まず、日本よりもはるかに教育レベルが低いトランプ脳の米国人ファンでも騙されなかったWBSSにどうして井上信者を筆頭に日本はまんまと騙されたのか?

これは、無知蒙昧な井上信者だけでなく、メディアにも責任があります。

何度か指摘していますが「黄金のバンタム」は正確に報道しないと、井上信者のようなおめでたい方々は本気で「バンタムはメジャー階級」と誤解してしまうということです。

この誤解の延長が「井上はラスベガスでPPVで何十億円も稼ぐ」という、絶対にありえない妄想を育ててしまうのです。

井上よりも遥かに世界評価が高かったノニト・ドネア(2012年BWAA年間最高選手証/PFP最高位3位)やローマン・ゴンザレス(リング誌年間PFP2年連続1位)らがPPVで何十億円も稼いでいる実績があるのなら、まだわかりますが、ドネアもロマゴンも何十億円はもちろん、PPVの経験すらゼロです。(ドネアはパッキャオの前座で一度経験がありますがPPV歩合とは関係がないのでゼロと言って差し支えありません)

厳しい言い方になりますが、パックメイのウェルターと井上のバンタムは人気=報酬的には同じスポーツではありません。

そして、ドネアは西岡戦をはじめ100万ドル越えの報酬を得たことがありますが、トップランクがゴールデンボーイ・プロモーションズと意地を張りあう引き抜き合戦で契約内容を釣り上げただけで、現実には「フェルナンド・モンティエル戦の35万ドルでも大赤字」(ボブ・アラム)というレベルのボクサーです。

だから、トップランクはドネアの温室を剥がして強豪をぶつけて商品価値を落としてから、契約期限前に無条件でリリースしたのです。嫌な話ですが「ドネアが欲しければどうぞ、デラホーヤ」とまで言い放ちました。

もちろん、そこでリゴンドーやウォータースを粉砕していれば話は変わってくるのですが。パッキャオのように。

トップランクとの意地の張り合いがなければドネアの商品価値はホープの踏み台くらいです。GBPもドネアに手を差し伸べることはありませんでした。

ロマゴンに至っては、HBOが必死で売り出してファイトマネー50万ドルを獲得したこともありましたが、それも精一杯の背伸びでジュニアバンタムで挫折したロマゴンが米国で人気者になれるわけがありません。

何度も繰り返しますが、米国に軽量級の需要は全くありません。あるとしたらヒスパニックのスター需要だけです。それを満たすレオ・サンタクルスやアブナル・マレスも100万ドルが一杯一杯、彼らですらPPVとは無縁です。

男子プロ野球と女子プロ野球、それくらいの差があると考えて全く差し支えありません。現実はそれ以上の差があります。共通点は一応同じボクシングということだけ。井上信者が本気で「そこ」を望むなら井上に「バンタムじゃなくウェルターで戦ってくれ!」と叱咤激励するべきですね。


野球でもサッカーでもボクシングでも、選手報酬の源泉は「本来なら」(1)ゲート収入(入場者が買ってくれるチケット)と関連グッズの販売(2)会場スポンサー収入(リングや会場周りの広告)(3)テレビ局が支払ってくれる放映権収入の3つです。

かつて日本プロ野球は、パリーグをはじめ不人気球団は親会社の広告宣伝の一環として「広告費」として球団費用を補填していましたが、徐々に改善されています。

完全個人競技のボクシングは企業の広告費としての手厚い支援はありえません。ただ、大阪で試合をしたら10倍以上の報酬が得られるというのに、米国で時給1000円で働くアルバイト年収以下で米国で戦った井岡一翔のように「企業とボクサー」の新しい関係が始まっています。

世界的な階級のはずのミドルでも日本市場で大きな可能性を示している村田諒太と井岡の取り組みは、非常に興味深いものがあります。

「軽量級はラスベガスで相手にされない」というのは真実ですが、ミドル級でも「米国市場が最高のマーケット」とは限らないのがはっきりしました。

報酬でミドル級のトップはカネロですが2位は村田です(ゲンナディ・ゴロフキンやダニエル・ジェイコブスはカネロ戦以外は村田以下)。

経済原理だけでミドル級を考えると(それがプロボクシングですが)カネロvs村田が世界最高のメガファイトです。

そして、軽量級では井上や井岡はファン・フランシスコ・エストラーダの何倍も稼ぎ、100万ドルプレイヤーのレオ・サンタクルスやアブネル・マレスも亀田興毅の足元にも及びません。軽量級の本場が日本であることは、幼稚な井上信者でも否定できないでしょう。

ゲート収入は知れています。平均5000円の席料で1万人集めても5000万円。グッズ収入の利益など知れています。

テレビ放映権も、軽量級史上最高の「辰吉vs薬師寺」で「(当時のスポーツコンテンツの王様)巨人戦に近い」という推定1億円でした。現在は数千万円が関の山です。地上波でも1000万が大台です。というか地上波テレビがつくなんてボクシング世界戦では今やレアケースになっていまいました。

日本ではここまで、です。放映権料が破格の亀田兄弟でも、ファイトマネーはせいぜい1億円でした。

では米国は何が違うのか?

基本的には同じですが、テレビ局が「ボクシング予算」を潤沢に持っていた時代がありました。このボクシング予算とスポンサーによって、人気の中重量級では報酬100万ドルを約束することが可能でした。

では、100万ドルで済まないHBOやショウタイムの年間予算もふっとぶファイトマネーを要求するパックメイのような守銭奴にはどう対応するのか?

やつらにはボクシング予算はほとんど裂きません。1件80ドル前後のPPVを売り出し、歩合で支払うのです。

これこそが「本来」でじゃないビジネスモデルです。ゲート収入は席料が破格のパックメイでもせいぜい1000万ドル前後ですが、PPVなら20万件販売で1600万ドル。100万セールスなら8000万ドルです。

先日のパッキャオvsサーマンは50万セールス4000万ドルを売り上げました。ここにゲート収入(この興行はカジノ開催なのでプロモーターに入るのはMGMの招致フィー1200万ドル)やテカテビールなどの細かい100万ドル単位のスポンサー収入や世界放映権などが加算され、興行規模は6000万〜7000万ドルに達した模様です。

このPPVシステムはその前身のクローズドサーキットも含めて「マニアの囲い込みで長期的には産業の衰退に直結する」という通りの事態になって、ボクシングはマイナースポーツに転がり落ちました。

それでも「ゴルフやテニスのようにスポンサーが莫大なサポートをしているスポーツではなく、パッキャオを見たいファンが身銭を切っている、本当は健康的なビジネスモデル」という詭弁も弄されてきました。

確かに親会社が損失を補填して生きながらえてきたプロ野球は不健康かもしれませんが、一般ファンを遮断するPPVが擁護されるわけがありません。

アジア人の軽量級の井上が目ぼしい相手が1人もいないマイナー階級で無双して、米国に需要が勃興するわけがありません。

米国のファンがWBSSを無視したのは、そもそも馴染みのないマイナー階級だからです。さらに高額賞金も、パックメイやカネロをよく知っている彼らからしたら驚くべき数字ではなかったでしょう。

日本の一部馬鹿メディアや井上信者があっさり騙された原因は、WBSSの胡散臭い立ち上げ宣言に対して「やっぱり来たかー!!!」という妄想の具現化を見たからでしょう。実際は具現などしてないのですが。

「黄金のバンタム」を誤解し、軽量級でもラスベガスや世界に需要があると妄想した井上信者や日本のボクシングファン、メディアはWBSSには格好のカモでした。