WBC世界ヘビー級タイトルマッチ:12月2日(日本時間)ロスアンゼルス ステイプルズセンター

王者デオンティ・ワイルダーvs挑戦者タイソン・ヒューリー 

ワイルダーが40戦全勝39KO、ヒューリーが27戦全勝19KO、無敗対決です。

しかも、ワイルダーがWBC王者、ヒューリーがリネラル王者と「無敗の王者同士の決戦」という側面もあるメガファイトです。

この「王者に勝ったものだけが王者を名乗れる」というリネラル王者は、王座が乱立する現代では時代遅れな考え方です。

ヘビー級の正当な(リネラル)王者はウラジミル・クリチコで、そのクリチコに勝ったヒューリーが王位を継承した、ということです。

ヒューリーが精神疾患から酒とドラッグに溺れて、三年近いブランクを作った間に散逸したアルファベットタイトルを、アンソニー・ジョシュアとワイルダーが拾い集めましたが、ヒューリーが正当な王者であることは変わりません。

「ヒューリーの個人的な事情でブランクを作ったのだから、アルファベットと同様にリネラル王座も仕切り直しにすべき」というのが正論だと思いますが「王者に勝ったものだけが王者」という考えへのこだわりは、米英で特に根深い信仰です。

最近ではミドル級でも、セルヒオ・マルチネスからミゲール・コット、そしてコットからカネロ・アルバレスとリネラル王者がリングの上で継承されましたが、いずれもキャッチウェイトで、なおかつ階級最強と目されていたゲンナディ・ゴロフキンとの対戦を回避する形でした。

それでも、リネラル王者とリング誌王者はコットであり、カネロであり続けたのです。

ヘビー級でも三団体統一にもかかわらず、ジョシュアはリネラル王者はもちろん、リング誌王者にも認定されていません。

一方で、 WBSSバンタム級トーナメントで井上尚弥が優勝すると間違いなくリング誌王者にも認定されます。

これは、現時点でリネラル王座が空位だからです。

「リネラル王者」は、スター選手がわがままを通す人気階級では形骸化しやすいのは明らかで、時代にそぐわない考え方です。

これもボクシング界の抱えるジレンマですね。誰もが納得するタイトルマッチを組むのが非常に難しいスポーツに成り下がってしまっているのですから。

今日の計量ではワイルダーが212.5ポンド(96.3kg)と、デビュー戦(207ポンド1/4)以来の軽さで秤に乗りました。

前回のルイス・オルティス戦も214ポンド3/4と軽く仕上げましたが、今回はさらに絞ってきました。

一方のヒューリーは256.5ポンド(116.3kg)、WBC王者よりも44ポンド(20kg)も重たい体を作ってきました。もちろん、リングを離れていた約3年の間には400ポンドまで膨張していたことを考えると、150ポンドも減量したことになります。
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ワイルダーは映画「バットマン」に登場する悪役ベインの出で立ちで計量会場に姿を見せました。
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ESPNのファン投票では、一番人気がワイルダーのKO勝ち60%、続いてヒューリーの判定勝ち24%。

さて、何はともあれ、明日に迫ったメガファイトです。

オッズ(ウィリアムヒル)は現段階で、ワイルダー勝利が1.73倍、ヒューリー2.2倍で、米国の〝最後の砦〟が、僅差で有利と出ています。

さすが人気カードだけあって、オッズは細かく変動しているものの、アバウト5−4とほぼ互角の数字で推移しています。

細かいオッズでは「KO決着」は1.67倍。

両者の戦績を合計すると67戦全勝58KO、やはりKOで試合が終わる可能性が高いと見られています。

KO決着で勝つのは、ワイルダーにオッズが立たない状況!で、ヒューリーが5.5倍。

最もオッズが低いのはワイルダーの4−6ラウンドと7−9ラウンドのKOで5倍。

逆に大穴はヒューリーの1ラウンドと2ラウンドのKO勝利でそれぞれ100倍が付いていますが、これもありえますよね、ワイルダーのグラスジョーを考えたら。

「判定決着」は2.5倍で、このケースだとヒューリー勝利3.25倍で、ワイルダーの7.5倍を大きく引き離しています。

ブックメーカーの見方は「KOならワイルダー、判定ならヒューリー」。

さて、次は専門家の予想です。注目の一戦だけに、こちらも多士済々のライター、歴史家、評論家に現役ボクサーも展望を語っています。


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【ワイルダーのKO勝利】ダン・ラファエル(ESPNの看板記者)

ヒューリーはより大きく、手も脚もより速い。そして、そのスタイルはつかみどころがなく、誰にとってもやりにくい。

しかし、ワイルダーにはいつでも試合を終わらせることが出来る一発がある。ポイントでリードされる展開もありうるが、後半にワイルダーがビッグパンチを炸裂させる。


【ヒューリーの判定勝ち】アンソン・ウェインライト(リング誌記者)

パワー対テクニックの決戦。

敵地ドイツで、あのウラジミル・クリチコの絶対王政を終わらせたヒューリーは侮れない。「デュッセルドルフ」の再現になると予想する。

体格とスピードで優位に立つヒューリーが、ゆったりとしたペースでゲームをコントロールする。ワイルダーには主導権を奪い返すだけの技術はない。


【ワイルダーの判定勝ち】ファン・マヌエル・マルケス(ESPN解説者、パッキャオキラー)

