例えられましょうか。

そもそもが、プロモーターが創刊した雑誌です。

それでも、自らThe World's Foremost Boxing Magazine、The World's Official Boxing Magazine)、The Bible of Boxingと呼びました。


しかし、1977年、ランキングを捏造するスキャンダルでその信用は失墜。

慢性的な経営難から不正に手を染めてしまったのか、このスキャンダルが経営難にトドメを刺したのか、1979年には投資家のデイブ・ディバッシャーと、3代目編集長のバート・シュガーに買収されてしまいます。

このときの買収額はわずか100万ドル、当時のレートでも2億円でした。

現在も身売りが噂されているリング誌の市場価格は、負債を抱えてることもあり、300〜500万ドルと見積もられています。

経営・運営をしっかりやればまだまだ将来性が見込めるスポーツ、メディアと見られていないのです。

ちなみに昨年末に、ニューヨーク・タイムズがThe Athleticを買収した金額は、5億5千万ドル(約640億円)でした。

ボクシング限定なら過去の記事や写真などのアーカイブでリング誌は世界最高のメディアですが、現状の取材能力はThe Athleticとは比較になりません。

慢性的な財政難から脱却できなきリング誌は、1989年にはついに廃刊に追い込まれてしまいます。

そもそも論になりますが、米国におけるボクシングは完全な衰退スポーツで、マイナー化の底なし沼に沈降し続けています。

そこに輪をかけて、伝統的にボクシングファンは活字を好みません。

リング誌を「権威がある」と崇める井上信者らですら、実際に購読したことがある人はもちろん、手に取った経験がある人もほとんどいないでしょう。

彼らもまた活字を好まないことは、間違いありません。何度も騙される様を見ると、文盲かもしれません。

1990年にはボクシングイラストレイテッド誌などを創ったスタンレー・ウェストンの出資を受けて復刊に漕ぎ着けますが、財政は逼迫したまま。

2007年、ゴールデンボーイ・プロモーションズの子会社に身売りしたとき「公正であるべきメディアがプロモーターの機関誌に成り下がるのか」と批判されました。

しかし、その成り立ち、歴史を考えるとジャーナリズムの誇りなどとは無縁のメディアだったのですから、そこは目くじらを立てるところではありません。

2010年にはYahoo!Sportsと業務提携、デジタル版を立ち上げました。大きな資金源になると期待されましたが「沈没船に援助するのは危険」と察知したYahoo!側はすぐに手を引きます。

ちなみに、このときにPFPもキーになる試合を反映する〝猫の目〟電子版となりました。

井上尚弥が1位になったPFPの歴史はまだ12年、それを「日本人初の快挙」「リング誌のPFPは権威がある」と信じている人がいるのは、この情報に溢れた時代で信じられないことです。

2010年代は、経営難がさらに進み、月刊体制が崩壊。年9回発行の不規則季刊誌になった時期もありました。

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誌面にはMMAコーナーを新設。MMAの女性選手ロンダ・ラウジーや、米国で需要のない軽量級の日本人・井上尚弥を単独カバー。しかし、MMAも軽量級も減りゆく読者の求めるものであるはずがなく、低迷は続きます。

そして、2016年のモハメド・アリ追悼号が久しぶりにヒットしたのに味をしめたのか、旬の現役ファイターではなく過去のグレートの特集号が続いています…。

末期症状は呈していました。

毎月、リング誌がポストに届く。それが当たり前の日常になって何十年も経ちました。

途中、購読更新を忘れたり、リング誌の月刊体制が崩れたりしましたが、リング誌を手に取らない月はまずない、という人生を歩んできました。

私のような重症のボクヲタにとって、リング誌はなんだかんだ言っても楽しい読み物でした。

とはいえ、それは中身がともなっていることが大前提。

もう10月も半ばを迎えますが、11月号は電子版もアップされていません。

今年は創刊100周年のアニバーサリーでしたが、2度目の廃刊、あるいは5年ぶりの月刊体制崩壊もあるかもしれません…。