平昌オリンピックで日本選手団は、過去最多となる13個のメダルを獲得しました。

そのうち金メダルには、4個。小平奈緒、羽生結弦、女子チームパシュート(高木美帆・高木菜那・菊池彩花・佐藤綾乃)、高木菜那が見事輝きました。

金メダルは世界一、「世界チャンピオン」の称号です。

4年に一度の五輪で世界チャンピオンになることは、その意味も注目度も特別ですが、国際スケート連盟(ISU)は、世界中を転戦して毎年行われるワールドカップ、五輪開催年を除いて開催する世界距離別選手権でも世界チャンピオンを認定しています。

国際陸上競技連盟(IAAF)も同じようなスタイルで、世界をサーキットするダイヤモンドリーグ、五輪を挟む年に世界陸上を主催しています。

スケートや陸上競技の選手はICUやIAAFの大会に出場しないで世界チャンピオンになることは出来ません。五輪に出場することも不可能です。

サッカーFIFA、テニスITFも同様です。

ボクシングもアマチュアは国際ボクシング協会(AIBA)が唯一無二の国際統括機関です。今月上旬に幹部の反社会勢力とのつながりや、判定をめぐる買収疑惑などスキャンダルに揺れてはいますが、世界選手権や五輪で優勝したボクサーは世界チャンピオンと誰もが認めてくれます。

しかし、プロボクシングは違います。

あろうことか国際的な統括団体が存在せず、各国のコミッションが世界タイトルマッチを統括し、〝アルファベット団体〟と呼ばれる営利目的の承認団体が無数に跋扈している状況が半世紀以上も常態化しているのです。
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五輪の金メダルや、サッカーのワールドカップトロフィー(FIFAが保管する〝持ち回り〟で優勝国に贈られるのはレプリカ)を、小平奈緒やブラジルサッカー協会が自腹で買うようなことはありません。

しかし、プロボクシングの世界チャンピオンはすべからくベルトを承認団体から購入しなければなりません。

ベルトの値段(承認料)はファイトマネー(興行規模)に準じるといいますから、経済的に貧しい国で人気のない選手が試合を行った場合と、経済大国の人気者が戦ったイベントでは、全く同じベルトでも価格が違うのです。

ファイトマネーが2000万円を大きく超えた長谷川穂積や井上尚弥は大金を収めてくれますが、100万円レベルのジョセフ・アグベコやカルロス・クアドラスからの実入りは寂しいものです。

誰がどう考えても、どちらを優遇するかは火を見るよりも明らかです。腐敗しきった承認団体にとっては日本のボクサーはドル箱です。他の団体に引き抜かれないよう、つなぎとめておかねばなりませんし、何より負けてしまうと大変なことになります。

かつて、辰吉丈一郎は世界王者に返り咲いたリング上で「ホセ・スライマン(WBC)会長のおかげ。何度もチャンスをくれた」と涙ながらに感謝しました。

長谷川穂積を擁する山下会長はテレビカメラが回っている前で「WBCには恩義がある」と、いろいろ忖度してもらったことを伺わせました。

西岡利晃がその種の発言をしているのは知りませんが、彼こそ「100%スライマン会長のおかげ」です。

WBAのヒルベルト・メンドサJr.は、まだ試合前だというのに亀田親子にミニベルトを自ら贈呈したことまでありました。

そういった言動を公然としていることからも、彼らを含めて多くの人がプロボクシングの世界を異常だとは思っていないのかもしれません。

承認団体は反社会勢力ではありませんが、20世紀の時代にボクシングの興行に暴力団が関わるのは珍しいことではありませんでした。そのことを今、「あの時代は腐ってた」というのは的外れです。それは、ボクシングだけに限ったことではなく、他のスポーツ興行でも芸能の世界でも多かれ少なかれあったことですから。

さらに、五輪のように短期間で世界一を決定するには、12ラウンドに渡って互いに相手の急所を狙って拳を打ちつけ合うようなボクシングで予選から決勝まで何試合も行うのは現実的ではないという、プロボクシングの競技特性が抱える問題もあります。

これを解決しようとする試みが現在展開中のWBSSや、過去のワールド・ボクシング・クラシック、「バンタム4」で、先日のSUPER FLYも広義の意味で〝最強決定トーナメント〟と言えるかもしれません。

しかし、こうした試みも世界的な統括団体が存在しないために、強制力はなく、真の世界最強決定戦は実現できていません。

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人気のある選手にとって、承認団体はゴミクズみたいなものです。

かつてレノックス・ルイスとの試合を強要したWBCのベルトをリディック・ボウはゴミ箱に投げ捨て、昨年もゲンナディ・ゴロフキンとの対戦を迫るWBCにカネロ・アルバレスは「何様のつもりか?」と激怒しました。

WBCは、マニー・パッキャオvsミゲール・コット戦ではダイアモンドベルトを用意、5万ドルで売ろうとしますが、試合前からパッキャオが「要らない」とお断り。結局、無償で提供する羽目になりました。

フロイド・メイウェザーから「これからは全てのベルトに俺様の顔写真を入れろ」と言われて積極的に検討しているのもWBCです。「掲載料がもらえる」とワクワクしてるようですが…。

カネロに拒否されて陽の目を見ることなくお蔵入りしている「メキシコベルト」(vsチャベスJr.、vsゴロフキンで2本作成)よりはマシですが、日本人から巻き上げた承認料で勝手に高価なベルトを作るのはやめてもらいたいものです。

「緑のベルトが格好良い」と自分たちの言うことを黙って聞いてくれる日本人ボクサーとは違い、世界のトップ選手は甘くはありません。

卑屈にも「あなたこそメキシコの太陽だ。私たちが間違っていた」とすぐにカネロのご機嫌とりに回ったWBCはまだ許してもらえません。

こんな世界ですから承認団体同様、一部のトップ選手も営利優先で対戦相手を選んでいきます。

そこで起きるのが、ファンが熱望するマッチメイクが先延ばしされる、あるいはついに実現しないという、プロスポーツにあるまじき不条理です。

しかし、そこには「タイソンから逃げるな」「GGGと戦え」という短絡的な批判を超越した、ボクサーやその陣営のしたたかな算盤も弾かれているのです。