ボクシング。

この過酷で消耗の激しいスポーツで、40歳を超えてなお第一線で戦い続けるのは至難の技です。

Post-40(40歳以降)に偉業を成し遂げた全てのボクサーが、Pre-39(39歳まで)でも大きな実績を築き上げてきたグレートに限定されることは、当然のことでしょう。

そして、この類まれな偉業を達成したTIME BANDIT(時間泥棒)たちの歴史が語られるとき、ESPNでもリング誌でも1位アーチー・ムーア、2位ジョージ・フォアマンがデフォルトです。

このブログでムーアを3位、フォアマンを2位にしたのは、単純にムーアは、私がリアルタイムで知らないために、その実像や衝撃を理解できなかったからです。

しかし、だとしても1位はバーナード・ホプキンスで譲れません。

「ムーアはボクシング黄金時代、ホプキンスはボクシングが凋落した時代。比較にならない」「そもそもホプキンスなんて一般のスポーツファンでも認知すらされてない」…。

何を言われようが、ホプキンスがたゆまぬ節制と不断の努力で、49歳11ヶ月までIBFとWBAのライトヘビー級タイトルを保持し、51歳になっても世界戦のリングに立ったという事実は変わりません。

「Post-40 careers」という尺度で考えたとき、最も遠い場所までたどり着いたのはホプキンスで間違いはないのです。


 
⌛️TIME BANDIT(時間泥棒)No.①:バーナード・ホプキンス⌛️
★Post–40 careers=18戦10勝0KO6敗1分1無効試合(世界戦勝敗)/通算成績=55勝32KO8敗2分★ 

ホプキンスもまた、Pre-39で偉大な業績を残したグレートでした。

ミドル級を4団体統一、連続防衛記録となる20をマーク。

この世界ミドル級防衛の20勝にはジョン・デビッド・ジャクソン、グレン・ジョンソン、サイモン・ブラウン 、ウィリアム・ジョッピーらの元世界王者が含まれ、さらにはフェリックス・トリニダードとオスカー・デラホーヤとのメガファイトにも圧勝する星が輝いています。

20連続防衛は、今年ゲンナディ・ゴロフキンが19までに迫りましたが、対戦相手の質を考えると、数字は1しか違わないものの、内容でゴロフキンは大きく劣ります。
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ホプキンスはサービス精神旺盛なファイターでした。リング誌の特集で取材を受けた際には、自らがタイメックスの掛け時計を買って来て、かじり付くパフォーマンスを見せました(左)。引退宣言のあとにはリング誌はダブルカバーでその引退を惜しみました(右側)。

ボクシング史上に残るミドル級時代の防衛記録は2005年、ジャーメイン・テイラーにスプリットデジションで敗れてストップします。

このとき、すでに40歳。

ダイレクトリマッチも僅差で落とし「さすがのホプキンスも終わった」とメディアもファンも考えました。
 
グレン・ジョンソンとロイ・ジョーンズJr.に連勝中のアントニオ・ターバーが持つリング誌ライトヘビー級王座に挑戦するときも「老勇の最後の悪あがき」と見られていましたが三者ともに118−109の完勝劇を演出します。

しかし、2008年にはジョー・カルザゲに惜敗、テイラーを粉砕して当時無敗のホワイトホープ、17歳も若いケリー・パブリックとのビッグファイトに挑んだときは「KO負け必至」 と圧倒的不利を予想されました。

結果は、ここでも3−0の完勝。 

既成概念にしがみついた専門家とファンの予想、オッズを見事に〝ちゃぶ台返し〟してみせました。

デビュー戦で負けているホプキンスにとって、実質的な黒星はロイ・ジョーンズJr. につけられた1敗だけでしたが、この借りも返します。

一躍、世界のメディアとボクシングファンから「時間と戦うボクサー」と崇められる時の人となります。

2010年からはジャン・パスカル、トラビス・クラウド、ベルブト・シュメノフを老獪な技術で翻弄してライトヘビー級のタイトルをコレクション、2014年に階級最強王者セルゲイ・コバレフとの大一番に挑みますが、1ポイントも奪えず完敗。

このとき、ホプキンスは49歳11ヶ月。

2016年、51歳になったホプキンスは、24歳も年下のジョー・スミスJr.のWBCインターナショナルのベルトに挑みますが、リング外に叩き出される痛烈なKO負け。

1988年から戦い続けた28年にも及ぶキャリアを終えました。

Start to finish, win or lose, right or wrong, that's how Bernard Hopkins did things. That, more than his ring records and championship belts, is the true legacy of Bernard Hopkins.

ボクシング人生を通して、勝利も敗北も、正しいことも、間違うこともあった。でもそれらの全ては、バーナード・ホプキンスが全身全霊をかけて取り組んだ結果だ。輝かしい数字が並ぶ記録も、豪奢な世界王者ベルトよりも、このホプキンスのボクシングへの取り組み姿勢こそが、彼が残した最大の偉業なのだ。〜リング誌2017年3月号 バーナード・ホプキンス特集