フロイド・メイウェザーが、叔父ロジャーの死をきっかけに「真剣にトレーナーを目指す」と誓ったのは、今年2月のとこでした。

メイウェザー相手に14歳の甥っ子がミット打ちする動画を見たときは、さすがに驚きました。甥っ子が練習を始めて2回目というのも「嘘だ」と思わざるをえないほど、滑らかなパンチをミットに吸い込ませていくのです。

甥っ子を誘うメイウェザーの足の運び、ミットの構え、打ってる方は完璧なタイミングとメカニクスを自然と体に覚えさせているはずです。次は、もっと上手くなっているでしょう。

最も優秀なトレーナーの典型例です。

「これが理想の打ち方」とは教えずに、生徒の肉体を使って答えを導き出すのです。

その逆が「これが理想の打ち方」と教え、生徒をカスタマイズすることです。メイウェザーのようなトレーナーに恵まれるわけがないから、多くの生徒はこのタイプのトレーナーと付き合っていかなければなりません。

まだ練習2回目の甥っ子は〝真っ白いカンバス〟ですが、そこに絵の具を塗るのはトレーナーではなく、甥っ子本人でなければ、本当の意味での技術や経験は身につきません。

個体差によって「答え」が異なるスポーツの指導において、これが究極最高の教え方です。

生徒の動きに合わせて、生徒に最も適した動きを、生徒の肉体を自然に使って教えるのですから。

もちろん、現役時代にとんでもない練習を重ねてボクリング理論を確立したメイウェザーが、引退してボクシングを俯瞰できる立場で、十分に動ける年齢だから出来ることです。

また、ガーボンタ・デービスのように完全にスタイルが固まっているトップ選手に対してもメイウェザーが優秀なトレーナーたりうるか?は全く別の問題です。

その意味では、トップ選手のトレーナーは生徒(選手)に合わせるのではありません。選手がトレーナーの哲学に合わせるのです。

逆に言うと、選手がトレーナーを選ぶのです。もっと言うと、選手はトレーナーを選ばなければならないのです。それが全くできなかった代表がマイク・タイソンでした。

同じタイソンでも、タイソン・フューリーがデオンティ・ワイルダーとの再戦にあたり、トレーナーを「スイート・サイエンス」を標榜するベン・ダビソンから、「攻撃は最大の防御なり」のクロンクの血を継ぐシュガー・ヒルにスイッチしたのは、その鮮やかな成功例です。

もちろん、スタイルからハートまで攻撃的なマニー・パッキャオと、「ボクシングはパンチを打ち合うゲーム」というフレディ・ローチのような運命の出会いもあるにはあリ、日本ではトレーナーとは「一蓮托生」が制度的な縛りもあって珍しくありませんが、世界的には極めて稀です。

まあ、選手とトレーナーが袂を別つのは、別の理由(カネ)が一番多いのも事実ですが…。


前置きが長くなりました。


月に何度か、中学野球の頭の悪い子供たちに英語や数学、国語を教えることがあるのですが、なるべく私の型にはめないように注意しています。

スポーツと比べると、教え方に個体差が小さく、答えの幅も狭いのが義務教育レベルのお勉強です。それでも、やっぱり生徒から引き出すのが理想の教え方です。

ただ、時間的な制約もありますし、毎週やるときは流れが出来ていてやりやすいのですが、何週間も空いてしまうと、お互いのリズムが合わずに、ついつい一方的にカスタマイズしてしまうことがよくあります。

面白いテーマなのですが、このブログで、中学生の教科書から問題を引っ張り出して「こういう感じで教えてます」というのも全く伝わらないだろうなあ、と痛感していたので、あまり突っ込んで書くことはありませんでした。

それなのに、なんでこんな話をしたかというと、子供に教えてるときにコメント欄に寄せられた質問に答えながら、これなら伝わるな、面白いかなと思いついたからです。
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本文とは全く関係がありません。

1. 匿名 2020年11月21日 14:18
クローズドサーキットとパブリックビューイングはどう違うのですかね?


この質問に対して、私は正確な答えを持っていなかったので、


2. フシ穴の眼 2020年11月21日 14:31
>>1
両者の厳密な定義はないかもしれませんが…。

確かに米国ではキャパ1万人レベルの大きなアリーナでクローズドサーキットをやりますから、あれはパブリックビューイングとどう違うのか…。

私のイメージの中では無意識に

▶︎100%カネを取るのがクローズドサーキット。クロサキは屋内。映画館やホテルの宴会場にスクリーンなど専用の上映設備をセット。せいぜい数千人規模。PPVにつながる囲い込みビジネス、ちょっと興味がある程度の〝一見さん〟には敷居が高い。ボクシング。

▶︎パブビューは屋外メイン、数万人もある。観戦料が安い、無料の場合もある。「街頭テレビ」の巨大版。ビジネスよりもファンサービス、業界を盛り上げようとする奉仕的な色彩が濃い。ニワカも誰でもウェルカム。サッカー。

ってな感じでした。

と答えました。

自分の考えをそのまま相手に送った形です。

これ、質問者が生徒ではないので、求められているのは「考えること」ではなく「答え」です。

そして、答えとしては悪くはないのかもしれませんが、よく考えると合格点には重要なキーワードが欠落していたのです。

完全に失念していたのですが、これが「生徒が考えて答えを出す」ように心がけていたら、重要なキーワードを忘れるなんてことなんて絶対になかったはずです。

そのキーワードは「テレビ」です。

「パブビュー」と「クロサキ」の違いは何?という問題を、「答える」のではなく「教える」のだとしたら、これ↓が正解に近いはずです。

「クローズドサーキットのポスターで必ず大書きされているのが〝NO TV〟(テレビではやりません)。

昨年のラグビーW杯では全国各所でパブリックビューイングが開催されましたが、同じ時間帯でテレビでも生中継していました。この〝NO TV〟と〝Yes TV〟という二つのビジネスにはどんな違いが生じるのか、そしてそれぞれのビジネスには、どんな未来が待っているのか、を考えよう」。

これだと、生徒から答えがどんどん湧き出し、それが単発的な問題の表層的な答えにとどまらずに、背後に抱える問題と、未来の明暗まで立体的に考えることが出来るはずです。

もちろん、長くても3年先の受験を見据えてこんな悠長なことをやっていたら、カスタマイズ人間に勝つ事はできませんが、教える側もこの姿勢を忘れなければ重要なキーワードを失念するなんてことはないはずです。