昨日、亀田和毅とレラト・ドラミニのフェザー級12回戦の中止、マッチルームと共同開催予定のミドル級トーナメント「プライズ・ファイター」の延期が発表されました。

ドラミニ戦が「1位(次期挑戦者)決定戦」になることは、IBFと間で「事実上の内諾」があったと興毅は会見で説明しました。

「事実上の内諾」の詳細については「代理人のやりとり。亀田興毅の力のなさ、最終的な脇の甘さが出た。これ以上言えることはない。団体(IBF)が決めたことがすべて」と、言葉を濁すだけ。

内諾が書類で交わされていたなら、それを見せるはずですが、おそらく内諾=口約束だったのでしょう。

アルファベット団体との口約束を信じて「事実上の内諾」と受け止める…ボクシングを少しでも知ってる人で、そんな馬鹿が世界中を探したって一人もいるわけありません…が!!!いました!


面白いにも程があります。


メインイベントの中止と、イベントに乗っかる形のミドル級トーナメントの延期。この二つは全く別物、つまり「和毅vsドラミニ」が中止になったため、「プライズ・ファイター」が延期になったわけではないでしょう。

和毅はドラミニの代替選手としてWBCユースのジュニアフェザー級王者ケビン・ビジャヌエバと対戦、当初の予定通りに重岡兄弟のストロー級タイトルマッチも行われます。

ドラミニへのリベンジの機会を失った和毅はショックでしょうが、「えー?!ドラミニ戦が見たかったのにビジャヌエバかぁ…」と落胆しているボクシングファンは世界中に一人もいません。

レモンサワーかと思ったらライムサワーだった、程度の違いです。内諾=口約束で入荷予定だったレモンサワーがキャンセルされ、急遽別ルートでライムサワーを調達しただけのことです。

30年物のモルトを頼んだのに、缶ビールが出て来たというのではありません。

もちろん、プロモートした亀田興毅はチケットの払い戻しなどの対応と、謝罪をしなければならないのは当然です。

しかし、相手が井上尚弥のようなビッグネームならまだしも、薄いレモンサワーが同じくらい薄いライムサワーに変わっただけ。「ドラミニだから前売り買ったのに、ビジャヌエバじゃ見に行く気が失せた」と払い戻す人がどれだけいるでしょうか?

前売りを買って払い戻す人がいるとしたら「PPVで中途半端なお金払うなら、現地観戦もありかなってチケット買ったけど、無料配信になるならそっちで見るわ」という理由の方が多い気がします。

全てがチグハグ、感覚がズレているんです。亀田興毅に限った話ではなく、帝拳も大橋も含めてボクシング界の常識は世間の非常識です。


プロボクシングの世界…面白いにも程があります。


そして「プライズ・ファイター」。これは、英国でスマッシュヒットした、昔のK1がやっていた「ワンデー・トーナメント」形式のイベント。日本ではワンデー・トーナメントはルール上、出来ませんから通常のトーナメントで実施するようです。

井上尚弥のバンタム級デビューでジェイミー・マクドネルを充てたエディー・ハーンは「マッチルーム・ジャパン構想」を7〜8年前から温めて来ました。



「中重量級」の英国・欧州はもちろん、「中量級」の米国市場でも足場を固め、「軽量級」の日本を勢力圏に収めると、マッチルーム帝国はフルラインで完成します。

マッチルームは昨年9月に楽天チケットと年3回イベント開催、3年契約を結び、日本進出を具体化、今回がそのキックオフになるはずでした。

延期となると、今年上半期では一つも興行が打てない可能性も出て来ました。

実は、プライズ・ファイターのキックオフはマッチルームの自主興行で1月予定でしたが、どんどんズレ込み「3150」との共催で3月31日に至ったという経緯があります。

今回の延期は〝IBF気まぐれ劇場〟でドラミニ戦が中止になった余波ではなく、楽天チケットからの申し入れでした。

そんなので〝撤退〟できるなんて、楽天チケとマッチルームの契約も内諾=口約束レベルだったのでしょうか?「ごめん、前に言ってたあれ、プライズファイターだっけ?あれ、やっぱやめとくわ」で済んじゃう?

