1年前の7月28日。プエルトリコのホープ、クリストファー・ディアスを大番狂わせで下したフロリダ州キスミー、オセオラヘリテージパーク(当時シビックセンター)、その同じ会場で伊藤雅雪がWBOジュニアライト級王座を失いました。

歓喜の戴冠からわずか10ヶ月、負けてはいけない相手に負けてしまいました。

世界最大のスポーツメディアESPNが、完全マイナースポーツのボクシングをトップページで報じることは稀です。

イラク戦争に2度も従軍した国家の英雄、ジャメル・ヘリングが戦火と長女の死を乗り越えてリングに上がるのです。しかも明白なアンダードッグとして…米国人が泣いて応援するストーリーが出来上がっていました。

チケットはソールドアウト、2912人の観衆が英雄の番狂わせを見ようと会場に詰めかけました。

生中継するESPNには「ボクシングの試合としては記憶にない」という数の応援メッセージがヘリングに寄せられたといいます。

だからこそ、伊藤は絶対に負けちゃいけなかった…。

伊藤を共同プロモートするトップランクは〝ヘリングの物語〟にカネの匂いを嗅ぎつけ、仇敵アル・ヘイモンから海兵隊ボクサーを引き抜きました。

ジャパンマネーを引っ張り込む可能性が大きいハンサムで好戦的な伊藤、米国人が大好きな物語を背負った海兵隊員…ボブ・アラムの狡猾な常套手段「どっちが勝っても得するのはワシ」です。

「村田諒太とボブ・ブラント」にも似た構図ですね。

“When we signed Jamel, a lot of people had their doubts, but he showed the heart of a world champion,” said Top Rank chairman Bob Arum. “He’s a true Marine and an American hero. We are so proud of what this young man has accomplished.”

私がジャメルと契約したとき首を傾げる人も多かったが、彼は世界王者の心意気を見せてくれた。彼こそが海兵隊だ。アメリカンヒーローだ。この若者がやってのけたことは米国の誇りだ。 =ボブ・アラム=
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試合前の控室。「ジャメルは必ず勝つ。だってアメリカ中が応援してるんだから」(クロフォード)。会場内に整然と起立していた海兵隊員たちに、鳴り止まぬUSAコール…「伊藤へのブーイングは少ないのに最悪のアウェー」そんな異様な状況で伊藤は自分のボクシングが出来ないまま試合終了のゴングを聞いてしまいます。
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判定は0−3、118−110×2/116−112。何の文句もありません。

最初の1秒から最後の1秒まで、伊藤はやりにくそうに戦っていました。

「初めてスパーしたときと今では全く別のボクサー」とクロフォードもヘリングの進化を評価していましたが、そんなに強いボクサーには見えませんでした…まぁ、負け惜しみです。
Final Punch Stats
FIGHTERTOTALJABSPOWER
Ito99 of 498 (20%)8 of 146 (6%)91 of 352 (26%)
Herring146 of 528 (28%)52 of 248 (21%)94 of 280 (34%)
-- Courtesy of CompuBox
今回のスタッツは試合内容を見事に反映しています。「決定力がないのに手数も少ない」はずのサウスポーのマリーンは右ジャブで28歳の日本人のリズムを狂わせ、そこを起点に強打も放ってきました。

ジャブの数字には頭を抱えるしかありません。 

12ラウンド36分間で伊藤が放ったのは146発、そのうちなんと8発、6%しかヒットさせることができませんでした。

一方のヘリングは100発以上多い248発を繰り出し、52発、21%も王者に突き刺し続けました。 

正直、そんな上質なジャブには見えませんでしたが…。 

伊藤の再起がどういう方向になるのかわかりませんが、 トップランク主導ならライト級進出もありえますね。

厳しいマッチメイクを突きつけられるかもしれませんが、それはチャンスです。

と強がってみても、やっぱり痛い1敗です。

再起に期待です。