「ニセモノ」の事件が続いたので、今日の通勤電車はそのお話。〝贋作〟とは何か?の続編です。

いつの間にか、もう⑧。

⬇︎こちらの話は、以前取り上げました。美大の学生が習作でコピーをするのは素晴らしい勉強ですが、販売目的の贋作は、明らかな犯罪です。


ただ、ハン・ファン・メーヘレンも多くの贋作犯罪者と同列に語っていいのかどうかは、わかりません。

無免許医は犯罪ですが、ブラック・ジャックは?泥棒は犯罪ですが、ルパン三世は?現実の世界にも彼らに似た人間は存在します。

▶︎▶︎▶︎平山郁夫や東山魁夷の贋作が大量に出回っていることが判明、百貨店などの販売先が買い戻しを進めていることが、日本現代版画商協同組合などへの取材でわかった。〜読売新聞2月8日〜

▶︎▶︎▶︎有名画家の作品をもとに作られた偽の版画が大量に市場に流通していた問題で、警視庁は近く、大阪市北区で画廊を経営していた元画商の50代の男と、奈良県大和郡山市で工房を営む版画作家の60代の男を著作権法違反の疑いで逮捕する方針を固めた。2人は遺族らに無断で贋作(がんさく)を制作・販売し、多額の利益を得ていた疑いがあるという。捜査関係者への取材でわかった。〜朝日新聞9月27日〜
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⬇︎これももちろん、犯罪です。

▶︎「ウーバーイーツ配達員は、自宅でせっせと偽サインの練習をしていた。プロ野球巨人の丸佳浩選手の偽サイン入りユニホームをネットオークションに出品したとして、東京都世田谷区の飲食宅配代行サービスの配達員、八木沢瀬名容疑者(24)が21日、不正競争防止法違反(誤認惹起)の疑いで、警視庁生活経済課に逮捕された。

このお話で何度も取り上げているプロレスはショーですが、〝八百長〟であることを周到に隠してあたかも真剣勝負の如く偽ったとしたら?

UWFやリングスはもちろん、アントニオ猪木の異種格闘技のほとんどは、真剣勝負と信じていた人も少なからず存在しました。

力道山のプロレスがスポーツとして扱われなくなったのは、真剣勝負でないことが誰の目にも明らかになったからです。

それまでNHKのニュースや一般紙でスポーツとして扱われていたということは、あの当時、ほとんどの人は力道山を〝八百長〟だと思っていなかったということでしょう。

まあ、リングスはかなり危ういグレーゾーンでしたが、多くのプロレスは手品と同じ、許容範囲です。

いま、日米ともに、プロレスは格闘技ファンが惹き付けられる「真剣勝負の強さを見せかける」ことを捨て「生き様の強さを物語る」ことで、女性をはじめとした旧来の格闘技ファンとは違う新しい市場の開拓に成功しています。

そこで応援してくれるファンは「UFCのヘビー級王者に勝てるかも?」などと、真剣勝負の強さを求めることはありません。

新しい価値観を提供したのですから、当然の果実です。

手品やプロレスが「タネも仕掛けもありません」と真剣勝負を謳うのはショーとして当然です。

ましてや、真剣勝負のスポーツで〝贋作〟、コピーはよく見られる光景です。

王貞治の一本足打法、落合博満の神主打法、イチローの振り子打法は大豊泰昭や清原和博、坪井智哉らが〝コピー〟を試みました。

トレバー・バウアーは最先端の観測機器を駆使して、有力投手の完コピに成功しています。

「どんな凄いボールでも同じ人間が5本の指で握って投げているのだから、その握りや腕と手首の角度、リリースポイントなどを習得することで再現できる」(バウアー)のです。

ボクシングではフロイド・メイウェザーのL字は多くの選手が真似をして、失敗に終わっています。

成功例で最も有名なのは〝アリのコピー〟ラリー・ホームズでしょう。

しかし、ラリホーは「アリの後継者」として十分な実績を残しながら、アリの人気まではコピー出来ませんでした。

というよりも、コピーしたが故に不人気だったという側面もありました。

スポーツの世界のように、たとえ合法であっても、多くのファンやメディアにとって誰かのコピーは素直に受け入れられない〝贋作〟なのかもしれません。

サイ・ヤング賞投手の決め球をコピーできたら、素晴らしいことです。

アリのようなスタイルでリングをステップできたら、そりゃ強いです。

しかし、多くの人がスポーツに感動や、驚きの快感に震える本質的な源泉は「どこかで見たもの」を見たいからではありません。

「こんなことが起こりうるのか?」という、初めて見るものを体感したいからです。

本来なら主役になれない異邦人のマニー・パッキャオと大谷翔平が、あの保守的な米国に大歓迎された理由はそこです。

「所詮はフェザー級やジュニアライト級。対戦相手に恵まれてなかったら誰も注目しない」。

「2割5分の打者にどうして大騒ぎする?もっと打率の高い打者はいうらでもいる」。

ある意味、事実です。あんな嘘みたいに凄いライバルが軽量級にいたなんて、神様の悪戯としか思えません。

しかし、パッキャオはそのとんでもないライバルの包囲網を完全Bサイドにもかかわらず、ことごとく打ち破ったのです。

東海岸の大メディアまでが大谷を大きく取り上げたのは打率2割5分だからではありません。打率以外のパフォーマンスが傑出、ありえないことにチームのエースであり、メジャーでも屈指のスピードランナーだからです。

所詮はフェザーやジュニアライト。しかし、パッキャオは米国の誇りウェルターを席捲しました。

「イチローは象ではない。ハエだ」。そんなことを書いた米国メディアもありましたが、日本は今、象ではなく恐竜を送り込みました。

「二刀流なんてベーブ・ルースを最後に絶滅したはずなのに」(CNNワールドスポーツ)。

贋作やコピーは、それが精巧であればあるほど、鮮烈な感動から遠ざかってしまいます。

私たちは…。

誰もが、見たことのない、衝撃的な光景を目撃したいのです。