具志堅用高に張正九、柳明佑。ウィルフレド・ゴメスにカオサイ・ギャラクシー、リカルド・ロペス、内山高志…。

彼らの共通点は2つ。

1つは、世界のボクシング史にその名を残す軽量級グレートたち。

そして、もう1つはオリジナル8、つまり最初の8階級ではなく「水増し新設された階級」で長期政権を築いたということです。

新設直後の階級は、ファンの認知が浅いため人気もなく、何より層が薄いことで、競技レベルがオリジナル8と比べて低いと見なされてきました。

では、もしジュニアフライ級が新設されず、具志堅や張がフライ級で戦っていたとしたら、4ポンド重いクラスでも同じような業績を収めることが出来たのでしょうか?

それとも箸にも棒にもかからないまま、平凡なキャリアを閉じていたのでしょうか?

それとも、その中間くらいの成績を残していたのでしょうか?

現在、17までに細分化されたプロボクシングの細切れ階級には、批判的な意見しかありません。

特に3〜4ポンドとコマ切れに刻まれた軽量級の新設階級は、その存在意義が冷めた目で見られて来ました。

軽量級王国の日本ですら、ジュニア階級への偏見は存在し続けています。

これまで(2019年8月22日現在)の日本人世界王者の人数(複数階級制覇はダブルカウント)を振り返ってみると…。

◉ミドル級:2人

◉ジュニアミドル級:4人

◉ウェルター級:0人

◉ジュニアウェルター級:3人

◉ライト級:3人

◉ジュニアライト級:9人

◉フェザー級:5人

◉ジュニアフェザー級:11人

◉バンタム級:12人

◉ジュニアバンタム級:15人

◉フライ級:19人

◉ジュニアフライ級:15人

◉ストロー級:12人 
 

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

軽量級に明らかに偏った姿が見てとれます。

全13階級、延べ110人の世界王者のうち84人(76.4%)までがジュニアフェザー級以下の軽量級。フェザー以上の中量級は26人(23.6%)に過ぎません。

さらに、欧米基準の概念(ライト級以上)の中量級となるとその数字は12人(10.9%)にまで落ち込みます。

日本人の平均的な体格と減量を考慮して考えるとフェザー級近辺が主流になるはずですが、現実のボリュームゾーンはフライ級近辺となっています。

日本人も過酷な減量を優先して、本来の体格・骨格から大きく乖離した階級で戦っているのです。

そして、110の王座をオリジナル8(8階級)に絞り込むと41(37.3%)と三分の1程度まで落ち込みます。

それ以外のいわゆる水増し階級は、数こそ5つとオリジナル8よりも少ないにもかかわらず69人(62.7%)、過半数を上回る割合となっており、日本人世界王者が「軽量級の非オリジナル階級」に集中していることがよくわかります。

70年代に始まった階級増設時代から、オリジナル8・純粋階級の王者に敬意が払われる傾向は確かにありました。

つまり「オリジナル階級の王者は強い」ということです。

裏を返せば「ジュニア階級が狙い目」という視点が厳然として存在していました。

ジュニア階級はある意味、天から降って来たキャッチウェイトとも言えます。

そして、17階級まで細分化され階級間の距離が一気に縮まったことは王者のあり方にも影響を与えています。

王者のあり方は、1つの階級で防衛を重ねるのではなく、容易に渡り歩ける階級制覇スタイルに変容しているのです。

時代の変遷とともに、複数階級制覇に欠かせない水増し階級に向けられる偏見の視線は、徐々に弱まっているのは間違いありません。

例えば、ジュニアライト級はよく言えば「ウェルターへと続くスターダムへの出発ゲート」、悪く言うと「メジャーへ跳躍するための踏み台・通過点」になっています。

メイウェザーやパッキャオが君臨している最中の「出発ゲート」のジュニアライト級に割り込むのは至難の業ですが、彼らがいない「踏み台」はけして難攻不落の階級ではないという二面性があります。

ジュニアミドルやスーパーミドルよりも純粋ミドル級、ジュニアウェルターやジュニアミドルよりも純粋ウェルター級にスターが集まり、人気も報酬も高い傾向は今も昔も変わりません。

デラホーヤやメイウェザー、カネロらがジュニアライト級やジュニアミドル級を出発ゲートに選んだ理由は、目指すべきターゲットの階級よりも攻略難易度が低いからでした。
IMG_0044
オリジナル8時代に世界王者となった唯一の日本人、白井義男は17階級をどう感じていたのでしょうか。

リング誌などで中量級・重量級で間歇的に特集されている「今もし8階級なら?」。レンズの焦点を軽量級に当ててみます。

水増し階級で歴史的な偉業を達成した軽量級グレートたちの本当の実力はどうなのか?

水増し階級と揶揄され、今なおメデイアやファンからその存在が否定的に見られることもある〝ジュニア〟階級。

そのジュニア階級で目覚ましい業績を残した軽量級のレジェンドを回想してゆきます。