ワイルダーはパワーとコンビネーションの多彩さでヒューリーを上回る。

それ以上に大きな試合で勝敗を分けるのは、コンディショニング。私生活が自堕落なヒューリーは、そのツケをリングの上で払うことになるだろう。


【ワイルダーのKO勝ち】テディ・アトラス(ESPN解説者、トレーナー)

ヒューリーは速い脚と手で、ワイルダーをコントロールできるだろう。

しかし、それはせいぜい前半まで。後半にはブランクの影響で動きが鈍くなるはずだ。

ワイルダーがやることは、ただ一つ。鈍重になった英国人に右のビッグパンチを叩き込むだけだ。


【ワイルダーの判定勝ち】ナイジェル・コリンズ(ESPN解説者、元リング誌編集長)

ヒューリーは、ワイルダーをアウトボックス出来るだろう。

しかし、それは12ラウンド36分間は持たなない。終盤にはワイルダーの一撃を被弾してしまうだろう。そこでジ・エンドだ。


【ワイルダーのKO勝ち】ジョー・コルテス(ESPN解説者、元レフェリー)

ヒューリーは、長いブランクが命取りになる。

3年もリングから離れて、ワイルダーの容赦ない攻撃を12ラウンドさばききれるとは思えない。疲れの見えた8ラウンドあたりで、大きな爆撃を受けてしまうだろう。


【チャンスはヒューリーにある】マイク・タイソン(元完全統一ヘビー級チャンピオン)

ワイルダーのパワーは確かに脅威だ。

しかし、ヒューリーがリング内外で見せた精神的な成長も侮れない。僅差の勝負になるだろうが、ヒューリーがわずかながら有利と見る。


【ヒューリーの判定勝ち】イベンダー・ホリフィールド(元完全統一ヘビー級チャンピオン)

すごい試合になる。ヒューリーには技術が、ワイルダーにはパワーがある。

ワイルダーは見てはいけない、先に手を出して主導権を奪わなければならない。ヒューリーのペースに巻き込まれて、イライラしてしまうとラウンドを浪費してしまうと、タイムアウトになる可能性もある。


【ドロー】ジョリーン・ミゾーネ(メインイベンツ社、マッチメイカー)

二人とも顎に自信がない。お互い警戒し合いながら、山のないラウンドを数えることになるだろう。

ジャッジの採点でどちらかに勝利が転がるかもしれないが、勝敗のわからない凡庸な試合に終わる可能性が高いと見る。


【ヒューリーのTKO勝ち】キャシー・ドュバ(メインイベンツ社、プロモーター)

ワイルダーにはホームタウンの利がある。

ただ、この米国人は自分よりも大きく強い相手とは戦ったことがない。

そして、ワイルダーはより打たれ弱い。

ヒューリーの体格と技術、経験がワイルダーを空転させて、後半にはストップするだろう。


【ヒューリーの判定勝ち】トム・ラフラー(360プロモーションズ、GGGらのプロモーター)

予想の難しい試合だ。

拮抗した内容になるだろうが、ヒューリーのスタイルがワイルダーを封じ込める可能性が高い。ウラジミル戦がそうだったように。

もちろん、ワイルダーがKO勝利を収めても驚かない。それも十分に起こりうる結末だ。

とにかくどんな結果も起こりうる試合だ。


【ワイルダーの8ラウンドKO勝利】ブラッド・グッドマン(トップランク社、マッチメイカー)

ワイルダーにとって、非常に難しい試合になるのは間違いない。

もしヒューリーが大きなダメージを負うことなく、前半戦を凌げば、ワイルダーにとっては厳しい展開にしかならないだろう。

それでも、ワイルダーの右はゲームの流れを一発でひっくり返すことが出来る。どこかでその一撃が火を噴くだろう。そのどこかは、8ラウンドと見る。


【ワイルダー勝利】ポール・マリナッジ(元二階級制覇王者、ショウタイムの解説者・アナリスト)

ワイルダー勝利というのが大方の見方だろう。

しかし、予想は難しい。ウラジミル戦を思い出せば、ワイルダーには非常に厳しい予想しか立たないが、ヒューリーのブランクはマイナス材料だ。

ワイルダーが勝つと予想するが、逆の目が出ても驚くには値しない。


【ワイルダーの判定勝ち】ジョージ・フォアマン(元世界ヘビー級チャンピオン)

ワイルダーは大好きなファイターだし、ヒューリーのウラジミル戦はお見事だった。

他の専門家が語り尽くしているように、この試合の行方を占うのは非常に難しい。

個人的には微妙な判定をワイルダーがものにすると予想する。


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多くの識者が予想する中で、そのほんの一部を紹介しました。

オッズ同様に割れてますね。

面白い試合のなる期待が膨らむ一方で、塩分過多の展開になりそうな匂いもプンプンします。

「ワイルダーが豪快に勝って、ジョシュアとの最終決戦を見たい」というのが日本のファンの思いでしょうが、英国では「ヒューリーが勝ってジョシュアとの英国対決になった方が興行的には大きくなる」とも見られています。

米国のヘビー級王者も軽く見られたものですが、時代ですね。

パックメイが最前線から退場した今、世界で最もカネとヒトを集めることができるのは米国ではなく英国であり、カネロ・アルバレスではなく、アンソニー・ジョシュアなのです。 

ワイルダーに米国の意地を見せて欲しい気もしますが、戦前のトラッシュトークをそのままリングに持ち込んだ、とにかく面白い試合を見せて欲しいですね。