ヘミングウェイも沢木耕太郎も、巷のスポーツファンも、みんながみんな大好きなテーマ。
「敗れざる者たち」です。

昨日、PFPキングの一人テレンス・クロフォードに健闘したケル・ブルックもまた、敗れざる者たちの一人でしょう。

「敗れざる者」というと、ジョージ・フォアマンが真っ先に思い浮かぶ方も多いと思います。

彼は、1974年にモハメド・アリに最初の黒星を喫します。

その後も1977年まで戦い続けますが、彼のキャリアはあのキンシャサの未明で一旦の幕が降りました。

そして、その第二幕はあの絶対に取り返しがつかないはずの敗北を挽回する旅になるのです。

そして、あのキンシャサと同じトランクスを履いて、取り返しがつかないはずのプライドをついに取り戻すのです。

ここで挙げる〝敗れざる者たち〟は、フォアマンのようについに贖罪を果たした劇的な成功者ではありません。

そもそも、リングの上で失ったプライドを、リングの上で奪回してみせたフォアマンのようなケースは「敗れざる者たち」ではない気がしてきました。

これから紹介するのは、もっと単純解明な〝敗れざる者たち〟です。

ブルックのように、その敗北に誰もが哀惜の念を感じざるを得ない〝敗れざる者たち〟のリストです。

〝言い訳のきく敗北〟といっても当事者にとっては、大きな夢を打ち砕かれたわけですから、そのショックは測り知れません…。
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1934年の銀座線開通当初から走っていた車輌を復元したクラシックな列車が滑り込んできました。

これに〝当たる〟確率は5%ということなので、ちょっとした幸運です。

さて、本題です。



◉ケル・ブルック◉

人気階級のベルトを米国人相手に敵地で奪い凱旋、という英国ボクサーが受ける最高の賞賛を獲得したユニオンジャックのスーパースター。

その人気に胡座をかくことなく、ミドル級に恐怖の圧政を敷いていたゲンナディ・ゴロフキン、ウェルター級最強と目されたエロール・スペンスを自国に呼んで「勝てば英国史上最高のボクサーの一人」という冒険的な大勝負に打って出ました。

そして、先日のクロフォード戦はPFPキングに挑戦した大一番。

3つの敗北は、いずれも破滅的な結末を迎えましたが「無謀な挑戦」というにはあまりに言葉足らずで、軽すぎます。

ブルックは安全が保障された相手に勝利を積み重ねて手に入る中途半端な栄光には興味がなかったのでしょう。



◉ヘナロ・エルナンデス◉

日本でもお馴染み、帝拳のヘナロ・エルナンデスです!

生涯41戦38勝17KO2敗1分。

たった二つの敗北、そこにはオスカー・デラホーヤと、フロイド・メイウェザーJr.という、途轍もない名前が並びます。

ヘナロはゴールデンボーイと、マネーに墜ちる前の純粋に強いだけのプリティボーイにしか負けなかったのです。

そして、ヘナロを語るとき、そのメイウェザーが感動して泣いたというアズマー・ネルソン戦のスポーツマンシップも外せません。

ゴング後に受けたダメージの深さに自陣や主審から「試合中止で反則勝ち」を示唆されますが、毅然として拒否。

そのやり取りはHBOのマイクに拾われ、視聴者は痩身のテクニシャンの誇りの高さに心を震わすのでした。

「私はこの仕事に誇りを持っている。ズルいことして金儲けする気なら、ボクサーにはなっていない」。

引退後はリングサイドから現役時代と変わらないクレバーで鋭い解説を聞かせてくれていました。



来年6月7日。彼が天国に旅立ってから、ちょうど10年が経ちますが、ヘナロ・エルナンデスを忘れるボクシングファンは世界中に一人もいないでしょう。




◉リッキー・ハットン◉

ケル・ブルックを凌駕する英国の超人気者です。

ギネスビールをこよなく愛し、不摂生から過酷な減量を乗り越えてリングで暴れる姿は、まさにマンチェスターのブルーカラーにとって英雄そのものでした。

PFPランキングも常連、年間最高選手賞の経験もあるハットンは、日本でこそ〝ボクサーでなく相撲取り〟と揶揄されるなど評価は今一つな気もしますが、英国では文句無しのスポーツセレブです。

メイパック戦前の米英都市ツアーも華美で、MGMグランドガーデンアリーナに詰めかけた応援団からも英国での人気の大きさが十分伝わって来ました。

プロ48戦で45勝32KO3敗。

最後の48試合目は3年のプランクからカムバック、元王者ビチェスラフ・センチェンコ相手にポイントではリードしながらも9ラウンドKO負け。

あれは、余計な1試合でした。

この試合を除くと、ハットンが敗れたのは07年バージョンのフロイド・メイウェザーと、09年のマニー・パッキャオという、当時の圧倒的なPFPキング。 

それにしても、あのときのパックメイはヤバ過ぎです。あんな怪物に誰が勝てんねん…という二人でした。



話が脇道にされますが、英国ボクシングでよく耳にするアナウンスに「ストーン」(14ポンド)という重量単位があります。

フライ級=112ポンドは8ストーン、フェザー級=126は9ストーン、そしてハットンの主戦場ジュニアウェルター級=140は切れの良い10ストーン、ジュニアミドル級=154は11ストーン、スーパーミドル=168は12ストーン。

ハットンの「10ストーン」のコールは、特にお似合いで格好良かったです。




◉ティモシー・ブラッドリー◉

ESPNで大袈裟な身振り手振りと情熱的な解説でお馴染みのブラッドリー。

ボディービルダーのような肉体からは信じられないパンチの無さでしたが、無敗のままジュニアウェルターとウェルターを制したしぶといPFPファイターでした。

生涯戦績は、32勝12KO2敗1分1無効試合。

プロ36戦で敗れたのは、わずか2試合、いずれも相手はマニー・パッキャオでした。

敗北は、パッキャオに喫した2敗だけです。

本当は初戦も負けてたから「3敗」ですが、パッキャオにしか負けなかったという事実は変わりません。




◉キース・サーマン◉

29勝22KO1敗1分。

今、引退するとブラッドリーと同じ「パッキャオにしか負けなかった倶楽部」に入会決定です。

日本大好きで、プライベートでもふらりと来日することのあったOne Timeでしたが、このパンデミックで相当ストレスが溜まっているかもしれません。

手術を受けた右肘と左拳の他にも、全身古傷だらけの〝ケガのデパート〟。

何度かブランクを作ったために、PFPランキングも圏外に追いやられてしまいました。

タラレバを言い出すとキリがありませんが、パックメイ後のウェルター級ウォーズで最終勝者の座を勝ち獲ると期待されていました。

パッキャオ戦はまさかのアンダードッグでしたが、ケガとブランクがなければまだまだウェルター級のトップ戦線で戦える31歳です。


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他にもたくさん〝敗れざる者たち〟がいそうですが、思い浮かばないので、続きはまた。