4月25日、ネバダ州ラスベガス、マンダレイベイ・リゾート&カジノ。

井上尚弥のトップランクデビューが1月31日、正式発表されました。対戦相手は大方の予想通り、世界バンタム級WBOバージョンのベルトを巻くジョンリール・カシメロ。

その同じ1月31日に、東京地裁が「亀田裁判」でJBCが敗訴する判決を下しました。

「デビューした頃の日本ボクシング界が本当に嫌いだった」と穴王者・決定戦狙いの〝亀田の流儀〟を批判、「リアルを求める」井上と、「プロだから稼いでナンボ、目立ってナンボ」 「井上君はもっと稼いでもっと注目されていい」と言い放つ亀田興毅。

対照的に見える二人ですが「世間の耳目を集めるのがプロ」なら亀田もまたリアルです。 

どちらもリアル。その流儀が違うだけです。

井上が階級最強を証明することにつながらない世界戦を忌み嫌うのと同じように、国内で億を超えるファイトマネーを稼ぐ亀田にとって報酬も注目度も低い米国に世界的な評価を求めてわざわざ出向くハイリスクローリターンは理解できないでしょう。

この流儀の違いは、極めて局地的な日本のプロボクサーにだけ当てはまる「奇妙な分離」です。

世界中のほとんど全ての国のボクサーにとって、カネも栄光も海外で略奪するしかありません。カネと栄光は離れることなく、いつも一致しているのです。

そんな海賊の気質を持つボクサーの世界一の輸出国がフィリピンです。

彼らには国内の人気によりかかって大金を享受する選択肢はありません。カネと注目が欲しければ、豊かな外国で強奪するしかないのです。

そこには日本のように「二つのリアル」などありません。

そんな飢えた海賊の血を持つフィリピーナの典型がジョン・リールカシメロです。
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TA-TA TETE 、 HELLO CASIMERO
さよならゾラニ・テテ、こんにちはカシメロ。

1982年2月13日生まれのカシメロは、井上と拳を交えるときには31歳となっています。93年4月10日生まれの井上も一つ年齢を重ねた27歳でフィリピンの野生を迎え撃つことになります。

カシメロの身長/リーチともに163㎝に対して、モンスターは165㎝/172㎝。井上に身長で2㎝、リーチではなんと9㎝のアドバンテージがあります。

しかし、175㎝/183㎝のテテを攻め落としたカシメロにフレームへの不安は皆無でしょう。

プロ14年目を迎える29勝20KO4敗1分のカシメロがどんなボクサーなのかは、直近の勝利と敗北が象徴的に教えてくれます。

直近の勝利は去年11月にWBO王者ゾラニ・テテを3ラウンドに2度倒してストップした番狂わせ。

2ラウンドまではテテの右ジャブが、カシメロの野生を封印しているように見えた展開でした…しかし3ラウンド、カシメロの荒い攻撃を不用意なダッキングでかわそうとした南アフリカ人のテンプルにカシメロの右フックが汚い角度でヒット。

立ち上がったテテの不安定な足元を見るまでは、この妙なパンチがどれほど効いているのかわかりませんでした。

井上が「ラフファイトという怖さ、頭から突っ込んでくるし、かつ恐れず入ってくる」と警戒する野生は教科書には載っていません。

ペドロ・ゲバラ、アムナット・ムエンロン、チャーリー・エドワーズ、リカルド・フランコからも勝利を収めており、その攻撃力、実力の高さは証明済みでしたが、テテ戦でさらに裏書きされました。

次に、4つの敗北を振り返ります。

15戦目で初黒星を喫したローマン・ガルシア・ヒラレス戦(2010年7月:SDでWBO暫定ジュニアフライ級タイトルを失う)、2011年3月のモルティ・ムザラネ戦(2011年3月:5ラウンドTKO負け:IBFフライ級挑戦に失敗)の2連敗。

2015年6月にはアムナットに幻惑されてIBF暫定フライ級王座を奪われ3敗目(11ヶ月後のリマッチで雪辱=4ラウンドKO)。

そして、直近のジョナス・サルタン戦(2017年9月)。IBFジュニアバンタム級王者ジェルウィン・アンカハスへの挑戦権を賭けた一戦、下馬評は圧倒的有利だったものの判定負け。

「減量がきつくて練習が計画通りにこなせなかった」と認めるような動きの悪さ、重さでした。

集中できている試合では野生のパフォーマンスが爆発する一方で、自己管理は甘く安定感は欠如しています。

昨年からMPプロモーション傘下に入り、マネジメントもモーリス・イーストに代わりました。

平仲明信をKOした、あのモーリス・イーストです。イーストはトレーナーとしてもマニラとラスベガスを往復する多忙の身。ベガスではエディ・ムスタファ・ムハンマド(ロブ・ブラントもコーチ)のアシスタント・トレーナーも務めています。

カシメロのムラっ気のある性格に、ゴタゴタの多いプロモート面…それもまたフィリピンの野生の特徴です。

真摯にボクシングに取り組む井上と、気まぐれな野生派カシメロ。対照的な二人の激突。

カシメロが万全の心身でリングインすることが条件ですが、非常に面白い試合になりそうです。