さすがに契約書は存在してるでしょうが、撤退の余地も残した3年契約だったはずです。マッチルームから見ると楽天チケは大口スポンサー。

その楽天チケが「ボクシング事業の見直し」を考えているというのですから、マッチルーム帝国にとって日本はしばらく白地図のままとなりそうです。

マッチルームからすると「日本人は欧米への憧れが根強い」と思ってるかもしれませんが、ことボクシングに関して「欧」はほぼありません。

「クルーザー級やライトヘビー級よりも黄金のバンタムの方が世界的にも人気がある」と真剣に信じている日本のファンは「MGMグランドガーデンアリーナがボクシングの最高舞台」と思ってるかもしれませんが、いずれにしても日本のファンが欧州ボクシングに憧れることはまず、ありません。



「プライズファイター」なんて、日本では初耳の人がほとんど、です。

ボクシングファンは「ロンドンで盛り上がってたあれか!ミドル級トーナメント、面白そう!」と刺激されても、ライトなボクシングファンは「何それ?ミドル級なんてゴロフキンしか知らん」となるでしょうし、カジュアルなスポーツファンは興味すらないでしょう。

結局は「欧州スタイルが日本で浸透するのは難しい」という楽天チケの判断だったのかもしれません。

マッチルームとの3年9興行契約は、はじめの一歩も踏み出せない状態、契約解消が発表されても誰も驚きはない、そんな空気になってしまいました。

それにしても、あまりにも稚拙すぎて、完全な喜劇です。



面白いにも程があります。


興毅としては、トップランクやGBPを圧倒する世界的なプロモーション、マッチルームとの関係は壊したくありません。しかし、楽天チケが撤退となると、優勝賞金100万ドルを謳う「プライズファイター」は誰が買ってくれるのか?

マッチルームからすると、日本進出にあたって興毅が信頼できるパートナーかどうかを査定するのに丁度良いドタバタ劇だったかもしれません。

優勝賞金100万ドル、8名トーナメント(決勝まで全7試合のべ14人)の報酬も30万ドルとして420万ドル、合わせて520万ドル。選手やスタッフの渡航費や滞在費、全部コミコミで600万ドルはかかりそうなコスト。
 
楽天チケは600万ドル、約10億円近い資金を使うだけの費用対効果はないと考え直したようです。

興毅が楽天チケに代わるスポンサーを引っ張ってきたら、マッチルームも関係強化を進めるでしょう。

日本での有名どころ、つまり超軽量級ではファン・フランシスコ・エストラーダやバム・ロドリゲス、ムロジョン・アフマダリエフ、ジョシュ・ウォリントン、リー・ウッド、レイモンド・フォード、マウリシオ・ララらと契約を結ぶマッチルームと強固な関係を築くことは、亀プロにとっても大きなテーマでしょう。


いずれにしても、3月31日にキックオフ、7月に準決勝、11月に決勝というプライズ・ファイターの計画はスポンサー問題以前に、スケジュール的にも完全に暗礁に乗り上げました。

あの悪名高きWBSSですら、一応〝離陸〟はしましたが、日本版プライズファイターは滑走路で緊急停止、機体から火を噴いている状況です。

楽天の資金援助が期待できなくなった今、新たなスポンサーを見つけて「3150ファイトでトーナメント開催」ができれば、興毅のスポンサーとしての才能・手腕はとんでもないレベルにあると言えますが…。


そして、そして、こんな騒動に敏感な他人事野次馬・一般財団法人JBC様も黙ってるわけがありません。

JBC様は「プロボクシング界の信用を失墜させる出来事で看過できない」と、何が起きていたのかを調査に乗り出すと発表したのです。

JBC様が「プロボクシングの信用を失墜させた!」とお怒りなのです。

泥棒が「盗みは断じて許さない!」と立ち上がるのと、全く同じ理屈です。



面白いにも程があります。