年の瀬というのはいつだって慌しいもので、夜遅くまで働くのは大嫌いですが、タクシーで家路につくのは嫌いじゃありません。

車の窓から流れる夜の街は、力尽きたようにも、昼間の喧騒から逃れてゆっくり休んでいるようにも見えます。

24時間営業が常識だった牛丼屋も閉まっている店が目立ちます。 

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「あー風呂入って寝よ」 とげんなりしながら、真夜中に帰宅。

リビングのテーブルには、私宛の手紙などが来てたら家族が置いておいてくれるのですが、今夜は一目でそれとわかる白いビニールの封筒が。

定期購読している英国ボクシングニューズ(BN)誌です。

疲れて帰って来て、リング誌やBN誌が届いてると元気になります。が、しかし朝まで読み込んでしまってボロボロの体調で翌日を耐える、なんてことも珍しくなく、奴らはある意味で地獄の使者です。

リング誌は6ドル95セント(約770円)、BN誌は3.99ユーロ(約484円)。ディスカウント期間に定期購読するとリング誌は2年64ドル99セント(約7150円)、BN誌は1年94.5ユーロ(約1万1500円)です。

これは現地価格ですが、2年購読だとリング誌は1冊297円!BN誌は212円!このディスカウントは日本の雑誌ではありえません。羨ましいです、現地価格。

ただ、日本でも定期購読するとなると、リング誌は2年99ドル(1万900円)、BN誌は1年160ユーロ(1万9360円)で1冊あたりは約450円、BN誌は約360円。現地価格と比べなければ、べらぼうに高額な雑誌じゃありません。

その昔、紀伊國屋やブックファーストなど大規模書店ではリング誌を扱っていた時代もあったのですが、この10年くらいは見かけません。

リング誌の凋落が原因ではなく、都心部でも洋雑誌コーナー売場が大幅に縮小されているように感じます。

そして、紀伊国屋書店などのネットストアで購入するとリング誌は1冊で送料込みだと2000円以上、BN誌は2500円以上と、ちょっとバカバカしい金額に高騰してしまいます。

BN誌の記事で伊藤雅雪から番狂わせでWBOジュニアライト級王者となったジャーメル・ヘリングが初防衛に成功、彼が抱える Survivor's Guilt について掘り下げています。

このブログでも紹介しましたが、ヘリングは海兵隊としてイラクに2度も出征しました。

しかも、2度とも「片腕を失って帰国したら『運が良かった』と家族から抱きしめられる」ような最激戦区でしたが、ヘリングは2度ともほとんど無傷で帰国できました。

「誰からも尊敬されていた軍曹や、婚約者を残して戦地に赴任した優しい女性兵士、過酷な激戦の中でもユーモアを忘れず周囲を和ませてくれた同僚…彼らがあっけなく死んでしまったのに、どうして何の取り柄もない自分だけが生き残ったのだ」という思いにヘリングは悶え苦しみます。

街を歩いていても誰かが自分を狙われている…角に停まっているゴミ収集車にプラスチック爆弾が仕掛けられている…妄想や幻覚、幻聴に四六時中苦悩する日々。

生き残ってしまった罪悪感、Survivor's Guilt は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種です。



「自分は病気だ」と嘘をついて徴兵を免れた三島由紀夫も「どうして嘘をついて生き残ってしまったのか」とSurvivor's Guilt に取り憑かれます。

共に戦い「もう一度世界王者になる」と父親と交わした約束を永遠に果たせなくなった辰吉丈一郎がリングから降りないことも、彼がSurvivor's Guilt に近い感情に囚われているのだとしたら、非常に筋が通って見えてきます。

Survivor's Guilt を晴らすことが出来るリングという〝死に場所〟を持っていたヘリングや辰吉は幸せなのかもしれません。

三島が、日本を護るために徴兵されて散った仲間たちに報いるには、 自衛隊市ヶ谷駐屯地に乱入し、そこに無理やりの〝死に場所〟を作るしかなかったとしたら、それは不幸です。

1970年、三島が割腹自決したとき、私は生まれてはいましたが物心も付いておらず、三島は歴史でしかありません。

いつもながらとりとめのない、まとまりのない、話になりました。