「道端や原っぱで野球をやっても誰も驚かないが、ボクシングをやれば警察が飛んで来る」。

誰の言葉だったか忘れましたが、寺山修司だったでしょうか?
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「ボクシングよりも登山や陸上競技の方が競技中の死亡率は高い」というボクシングファンの常套句は、廃止論者の「登山や陸上競技で死んでも〝犯人〟はいないが、ボクシングの場合は明らかに〝殺人犯〟が存在する。こめかみやアゴ、心臓や肝臓…人間の急所を狙う〝殺意〟がそこにあるのだから」という正論の前には無効です。

そして「殺意を持って戦っているボクサーなんていない。彼らは試合終了と同時に互いを讃え合って抱擁する」というボクシングファンの感動も簡単に論破されてしまいます。

「急所を狙って殴りかかっているのに殺意はなかったなんて世の中で通用しない。そんな理屈がまかり通れば世界から殺人がなくなる」。

一週間前の金曜日。マキシム・ダダシェフがリング禍で無くなりました。

まだ28歳でした。ロシアに妻子を残してカリフォルニア州をベースに戦っていた無敗のホープでした。

もちろん、対戦相手の選手には何の罪もありません。

「悲しいけどこれもボクシングなんだ」。

ダダシェフのトレーナー、バディ・マクガードが泣いたように。ESPNの強面解説者テディ・アトラスも涙したように。

「これもボクシングなんだ」…。

リング禍を防ぐために、ロープを4本に、グローブを大型に、世界戦を12ラウンド制に…様々な試みが続けられてきました。

それでも、まだ不十分であるなら。

グローブの更なる大型化。ヘッドギアの着用。ラウンド間のインタバルを2分に広げて、ドクターチェック。

優勢に試合を支配していたボクサーが、ラウンド間のドクターチェックでいきなりのTKO負け…そんな光景も当たり前になるでしょう。

「そんなのボクシングじゃない。それならボクシングファンなんてやめる」。そういう人は「あなたは殺し合いが見たいだけなんですね?」と聞かれたとき、どう答えるのでしょうか。