リング誌のUpset of the year を2012〜2022年の10年間で振り返ると、全てが偶然などではなかったことが、改めてよくわかります。


2012年 - ソニー・ボーイ・ハロ 
       VS.
    ポンサクレック・ウォンジョンカム
▶︎ポンサクレックの劣化。
 
2013年 - マルコス・マイダナ  
       VS.
    エイドリアン・ブローナー
▶︎ブローナーの過大評価
 
2014年 - クリス・アルジェリ
       VS.
    ルスラン・プロボドニコフ
▶︎アルジェリの過小評価
 
2015年 - タイソン・フューリー
       VS.
    ウラジミル・クリチコ
▶︎フューリーの過小評価とウラジミルの劣化
 
2016年 - ジョー・スミス・ジュニア
       VS. 
    アンドルー・フォンファラ
▶︎ジョー・スミスの過小評価とフォンフォラの過大評価
 
2017年 - サダム・アリ
       VS.
    ミゲール・コット
▶︎コットの劣化
 
2018年 - クリストファー・ロサレス
       VS.
     比嘉大吾
▶︎ロサレスの過小評価
 
2019年 - アンディ・ルイス・ジュニア
       VS.
    アンソニー・ジョシュア
▶︎ルイスJr.の過小評価とジョシュアの過大評価
 
2020年 - テオフィモ・ロペス
       VS.
    ワシル・ロマチェンコ
▶︎ロマチェンコの不調と作戦ミス

赤字は大番狂わせが起きた主な要因です。

IMG_7639

もし、12月13日に大番狂わせが起きるといたら、井上尚弥サイドからは「劣化」「過大評価」「不調」「作戦ミス」、ポール・バトラーからは「過小評価」が予想されます。

まず、井上の「劣化」と「過大評価」は、ほとんど無いでしょう。

「劣化」については、ノニト・ドネアとの初戦を除くと、打ち込まれるシーンは経験していません。29歳という年齢からも、バトラー戦で経年劣化をさらけ出すことは考えられません。

「過大評価」については、かつてのマイク・タイソンのように旬の強豪とは戦っていないとはいえ、王者を倒して3階級制覇。バンタム級では完全統一に王手をかけているのです。

タイソンが精神的に大きな欠陥を抱えていたのに対して、井上はドネアとの初戦で見せたように劣勢になっても強烈な勝負根性を発揮します。現在の世界評価が、後世に下がる可能性は否定できませんが、タイソンのような暴落はありえません。

井上に残る不安材料は「不調」と「作戦ミス」だけです。

ただし、これは相手がそこに突け込むだけの一定の実力があることが絶対条件になります。

バトラーに、それがあるか?

もちろん、井上がかつて対戦したジェイミー・マクドネルのように重篤の病人状態でリングに上がるなら、わかりません。しかし、それを言い出すと試合中に井上が若年性脳卒中で倒れるとか、そんなことまで考えなければなりません。

バトラーの「過小評価」もありません。現在の世界王者の中でも頭抜けた穴王者です…。

ただし、井上との試合で20-1、幻のジョンリール・カシメロ戦でも10-1と悲惨なオッズが叩かれた凡庸な英国人ですが、カシメロの代打で登場したジョナス・スルタン相手でも10-1と圧倒的なアンダードッグだったことも忘れてはいけません。

昨年、4月のWBOバンタム級暫定王者決定戦で、バトラーは大番狂わせを起こしているのです。

ブックメーカーも専門家も、揃いも揃ってフシ穴でした。

今回も、揃いも揃ってフシ穴な可能性が無いとは言えませんが、井上とスルタンでは〝リーグ〟の違うボクサーです。

Styles make the fights〜ボクシングは相性が勝負のアヤとなる。このスポーツで最も有名な格言ですが、これはあくまで〝同じリーグ〟での話。

同じリーグならパーはグーを包み込みますが、何段階もリーグのレベルが違うと、パーはグーに易々と破られてしまいます。

そもそも、世界基準で見ると、バトラーは誰と戦ったらフェイバリット(有利)と予想されるのか?という本来なら世界王者になってはいけないレベルのボクサーなのです。

それでも、あと3ヶ月を切ったバンタム級のビッグファイトを楽しみに待ちたい、そのためには「バトラー、侮るなかれ!」な何かを見つけたいと思います。