かつて、リング誌に連載していたコーナー「YOU BE THE JUDGE(あなたがジャッジだ)」。

前回は「HOW JUDGES SCORE FIGHTS(採点基準)」(2012年4月号)をご紹介しましたが、きょうは「HOW CAN JUDGES SCORE THE SAME FIGHT SO DIFFERENTLY?(同じ試合を見てるのに同志とそこまで採点が食い違うのか?」(2011年12月号)から。※記事掲載の時系列は無視して、わかりやすいよう順番でお届けします。

筆者は、ネバダ州アスレティック・コミッションの元ジャッジ、チャック・ジアンパ。

議論を呼ぶ判定のサンプルに事欠かないボクシングの世界ですが、判定決着でなかったにもかかわらず大きな論争となった「フリオ・セサール・チャベスvsメルドリック・テイラー」(WBC/IBF世界ジュニアウェルター級タイトルマッチ:1990年3月17日)をテキストにしています。

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どうしてジャッジの採点が大きく食い違うなんてことが起きるのか?

①ジャッジの座席位置が違うこと。リングサイドの3辺で採点するジャッジの視界はそれぞれ違い、それぞれのジャッジに異なる死角が生じる。

そして、致命的なことにリングの形は4辺。つまり最後の1辺にはジャッジが座っていない。ここにはコミッション席でスーパーバイザーやリングドクター、タイムキーパーらが陣取る。

議論を呼ぶ判定が起きてしまったとき、メディアは「ジャッジは違う試合を見ていた」という常套句を皮肉として使うが、それはある意味正しい。

ジャッジは自分が視界にとらえたことしか採点できない。

私は「イベンダー・ホリフィールドvsマイク・タイソン第2戦」、すなわち〝Bite Fight〟のジャッジの一人だったが、あの瞬間は私の視界からはタイソンの背中越しにホリフィールドが見えていた。痛がるホリフィールドを見て、私は「バッティングだ」と思ったが、見る角度によっては何が起きたのかはっきり視認できただろう。

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②適切な経験と厳格な研修制度がプロボクシングのジャッジには欠落している。

多くのジャッジは自主的に仕事についてくれ、アマチュアボクシングのジャッジでもある。ネバダ州アスレティック協会の場合は、カジノのディーラーがレフェリーやジャッジを務めることもある。

メジャーリーグの審判とは、何から何までが違うことを理解して欲しい。
 
私もアマチュア審判で、80年代のアマチュアボクシングではダウンと、ナックルパートでしっかりヒットさせたパンチはの評価は同じだった。

84年にプロボクシングのジャッジの仕事を始めるときに、アマチュアの試合を引き受けることをやめると決めたのは、ジャッジとして完全に切り替えることが必要だと感じたから。


③そして、もう一つの原因はジャッジの哲学の問題だ。

「チャベスvsテイラー」はまさに哲学の問題だったと思う。

11ラウンド終了時点で、二人のジャッジが108-101と107-102でテイラー、私が105-104でチャベスだった。

試合後に、チャベスをリードさせた採点に、メディアとファンから集中砲火を浴びせられ、ネバダ州アスレティック・コミッションの管理下で試合のビデオを再検証した。

この試合が「チャベスの有効打(EFFECTIVE AGGRESSION)」と「テイラーの試合運びのうまさ(RING GENERALSHIP)」をどう評価するか?という、微妙な展開だったことを理解してもらうことができた。

私の採点以上に、リチャード・スティールが残り2秒で止めたことが大きな非難に晒されたが、あの瞬間テイラーが重大な危機に瀕していたいたのは間
違いない。

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あの試合をチャベスの105-104とスコアするのは、素直に受け入れられません。

それでも、その見方は絶対にありえないか?

となると…。ちょっと考え込んでしまいます。