「人間の運命は、彼の個性、そのアイデンティティによって決まる」。

アーネスト・ヘミングウェイの言葉だったと思うのですが、どの小説だったのか思い出せません。

運命は神が決めるのではなく、その人間の個性が決める。そんな意味の「運命論」です。

ある意味、それは「運命などない」「不運など存在しない」という雄叫びにも聞こえます。


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…その少年の素質は、とにかく頭抜けていた。

日本代表に選ばれた中学時代に140㎞のボールを投げ、米国で開催された世界大会では4本塁打を放って大会MVP。

高校時代には球速は150㎞を超え、打っては飛距離170m級の本塁打をかっ飛ばした。

プロでもチームの主軸を任されたが、ここまで12シーズンで本塁打王はゼロ、通算打率も2割5分。ファンが描いた未来地図は、まだ描ききれていない。

どこかで運命の小さな歯車が狂ったのか。それとも、彼は元々が大谷翔平に先駆けるような才能ではなかったのか?

もちろん、まだ32歳。彼の野球人生は何一つ終わってはいない…。


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「甲子園は彼のためにあるのか」とまで言われた男のキャリアはプロに入っても、ファンの期待を上回った。

打率3割4厘、本塁打31本、打点78。私はもちろん、今日生まれた赤ん坊も、この数字を超える高卒ルーキーを目撃することは、一生ないだろう。

しかし、彼が1年目の衝撃を超えることは、ついになかった。

凡退すると激高してバットを叩き折り、内角を攻める投手を威嚇し、ときにはバットを投げて襲いかかったり、首脳陣を批判したりしながら、反社会勢力に憧れ、覚せい剤に堕ちていった。

試合が終わるごとに必ず書き込んでいた「対戦ノート」は、プロ1年目でやめてしまった。

憧れの読売に移籍すると、元所属のチームは息を吹き返したように強くなった。

驕慢と、失敗に向き合えない弱い心がなければ、彼は王貞治に迫ることができたのか?あるいはタイトルの一つでも獲ることが出来たのか?

それとも、そもそもの話、その才能はファンが勝手に見た幻覚、奥行きのない薄っぺらいものだったのだろうか?



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トレーナーを務めたジェフ・メイウェザーが「お世辞じゃない。才能なら甥っ子よりも明らかに優れている」と驚愕した天才がいた。

WBOジュニアフェザー級王者の時代、ライバル王者との統一戦が内定した。オッズは3-1、多くの専門家は「マニー・パッキャオは9ラウンドまで立っていられないだろう」と予想した。

フライ級を主戦場にしたアマでは310勝10敗。プロ入り後は成長する肉体とも格闘しながらも、無敗をキープし、ジュニアフェザー、ジュニアライト級の〝フロッグ・ジャンプ(階級またぎ)〟の2階級制覇。

ライト、ジュニアウェルター級でも世界挑戦、5階級で世界トップの実力が認められた天才。

しかし、プロモートの弱さが原因の試合枯れ。体重超過の自己管理の甘さ、度重なる怪我…不運と不幸と自業自得の輪廻に巻き込まれてしまう。

あのとき、ジュニアフェザーでパッキャオ戦が実現していたなら?

あるいはライト級でファン・マヌエル・マルケスと戦うことが出来たなら?せめて、マイケル・カツディスやアンソニー・ピーターソン、エドウィン・バレロとマッチメイク出来ていたなら?

どこまでもつきまとう〝イフ〟が全て現実になっていたのなら…ドミニカ史上最高ボクサーはもう一人のパッキャオになれたのか?…それは誰にもわからない。

わかっている事実は、彼はパッキャオにはなれなかったということだけだ。


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「フロイド・メイウェザーという難問を解くカギを持つ男」と評価されたボクサーがいた。

メイウェザーに勝てるのは、攻撃的なファイターではない。それはディフェンス・マスターにとってオーダーメイド。

タイプの異なる防御の達人こそが、フロイドを機能不全に陥らせる唯一のキラー、それこそが彼だと言われた。

婚約者への発砲、飲酒運転、コカインまみれ、婦女暴行、殺人未遂、暴行傷害、警官とのトラブル…そんな犯罪を繰り返した挙げ句に、ようやくキャリア唯一の敗北をマジョリティデジションで喫した。

つまり、それまで無敗だった。

もし、フロイド同様に数え切れない前科を抱えた彼が、やはりフロイドと同じくボクシングにも集中していたなら…。

おそらく、フロイドは無敗ではなかっただろう。



15粒

…もし、彼らの運命の歯車が小さな軋みを見せなければ、大谷翔平や王貞治、マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーは〝二番目〟として記憶されていたのだろうか?

それとも、彼らの個性は、そもそも運命の神様のお気に召さない、破綻が未来に刷り込まれた浅薄な才能に過ぎなかったのか?