普通に考えるとミスマッチな「井上尚弥vsノニト・ドネア」が、どうしてこんなに楽しみなんでしょうか?

ドネアよりもエマニュエル・ロドリゲスを押し切ったジェイソン・マロニーや、拓真とのWBC団体統一戦を争うノルディン・オーバアリのほうが、善戦しそうです。場合によっては、ステフォン・ヤングの方が長い時間を生き延びることが出来そうです。

にもかかわらず、ボクシングファンにとってこの試合は「井上の序盤KOしかない」からソソられないというわけではないのです。 

ドネアは華があるんです。井上にはまだ、それはありません。

昨日は、リング誌12月号は「井上vsドネア」を無視して、カネロvsコバレフに多くのページを割くのは仕方ないにせよ「井上vsドネア」を完全無視で「パッキャオvsハメド」特集ってふざけるなッっ!
と憤ってしまいました。

ハメドもまた、ドネアを遥かに上回る華がありました。

そのリング誌の特集でハメドは「私はボクシングの歴史を変えた」「私は誰からも逃げていない」ということも滔々と語っているわけです。

後者については、ハメドの一発殿堂が叶わなかった最大の理由で、ハメド本人が「(明白に対戦を避けたと非難された)ファン・マヌエル・マルケスはオーソドックスでテクニックもパワーも飛び抜けていない。逃げる理由がない。プロモーターが勝手に避けただけで、私は誰からも逃げたことはない。逃げたと言われ続けたアントニオ・マルコ・バレラとも最後は戦った」と抗弁していますが…。

まあ、明らかに逃げてました。あれだけ指摘されてた現役時代に「だったらバレラ、モラレス、マルケスに勝てばいいんだろ!!」と叫ぶことなく、ずーっと沈黙でしたからね。

そんなハメドのチキンに幻滅した世界のボクシングファンの前に現れたのが、マニー・パッキャオでした。

やはり、パッキャオは途轍もない強運の持ち主です。メキシコ史上屈指の強豪が三人も、ハメドが逃亡するという演出効果まで伴って、目の前に現れてくれたのですから。

そのハメドが、自画自賛する前者の言葉「モハメド・アリもシュガー・レイ・レナードもできないことを私はやった」と胸を張るのが「米国市場に軽量級でビッグファイトをもたらした」ということです。

その通りです。

このブログでも「井上信者が妄想しているラスベガスは存在しない」と断言していましたが、「例外はある」と付記していたはずです。

例外はバレモラマルの三人や、彼らから格は何枚も落ちるものの、今ならレオ・サンタクルスです。

バレラvsモラレスはMGMグランドガーデンアリーナのメインで戦い、それぞれ最終的に450万ドルを手に入れました。 その前座でフェルナンド・モンティエルがひっそりと二階級制覇に成功したものの報酬はありえないほど低い1万5000ドル!。しかし、それでも当時のモンティエルにとってはキャリア最高でした。

同じメキシコ人でも、メジャーリーガーのスターと3Aの控え選手ほどの格差です。

「軽量級でメジャー」…「カリスマ主婦」のようなパラドックスに満ちた言葉ですがモラレスやバレラはそれを具現化していたのです。マルケスは、華やかで早熟なライバル二人と比べると不運でした。


前置きが長くなりました。

米国で軽量級選手がスターになることはありません。バレラ、モラレスも15年周期でやってくる流星群のような超常現象です。
IMG_3161「マルケスから逃げまくった」という理由で一発殿堂を阻まれたハメドでしたが、「米国で最も成功した軽量級」と断言して差し支えないでしょう(もちろんパッキャオは例外です)。

「空飛ぶ絨毯」で入場、ハメドは超一流のエンターテイナーでした。



バレ、モラ、マル。彼らをしのぐ超常現象がナジーム・ハメドでした。

ボクシング150年の歴史で、最も注目された軽量級という意味では「150年に一度の単独流星」です。

イエメン王朝の寵愛と、英国のバックアップを受けたという「温室」な一面はあったとはいえ、ハメドが強豪王者で、何よりも試合が面白かったことは、誰も否定しないでしょう。

「弱い相手としか戦っていない」という批判も正確ではありません。全盛期ではないもののの、日本でもおなじみのウィルフレド・バスケスや、ケビン・ケリーなど名前のある選手を撃破。

ハメドは強い相手にも勝っているのです。ただ「せっかく時代を共にした超弩級の強豪バレモラマルからは逃げまくった」だけなのです。

バレラとは戦いましたが、完敗。残る二人とやってたら、キャリアにあと二つの黒星が間違いなく付いていたとみなされています、逃げたのだから。

それでも、ハメドのやり方、つまり「イエメン王朝=ジャパンマネー」のメソッドなら井上尚弥も米国の日系人コミュニティや、日本からの観光客による相乗効果でラスベガスやニューヨークで大きなイベントができるかもしれません。

まあ、それなら日本でやれよ、な話ですが。

実際に村田諒太も「ミドル級なんて日本で開催は無理」と、せいぜい最初の世界戦くらいと思ってましたが、村田以上のマネーパワーは現状ではいないんですね、ミドルですら。


村田は、現在最も人気のあるミドル級相手でも日本開催が出来ることを知らしめました。

もちろん、金ロは例外です。

ミドルですら、ジャパンマネーの引力がここまで強烈なのです。

ハグラー、レナードの時代を思い返すと「レナード以外なら東京に引っ張り込める」ということですから、ミドル級でも米国の存在感が希薄になってしまったということでしょうか。

いずれにしても、軽量級のパワースポットは日本でしかありえません。

ラスベガスはブラックホールです。