SUPER FLYでシーサケット・ソールンビサイがリング誌認定王者に就き、WBCタイトルも防衛。
東京マラソンでは設楽悠太が日本記録を更新、16年もの間、誰もが壊れたと諦めていた時計を動かしました。
そんな日曜日にお仕事でした…。シーサケットも設楽もリアルタイムで見ることができず、仕事中にネットでチラチラ追いかけるしかない、悲しく慌ただしい1日でした。
シーサケット勝利!1人のジャッジがドローと採点する2ー0のマジョリティデジション。 メキシコボクシングの聖地、ザ・フォーラムで、100%アウエーを跳ね返したタイ人が、また一歩階段を登りました。
ローマン〝チョコラティト〟ゴンザレスを主役に据えて、宿敵ファン・フランシスコ・エストラーダとの「決勝戦」を予定していたはずのSUPER FLY興行は思わぬ結末に着地しました。
リング誌認定ジュニアバンタム級王者決定戦/WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ
シーサケット・ソールンビサイvsファン・フランシスコ・エストラーダ
最後に立っていたのは、シーサケット・ソールンビサイでした。
オフィシャルは117−111、114−114、115−113と割れました。
判定が発表されると、ザ・フォーラムを埋めた7827人の大観衆は不満の怒号をあげましたが、どう見てもソールンビサイの勝ちは明白でした。
エストラーダを後押しした大声援にジャッジが惑わされることがなかったのは幸いでした。
しかし、ロマゴンに連勝、エストラーダの挑戦も跳ね返したシーサケットを見て「すごいボクサーを発見した」と喜ぶ米国マニアを、「そんなのずっと前から知ってたわ!」と見下せるのはちょっとした快感です。
💲今回の報酬💲
シーサケットのファイトマネーは25万ドル、エストラーダは10万ドル。安い、安いです。
「SUPER FLY1」のローマン・ゴンザレスは60万ドルでしたから、相当なコストカットが出来ましたね。
HBOは、軽量級にスポットライトを当てる素晴らしいイベントを企画してくれましたが、動機が不純ですね、それでも米国でほとんど無視されている軽量級の面白さを伝えてくれるのですから、全くもって悪いことじゃありません。
ちなみにカルロス・クアドラスとマクウィリアムス・アローヨは仲良く2万5000ドルずつ。アローヨが予想以上にキレていましたが、クアドラスにとってこの敗北は痛い、痛すぎます。
ちなみに IBFフライ級タイトルマッチ(王者ドニー・ニエテス:4万ドル、挑戦者ファン・カルロス・レベコ:3万ドル)とWBA世界王者決定戦(ブライアン・ビロリア:5万ドル、アルテム・ダラキアン:2万5000ドル)も、相当に格安です。
先日のウェルター級ノンタイトルマッチ、ダニー・ガルシアvsブランドン・リオスがそれぞれ120万ドル、50万ドルを得たことを考えると、バーゲンセールです。
SUPER FLY興行は、選手報酬の上限が120万ドルと言われてましたが、今回はさらに叩きましたね。
けして良い傾向ではありませんが、軽量級の人気に火がついて、100万ドルファイターが何人も誕生することを願ってやみません。
ニエテスも115ポンドへの参戦を表明するなど、この階級は創設38年、間違いなく今が最もヒートアップしています。
そして、今夜は軽量級の主役の座を掴んだシーサケット・ソールンビサイの物語です。
In many ways his rise from abject poverty to win a world title in one of boxing's smallest weight classes and then to come to the United States and hit it big is reminiscent of the incredible rise of Manny Pacquiao.(ESPN)
極貧のどん底から軽量級の世界王者に成り上って、米国へ進出、大きな成功を収めた−シーサケット。その歩みは、マニー・パッキャオの偉大な足跡といくつもの共通点が認められる。
シーサケットは、バンコク郊外の貧しい農村で生まれました。
13歳で父親にならってムエタイのプロの道に進み、10代で婚約者となった女性とともに夢を描いてバンコクへ向かいます。
しかし、ムエタイの試合は組んでもらえず、警備員の職にやっとありつけたものの給料は劣悪で、ゴミ収集を生業とするようになりました。
「とにかく貧乏でお金がなかったから、生ゴミを漁ってそれを食べる日もあった。それしか僕と彼女が生きて行く手段がなかったんだ」。シーサケットは苦難の日々を振り返ります。
そんなある日、知人の男が「金が欲しいなら日本に行かないか」と声をかけてきました。
