And no matter who wins, one of these guys will actually prove his father a prophet.

ワシル・ロマチェンコとテオフィモ・ロペス。どちらが勝つにしても、すでに決まっていることがある。

「父親が正しかった」ということが証明されるのだ。


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逆立ち拳立て歩行に、拳のリフティング、視界からハミ出す広いスクリーンを前に頭を動かさずに動体視力を鍛える、洗面器の水に顔をつけて4分間も無呼吸で平気な顔…。

1ラウンド4分、インタバル30秒、そのスパーリングを次々に入れ替わる世界レベルのボクサー相手に15ラウンドをこなしても、軽い練習を終えたダンサーのようにタオルで汗を拭くと、呼吸も乱さずにストレッチを始める。

黒海に注ぐドニエスト川の激流を、10㎞も泳げる人間は滅多にいないが、ゼロではないだろう。逆流を遡ることが出来る人間も世界中を探せば見つかるかもしれない。

しかし、それを一糸乱れぬ美しいフォームで涼しい顔して泳ぎきってしまう人間は、ワシル・ロマチェンコ以外にはいないだろう。

「全てはバランス」。

強さも美しさも持久力も、突き詰めれば「全てはバランス」。そこには、無秩序で下品なパワーなど一切入り込む余地はない。

そう、そのパワーすらも「バランス」がなければ何の意味もなさない。

精密に積み重ねられた練習から得た記憶は、経験というデータに換算され、二つの拳に埋め込まれる。

そんな唯物的で科学的なアプローチが旧ソ連の戦闘機を操縦していたアナトリー・ロマチェンコによって〝計算〟されたものであったことは、考えてみると別段驚きはない。

しかし、最近になって続々と公開されているワシル・ロマチェンコの特異な練習風景は、すでに世界中のボクシングファンを驚愕させている。

アナトリーはウクライナの五輪チームを指導し、2012年ロンドン五輪で5つのメダルを母国に持ち帰った。

彼の指導法がワシルだけにはまった偶然や幸運でないことは、誰の目にも明らかだ。

二人のオレクサンダー、グボジークとウシクの「我々はいたずらに筋肉を鍛えるようなことはしない」と〝アナトリー・メソッド〟に心酔している。

ソビエト連邦は滅びたが、究極の唯物主義の結晶は生きている。しかも、皮肉なことに資本主義の権化、米国のリングで。

ドライで最先端で科学的な無菌室で培養されたスーパー細胞から誕生したのがワシル・ロマチェンコなら…。

それとは、あまりにも対照的なウェットで雑菌だらけで人間の喜怒哀楽の中でのたうち回りながら「10月17日」に辿り着いたのがテオフィモ・ロペスだ。