村田諒太やカネロ・アルバレスのような、温室で守られた線路を、定められた高貴な終着駅を目指して走るエリートは、滅多にいませんが、まれに存在します。

生まれた国が日本かメキシコなら、村田やカネロ以上に快調に温室路線を突っ走り、ゴールテープを切るボクサーもいたでしょう。もし、ゲンナディ・ゴロフキンがメキシコ人なら、カネロは存在しなかったかもしれません。

しかし、多くのボクサーは、日本やメキシコで生を受けることが出来ません。

それでも「彼ら」は戦い続けます。
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2011年3月11日ESPN電子版より〜「ガンボアvsファンマは〝パックメイ〟を除いて、全階級通じて最も実現が待たれるカードだ」

ユリオルキス・ガンボアは、超がいくつもつくエリートアマでした。しかし、米国との関係に軋轢が強かった時代のキューバ人は不遇を強いられます。

それでも、まだガンボアは戦い続けています。かつて娘の誕生日のお祝いを買うお金がなくて、金メダルを売ったガンボアは、まだ戦い続けているのです。

「(思いがけない誕生日プレゼントに驚いて『お父さん、金メダルを売ってしまったの?』と泣く娘に)そんなわけないじゃないか。売ってないよ。売るわけがないじゃないか。金メダルはいつだってお父さんの胸の中にあるんだから」。

そのガンボアとの〝決勝〟を見越したボブ・アラムが夢想した「フェザー級ウォーズ」の、もう一人のスターがファン・マヌエル・ロペスです。

ガンボアと違い、ボクシング大国プエルトリコの人気者ファンマでしたが、ガンボアとの〝決勝対決〟を前に挫折を重ねてしまいます。

途轍もない強打とオブラートのように脆弱なアゴ、この二つを併せ持つボクサーは、残酷なボクシングファンの大好物です。ファンマはその典型でした。

そんな二人が11月10日、フロリダで行われるイベントに揃い踏み。勝てば来年にも〝熟成しすぎた決勝〟が行われることになります。

もし実現したら「待望のフェザー級決戦」から10年。

「誰も関心のないノンタイトルライト級10階戦」に成り果てましたが、兎にも角にも二人は拳を交えるのです。

「なにを今更?」

多くのボクシングファンは、そう思うに違いありません。

しかし、待ってください。ちょっと考えてみてください。

同じ〝熟成しすぎて腐った〟マッチメイクでも、メイウェザーvsパッキャオ初戦よりも、ずっとワクワクしませんか?

「メイパックは結果を知ってるから、そう言うだけだろう」とおっしゃるかもしれませんが、では、来年にも実現とみられている「メイパック2」と比べたらどうでしょうか?

私には、99%(100%?)ビジネスマンとなったメイパックの試合は「スポーツ史に残る金銭的な成功者による再戦」とういう点においては関心がありますが、それ以上に興味をそそられることはありません。

彼らの試合は戦いではなく、商談です。そんな醜いものは、多くの人にみせるものじゃありません。

しかし、ガンボアvsファンマは、どう考えても商談ではありません。

きっと、戦争になるはずです。

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そして、話はWBSSバンタム級トーナメントに飛びます。

井上尚弥とエマニュエル・ロドリゲスが決勝進出を争う〝A〟ブロックの向こう側、〝B〟ブロックはゾラニ・テテが準決勝進出、その対戦相手を決める試合が11月4日グラスゴーで火蓋を切ります。

WBAスーパー王者ライアン・バーネットvsノニト・ドネア。

地味なWBSSでもさらに地味なバンタム級でも、主催者が優勝してほしい筆頭のバーネットと、出場者中では図抜けたビッグネームのドネアの激突です。

そして、この試合のリザーブ選手として控えているのがポール・バトラー。バーネットとドネア、どちらかに大きな故障や体重超過などが起きてしまった場合のピンチヒッターです。

ピンチヒッターといっても、二人のアクシデントを、ただ手ぶらで待ってるわけではありません。

バーネットとドネアが予定通りに対決となれば、別の試合をするわけです。先月の岡田博喜のケースと同じですね。

このバトラーの相手が、ヨワン・ボワイヨです。昨年12月に井上尚弥のWBOジュニアバンタム級王座に挑んで惨敗、それ以来の試合となります。

ジュニアバンタムでもその実力が極めて怪しかったボワイヨが、1年のブランクを経て一階級上げて来るのです。叩きのオッズは20−1です。咬ませ犬を通り越してエキビジョンのレベルです。

バトラーも直近の試合でエマニュエル・ロドリゲスに完敗。ボワイヨはもちろん、バトラーにも最強トーナメントに参加する資格があるとは思えません。

仕方がありません。WBCがメキシコや日本のスター選手を厚遇するように、WBSSは英国を不当に優遇するのです。目くそ鼻くそです。

…今夜はそういう話ではなくて、ボワイヨです。

井上戦でも「陣営が直前でないと到着しない」「日本側からあっさり負けたら報酬減額の厳しい要請があった」など、あからさまな咬ませ犬情報が飛び交っていましたが、それでもまだ、フランスの優男はリングに上がるのです。

ボワイヨもまた、もう一人の〝ロブ・ブラント〟に化けるかもしれません。



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ガンボアもファンマも、彼ら自身はこれっぽっちも、終わっただなんて思っていません。

ボワイヨだって、予定どおりに狩られるためにリングに上がるわけではありません。

そんな、温室で咲いた大輪、カネロや村田諒太とは真逆の、薄汚い雑草ボクサーを追いかけてゆきます。

とりあえずは、ガンボアとファンマ、ボワイヨです(えらいレベル差の激しい名前の並びですが…)。