男はボクシングのブローカーでした。日本のエリートボクサーが咬ませ犬を探していたのです。
ボクシング経験はなかったシーサケットですが「ムエタイと似ているし、そんな大金が手に出来るなら」と二つ返事で引き受けます。
わずかプロ7戦目で世界タイトルに挑戦した八重樫東がその相手だと知ったのは来日してからでしたが、そもそもボクシング経験のないタイ人は八重樫東すら知りませんでした。
2009年、彼は日本のリングに上がります。そして、3ラウンドKO負け。咬ませ犬の仕事を全うしました。
こっぴどく痛めつけられたタイの若者は、ブローカーの手数料などを引かれても10万円近くの大金を手にして、ボクシングを続けることを決意します。
2戦目も、日本人相手の咬ませ犬、奇しくもデビュー戦と同じ3ラウンドKO負けを喫して2連敗。婚約者と「私たちに未来はあるのか」と涙にくれました。傍目にも、彼らに明るい未来などないとしか思えませんでした。
選ぶ道は二つ。このままボクシングを続けるか。それともゴミ漁りに戻るか。
ほんのかすかな光でも、ささやかな希望でも、それがありそうなのは、あるとしたら、ボクシングでした。
シーサケットは、二つの拳に未来を賭けました。
タイに戻ってのプロ3戦目。今度は咬ませ犬ではありません。相手はデビュー戦、しかし6ラウンド引き分けに終わります。
デビュー3戦でいまだ勝ち星なし。しかし、この試合が、未来のスターの分水嶺でした。
「もし、3試合して全敗ならボクシングを辞めよう」。そう決意して挑んだ試合で負けなかったのです。
婚約者も「あなたには素質がある。続けましょう」と励ましました。
それにしても、なんて能天気なカップルでしょうか。
ボクシングど素人でプロキャリアをスタート、3戦2敗1分の星勘定(勝ってないので星はありませんが)で「素質がある」って…。
何でもいいから、ローカルタイトルでもいいからチャンピオンになれたら…それが目標でした。
しかし、そんなささやかな夢すらも、3戦勝ち無しのシーサケット が手に出来る日が訪れるとは、彼とその婚約者以外は誰も信じていなかったでしょう。
もし、タイムマシンに乗って「8年後に現役のPFPキングを2度撃破して、米国メディアがマニー・パッキャオとあなたを比べている」なんて告げたら、底抜けに楽観的な2人でも「からかうのも大概にして下さい」と機嫌をそこねるかもしれません。
東京マラソンでは設楽悠太が日本記録を更新、16年もの間、誰もが壊れたと諦めていた時計を動かしました。
そんな日曜日にお仕事でした…。シーサケットも設楽もリアルタイムで見ることができず、仕事中にネットでチラチラ追いかけるしかない、悲しく慌ただしい1日でした。
シーサケット勝利!1人のジャッジがドローと採点する2ー0のマジョリティデジション。 メキシコボクシングの聖地、ザ・フォーラムで、100%アウエーを跳ね返したタイ人が、また一歩階段を登りました。
ローマン〝チョコラティト〟ゴンザレスを主役に据えて、宿敵ファン・フランシスコ・エストラーダとの「決勝戦」を予定していたはずのSUPER FLY興行は思わぬ結末に着地しました。
リング誌認定ジュニアバンタム級王者決定戦/WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ
シーサケット・ソールンビサイvsファン・フランシスコ・エストラーダ
最後に立っていたのは、シーサケット・ソールンビサイでした。
オフィシャルは117−111、114−114、115−113と割れました。
判定が発表されると、ザ・フォーラムを埋めた7827人の大観衆は不満の怒号をあげましたが、どう見てもソールンビサイの勝ちは明白でした。
エストラーダを後押しした大声援にジャッジが惑わされることがなかったのは幸いでした。
しかし、ロマゴンに連勝、エストラーダの挑戦も跳ね返したシーサケットを見て「すごいボクサーを発見した」と喜ぶ米国マニアを、「そんなのずっと前から知ってたわ!」と見下せるのはちょっとした快感です。
💲今回の報酬💲
シーサケットのファイトマネーは25万ドル、エストラーダは10万ドル。安い、安いです。
「SUPER FLY1」のローマン・ゴンザレスは60万ドルでしたから、相当なコストカットが出来ましたね。
HBOは、軽量級にスポットライトを当てる素晴らしいイベントを企画してくれましたが、動機が不純ですね、それでも米国でほとんど無視されている軽量級の面白さを伝えてくれるのですから、全くもって悪いことじゃありません。
ちなみにカルロス・クアドラスとマクウィリアムス・アローヨは仲良く2万5000ドルずつ。アローヨが予想以上にキレていましたが、クアドラスにとってこの敗北は痛い、痛すぎます。
