【問題①】下記の文章は全て事実を伝えていますが、真実は伝えていません。事実と真実の違いを挙げながら、どうして真実を隠すような報道がなされたのかを「統括団体」「競札」「階級」「招致フィー」「殿堂」の五つの言葉を使って説明しなさい。
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◼︎西岡利晃選手は、世界チャンピオンになるために、何度も挫折を繰り返しながらも、どんな逆境にも希望と勇気を忘れずに立ち向かい努力を続けました。

何度も世界挑戦に失敗し、大きな怪我も負ってしまう西岡に熱心なファンですら「終わった」と諦めました。それでも西岡は歯を食いしばって頑張りました。そして!5度目の挑戦でついに世界の頂点を掴み取ります。

ボクシングの世界タイトルマッチは通常、世界各国のコミッションや米国なら州のアスレチックコミッションが統括し、数多くのアルファベット団体が承認する形で行われます。

WBAやWBCは承認団体であって統括団体ではありません。

五輪の陸上100メートル王者を「IOCチャンピオン」と称することはまずありませんが、ボクシングの王者はその前に三文字のアルファベットが組み合わせられことが普通です。

五輪を統括するIOCや世界サッカーを統括するFIFAの大会で優勝するとThe Champion です。わざわざThe Undisputed Champion(議論する余地の無い王者)などと呼ばれることはありません。

王者が何人も乱立するボクシングでは99%以上がa Championに過ぎません。a Champion は直訳すると「(数多くいる)王者の中の1人」です。The Undisputed Champion の反対語ですから、もっとわかりやすく訳すと「議論する余地のある王者」です。

FIFAやIOCが人気チームや人気者に勝ってほしいとどんなに願っても、弱い相手をあてがって優勝させることは出来ません。

IOCは五輪の陸上男子100メートルで驚異的な世界記録を出して欲しいでしょう。世界中のメディアが何度も動画を流してくれれば莫大な放映権料が手に入りますから。計測器に細工を仕掛けたいくらいでしょう。

ITF(国際テニス連盟)だって毎回、フェデラーが優勝して欲しいと願っているはずですが、そんなに都合良くことは運びません。本音を言えばフェデラーにだけ弱い雑魚を当てたい、フェデラーにだけ敗者復活戦を用意したいでしょうが、そんなことしたら熱狂的なフェデラーファンでも怒り狂います。

そして、テニスはプロボクシング同様に一般ファンの関心を失墜させて、マイナースポーツに堕落するでしょう。

しかし、ボクシングではそんな不条理が出来てしまうのです。熱狂的な西岡ファン(本当はファンじゃなくて信者です)の目には西岡だけに作動する敗者復活戦の理不尽が見えないばかりか「何度も挫折してるのにそれを乗り越えるなんてすごい」と感動にすら変換させてしまうのです。

富裕な欧米で人気の無い軽量級ですが、日本は別格。どの承認団体も日本人ボクサーに王者になって長く防衛して欲しいと願っています。

西岡が失敗を何度繰り返してもチャンスが与えられ、最後は決定戦まで用意してもらえたのは日本人で帝拳所属のボクサーという理由だけです。

「WBCジュニアフェザー級王者」を世界の頂点と呼ぶのは正確ではありません。



悲願の世界チャンピオンになっても西岡は、さらなる高みを目指します。

かつて「メキシコのホープ10人」にも挙げられたジョニー・ゴンザレスを向こうに回した防衛戦では、なんと敵地に乗り込みます。1−3から5−1という圧倒的不利予想を立てられた試合を、ダウンを奪われながらも逆転KO勝ちを収めるのです。しかも完全アウェーで!

確かにジョニー・ゴンザレスはメキシコでホープの1人でしたが、25歳のときに日本でもお馴染みのジェリー・ペニャロサ(当時36歳)にまで敗れてキャリア6敗目を喫した時点で、Bクラスの烙印を押されてしまいました。

そんなジョニゴンに3−1の圧倒的有利予想が張られた西岡もまた、世界評価の低い王者でした。

敵地で戦うことがボクサーのレガシーにカウントされるならフロイド・メイウェザーの評価は〝敵地ポイント〟ゼロ、マニー・パッキャオはシュガー・レイ・ロビンソンを大きくしのぐ歴代PFPキングになりますが、もちろんそんな酔狂なポイント制度は存在しません。

