2021年1月、WBOジュニアフェザー級王者アンジェロ・レオは初防衛戦のリングに上がっていた。

多くの軽量級のボクサーと同じように、レオも過酷な減量に耐えてタイトルを勝ち獲ったが、初防衛戦では122ポンドの体重で前日計量をクリアするだけで精一杯、全てを使い果たしてしまっていた。

相手はスティーブン・フルトン。戦前から苦戦が予想された、パワーに欠け、これといった長所のないボクサーだったが、とにかくつかみどころのない黒人選手だった。

「あの試合を3-0で落としてしまったのは、122ポンドに見切りをつけるという意味では良かった。あの夜は相手が誰でも負けていた」。

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タイトルを失ったことで、彼の周囲もざわついた。

彼のそばから去る者もいたが、レオは「誰が本当の味方なのかがよくわかったという意味では良いことだった」。

2022年にはメイウェザープロモーションズとも袂を分つ。

「素晴らしいプロモーターだったが、私を高く評価してくれなかった」。

2023年、フルトンが東京で井上尚弥と戦っている試合を見てしまった。

軽量級なのに大会場をフルハウスにして、メインイベント。大観衆が沸き立っていた。それは、軽量級に興味を示さない米国リングでは絶対にあり得ない光景だった。

もし、フルトンに勝っていたら…俺が東京に呼ばれていたかもしれない。

レオは、その年の暮れにProBoxとTopRankとの新たな契約書にサインした。

フェザー級に上がったレオが再び王者になれると考える人は極めて少数派だった。

ProBoxとTopRankもそうは思っていなかったが、元王者の肩書はまだ使い物になると踏んでいた。

新興のProBoxと、落ち目の老舗TopRankは強力なプロモーターやサウジアラビアのようなパワーハウスが独占する人気階級のマーケットに食い込むことに苦戦していた。

しかし、どんなマーケットにもスキマはある。

そして、彼らもスキマを知っていた。

日本のスター選手に絡めれば「軽量級でも高く売れる」と。

もちろん、人気階級の利益とは一桁も二桁も下だったが、それでも米欧マーケットの常識では考えられない値が付いた。

レオに限らず、この世界ではボクサーは売り物だ。

しかし、レオはプロモーターにとって「人気者のチャンピオンに育てて一儲けしよう」という種類の売り物ではなかった。


わかりやすくいうと、未来の人気者のチャンピオンにあてがわれる餌だった。

誰も食指を伸ばさなくなるまで使い込まれた挙句、利用価値がなくなれば捨てられる、餌だった。