ちなみに IBFフライ級タイトルマッチ(王者ドニー・ニエテス:4万ドル、挑戦者ファン・カルロス・レベコ:3万ドル)とWBA世界王者決定戦(ブライアン・ビロリア:5万ドル、アルテム・ダラキアン:2万5000ドル)も、相当に格安です。
先日のウェルター級ノンタイトルマッチ、ダニー・ガルシアvsブランドン・リオスがそれぞれ120万ドル、50万ドルを得たことを考えると、バーゲンセールです。
SUPER FLY興行は、選手報酬の上限が120万ドルと言われてましたが、今回はさらに叩きましたね。
けして良い傾向ではありませんが、軽量級の人気に火がついて、100万ドルファイターが何人も誕生することを願ってやみません。
ニエテスも115ポンドへの参戦を表明するなど、この階級は創設38年、間違いなく今が最もヒートアップしています。
そして、今夜は軽量級の主役の座を掴んだシーサケット・ソールンビサイの物語です。
In many ways his rise from abject poverty to win a world title in one of boxing's smallest weight classes and then to come to the United States and hit it big is reminiscent of the incredible rise of Manny Pacquiao.(ESPN)
極貧のどん底から軽量級の世界王者に成り上って、米国へ進出、大きな成功を収めた−シーサケット。その歩みは、マニー・パッキャオの偉大な足跡といくつもの共通点が認められる。
シーサケットは、バンコク郊外の貧しい農村で生まれました。
13歳で父親にならってムエタイのプロの道に進み、10代で婚約者となった女性とともに夢を描いてバンコクへ向かいます。
しかし、ムエタイの試合は組んでもらえず、警備員の職にやっとありつけたものの給料は劣悪で、ゴミ収集を生業とするようになりました。
「とにかく貧乏でお金がなかったから、生ゴミを漁ってそれを食べる日もあった。それしか僕と彼女が生きて行く手段がなかったんだ」。シーサケットは苦難の日々を振り返ります。
そんなある日、知人の男が「金が欲しいなら日本に行かないか」と声をかけてきました。
男はボクシングのブローカーでした。日本のエリートボクサーが咬ませ犬を探していたのです。
ボクシング経験はなかったシーサケットですが「ムエタイと似ているし、そんな大金が手に出来るなら」と二つ返事で引き受けます。
わずかプロ7戦目で世界タイトルに挑戦した八重樫東がその相手だと知ったのは来日してからでしたが、そもそもボクシング経験のないタイ人は八重樫東すら知りませんでした。
2009年、彼は日本のリングに上がります。そして、3ラウンドKO負け。咬ませ犬の仕事を全うしました。
こっぴどく痛めつけられたタイの若者は、ブローカーの手数料などを引かれても10万円近くの大金を手にして、ボクシングを続けることを決意します。
2戦目も、日本人相手の咬ませ犬、奇しくもデビュー戦と同じ3ラウンドKO負けを喫して2連敗。婚約者と「私たちに未来はあるのか」と涙にくれました。傍目にも、彼らに明るい未来などないとしか思えませんでした。
選ぶ道は二つ。このままボクシングを続けるか。それともゴミ漁りに戻るか。
ほんのかすかな光でも、ささやかな希望でも、それがありそうなのは、あるとしたら、ボクシングでした。
シーサケットは、二つの拳に未来を賭けました。
タイに戻ってのプロ3戦目。今度は咬ませ犬ではありません。相手はデビュー戦、しかし6ラウンド引き分けに終わります。
デビュー3戦でいまだ勝ち星なし。しかし、この試合が、未来のスターの分水嶺でした。
「もし、3試合して全敗ならボクシングを辞めよう」。そう決意して挑んだ試合で負けなかったのです。
婚約者も「あなたには素質がある。続けましょう」と励ましました。
それにしても、なんて能天気なカップルでしょうか。
ボクシングど素人でプロキャリアをスタート、3戦2敗1分の星勘定(勝ってないので星はありませんが)で「素質がある」って…。
何でもいいから、ローカルタイトルでもいいからチャンピオンになれたら…それが目標でした。
しかし、そんなささやかな夢すらも、3戦勝ち無しのシーサケット が手に出来る日が訪れるとは、彼とその婚約者以外は誰も信じていなかったでしょう。
もし、タイムマシンに乗って「8年後に現役のPFPキングを2度撃破して、米国メディアがマニー・パッキャオとあなたを比べている」なんて告げたら、底抜けに楽観的な2人でも「からかうのも大概にして下さい」と機嫌をそこねるかもしれません。


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