さらに、西岡は開催地競札に敗れて敵地に行かざるをえなかったのであり、競札に勝っていれば日本開催でした。敵地で戦う姿は格好良いですが、それを評価の上乗せにすることはあってはいけません。



西岡はさらに上を目指します。当時のボクシングの世界ではマニー・パッキャオとフロイド・メイウェザーが一夜で何十億円も稼ぐメガファイトを繰り広げていました。

そのスーパースター2人がメインを張っていた舞台は、ラスベガスのMGMグランドです。
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現代のメガファイトの多くはウェルター級のメイウェザーとパッキャオによって作り上げられてきました。米国ボクシングでの軽量級は片手で足りる数少ない人気者を例外にして全く人気がなく、その報酬もウェルター級に代表される中量級や重量級と比べると劣悪です。

高額報酬を生み出すメガファイトの仕組みはPPVとカジノが興行主に支払う
招致フィーです。シーザースパレスからメッカの座を強奪したMGMグランドは札束攻勢でマイク・タイソンと複数試合契約を結び、メイウェザーやパッキャオの試合も1000万ドル前後で招致してきました。

西岡のクラスはウェルター級ではなく米国でほとんど関心を払われないジュニアフェザー級、誰も異論の無い不人気階級ですからPPVイベントのメインで組まれることはありえません。また、カジノが積極的に西岡の試合を招致するとも考えられませんから、そもそもカジノでやる意味が無いのです。

それでも、ラスベガス屈指のMGMグランドガーデン試合を開催できたのは大会場アリーナではなく、小さな宴会場だったからです。もしかしたら、西岡サイドは招致フィーの発想とは真逆に会場費を支払っていたのかもしれません。

MGMグランドガーデンアリーナとほぼ同じキャパの横浜アリーナなら「現実」として大きな興行を打てましたが、西岡も含めや陣営は「ラスベガスのMGMでメイン」「中田英寿やイチローのような本場からの逆輸入的なニュース報道」への強い憧憬が間違った錯乱方向に突っ走ってしまったのです。

同じ失敗を繰り返さないためにも、これからは誤解を誘導するような誇大報道は慎むべきです。


不断の努力を続けた西岡はパッキャオとメイウェザーと同じ「MGMメイン」の舞台まで手に入れるのです。しかも相手は、軽量級でありながらPFP常連だった超ビッグネームのラファエル・マルケス。「今度ばかりは西岡も不利」と言われましたが、結果は圧勝。西岡は歴史上誰もなしえなかっ「MGMメインで元PFPファイター撃破」という大偉業を成し遂げたのです。 

ラファエル・マルケスは米国で人気の無い軽量級の例外的なスターで、プロボクサー最高の栄誉である殿堂入りもありうる人気と実力を兼ね備えたスラッガーでした。

しかし、このときのラファエルはパンチドランカーの症状が悪化、承認団体のWBCが異例の引退勧告を出すほどの健康状態でした。全盛期のラファエルなら西岡は5ラウンドも立っていられなかったかもしれませんが、この試合ではオッズも予想も西岡が圧倒的有利。

戦前予想で「今度ばかりは西岡不利のオッズがでるでしょう」と語った浜田剛史の言葉は耳を疑うものでした。

ボクシングに全身全霊を捧げて、ビッグネームを渇望した西岡の姿勢は高潔で正しいものでした。

では、誰が間違っていたのか?誰が悪いのか?

同じ相手への世界挑戦のチャンスを4度も与え、挙句は決定戦まで用意したWBCは間違っています。

「西岡選手、どうかタイトルを獲ってください」という気持ちはわかりますが、態度に出したらもう公明正大なスポーツとはいえません。西岡にだけ何度も敗者復活戦が作動するなんて、犯罪的なまでに珍妙なシステムです。

中量級の本場であるラスベガスに、軽量級でもメガファイトがあるような幻想をファンに抱かせたメディアも間違っています。帝拳とWOWOWも「本当のMGMメインではない」ことはわかっていたはずです。それでも騙せると思っていたとしたら、ファンをバカにするのも大概にしなければなりません。

そして、騙されたファンも善意の被害者ではありません。今、ヤフコメなどにあふれる井上信者同様に「西岡がMGMメイン!もう日本では見れない」「日本のボクシング史に残る偉業」と妄想を真実かのようにを拡大再生産したことはやはり〝罪〟です。

西岡を欺瞞のMGMに向かわせたA級戦犯はWBCでもメディアでもなく、もしかしたら無知蒙昧なファンだったのかもしれません。