一昨日、またまた来日したフロイド・メイウェザーの悪行三昧を書こうと思い立ちましたが、よーく考えるとあんな複雑怪奇な異常性格者のキャラクターを正確に伝える方法などありません。


それでも、あの社会不適合者の断片を拾い上げて、その実像に迫ってみたいと思います。




===【メイのトリセツ】===


・彼ほど人を食った人間はいません。

・約束は守りません。

・何事にも計画性がありません。


・醜いほどカネに執着します。

・決められたリング入場の時間まで無視します。




・ときどき、そんなことは滅多にありませんが、義理堅く涙もろい一面があるときも、極めてまれですが、あるかもしれません。


・しかし、そんな一面は本当に滅多にありませんから、それをもって「いいヤツかもしんない」なんて勘違いしてファンになってはいけません。


・そんな思い違いは、速攻で必ず裏切られます。


・だから、この話を読んで「義理堅いヤツだ」なんて勘違いは、何があっても絶対禁物です。


・あいつはとにかく必ず人を裏切るのです。



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王様気取りでマイペースにも程がある〝カネの亡者〟が、1本のメールを受け取るや、着の身着のままで自宅を飛び出したことがあります。

2017年11月の最初の日曜日。穏やかな昼下がりに、代理人のレオナルド・エルベから本当に短いメールが届きました。

「じいさんが白血病と診断された。余命6か月」。

駆けつけたフロイドに〝じいさん〟は「引退したお前に用はない。引退したお前も私に用などないはずだ」と愛想なく吐き捨てますが、長年連れ添ったボクサーを部屋に招き入れました。

ラファエル・ガルシア。

近代ボクシング130年の歴史で最高のハンドラッパー、バンデージ巻きの職人です。

好んで使われる英語表現、あのまどろっこしい〝One of the best=最高の1人〟ではありません。

彼こそは The best 、最高なのです。
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88歳になるガルシアは70年以上もの間、ボクシング界に携わってきたリングサイドの伝説です。

トレーナーとして類い稀な才能を発揮して来たラファエル・ガルシアの名前を聞いて、最初に目に浮かぶのはピンバッジに埋め尽くされた帽子、そしてハンドラッパー(バンデージ巻き)としての名声でしょう。

ロベルト・デュラン、アレクシス・アルゲリョ、ウィルフレド・ゴメス・・・・・偉大な伝説たちに「ガルシアは特別」と言わしめたバンデージ巻きの技術は、若いトレーナーたちがビデオを何度も見返して、何度真似してみても、けしてその領域には至らない、これぞ至高の職人芸でした。

「バンデージが巻かれていることを忘れてしまうほど自然なのに、ナックルはしっかり保護されている感覚かある」(デュラン)・・・石の拳は何を訳の分からないことを口走っているのでしょうか?

「バンデージを巻かれていることを忘れるほど自然」と「ナックルはしっかり保護されている感覚」、その二つは本来なら全く正反対の感覚であるはずです。

この二つが両立することなんて、ありえないはずなのに…。


デュランにアルゲリョ、ゴメス。〝ラファエルのバンデージ〟に惚れ込んだのは強打のレジェンドだけではありません。

キャリア前半こそ究極的に鋭利なパンチで数々の強敵を斬り落としましたが、強打のイメージは薄いフロイド・メイウェザーこそが、ガルシアの神がかりなバンデージ巻きの恩恵を最も受けたボクサーです。



もし、ガルシアがいなければ、慢性的な拳の痛みに苦しみ続けていたメイウェザーは生涯10億ドル以上を稼ぎ出す〝マネー〟に孵化することなく、不本意な〝プリティボーイ〟の殻を破れないままキャリアを終えていたことは100%間違いありません。




この史上最高のハンドラッパーの晩年に付き添っていたのは、ジェシー・バルガス です。

ガルシアを名付け親(ゴッドファーザー)に持ち、アマチュア時代から面倒を見てもらったバルガスは、その薫陶を受けジュニアウェルターとウェルターの二階級制覇に成功しました。

※バルガスは、今月26日にシーサケット・ソールンビサイvsファン・フランシスコ・エストラーダの前座でウンベルト・ソトと対戦します(もしかしたら実質メイン?)。

ガルシアから「病気のことは誰にも言うな」と強く口止めされていたバルガスでしたが、最期にメイウェザーにだけは会いたいと思ってるはずだと、エルベに連絡を取ったのです。

しかし、エルベには「ガルシアはフロイドの連絡先を絶対に知っている。私からは教えることは出来ない」と断られてしまいます。

「ガルシアが教えてくれるわけがないんだ。『誰にも言うな、誰にも会わない』と閉じ込もってるんだから。でもメイウェザーには会いたいはずだ。メイウェザーも会いたいはずだ。あんたならわかるだろう?」。

それでもエルベは「フロイドにメールは送るが、それを見るかどうかはわからないし、見てもお見舞いに行くかはわからない。そもそもフロイドがどこにいるかなんて、誰も知らないんだから」とつれないまま。

しかし、バルガスが電話を切ったわずか数時間後には、メイウェザーがガルシアの家のドアベルを鳴らしていたのです。

2人はリビングに引きこもると、何時間も話し込みました。時折2人が大爆笑する声まで漏れて来ました。


バルガスは伝説の2人が何を話し込んでいるのか、ものすごく気になりましたが、自分の名付け親・ゴッドファーザーがあんなに楽しそうに笑うのを初めて聞いて、嬉し涙が止まりませんでした。

メイウェザーは去り際にバルガスを呼ぶと肩を叩くと「知らせてくれてありがとう。お前はもっともっと強くなるんだぞ」と、一年前にマニー・パッキャオとのメガファイトに敗れてからリングを離れているバルガスを励ましました。




史上最高のハンドラッパーは、メイウェザーと会ったその二日後、火曜日の朝にその偉大な生涯を静かに閉じるのです。


まるで、メイウェザーが訪ねて来るのを待っていたかのように。