松井秀喜の大谷翔平に対するコメントを二つ紹介します。

「あのレベルで両方できる人はなかなかいないかもしれないが、才能のあった選手はいたはず。プロ野球界がこれまで二刀流に対して怠慢だったんじゃないか」。

「彼を見てると(野球に賭ける情熱が)私は足りなかったのかもしれない」。



落合博満のコメント。

「(大谷翔平は何がすごいのか?と聞かれて)野球に全てを賭けているとこでしょ」。

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かつて、協栄ジムの金平正紀会長が具志堅用高を「100年に一人の天才」と売り出しましたが、ニュースステーション(現報道ステーション)で久米宏は「100年に一度ってことは江戸時代ですね、その頃日本でボクシングしてる人いたんでしょうか?」と皮肉りました。

今では絶対考えられないですね。「具志堅に失礼だろ!」「宣伝文句に皮肉を言うな」などなど苦情が殺到しそうです。

大谷の場合は「100年に一人」と言われても、皮肉のつけようがありません。むしろ、MLBが19世紀後半からの歴史を誇ることを考えると「140年に一人」でも誇大表現ではありません。

では、大谷は「140年に一人の天才」なのでしょうか?

MLBの歴史140年にして初めて現れたユニコーンを「天才」と呼ぶならその通りですが、この140年間で大谷以上の才能が存在しなかったのか?というとそうではないでしょう。

100年以上前に、ベーブ・ルースをして「これ(二刀流)は体力的に不可能」と諦めてから、誰も挑戦しようとしなかったという現実こそが、松井の言う「怠慢」です。

才能のある人が何人も挑戦していずれも失敗に終わったという実験結果が出ていないのに「不可能」と決めつけてきたのは、確かに怠慢でした。

その一方で、川上憲伸は「僕なりに一生懸命やってきたつもりで、打撃も好きだった。でも、投手の練習だけでも時間が足らない、もっと時間が欲しいと思ってた」と、大谷の凄みを語っています。

高橋由伸も「もちろん、技術はすごい。でも今までの日本人になく、大谷が持っているのはパワー」と、トラウトやジャッジですら驚くパワーはマネできるものじゃないと指摘しています。

大谷本人が「僕より上手い子はいっぱいいた」と言うように、少年段階での才能はそこまで傑出したものではありませんでした。

高校時代でも「藤浪晋太郎とどちらがプロ向きか?」が語られたように、当時は大谷がかぶる帽子の下には、ユニコーンの角らしきものすら見えませんでした。

そして、MLB一本を表明していた高校三年時の大谷も、二刀流への意識はゼロでした。MLBで、投手として活躍するのが目標だったはずです。

日本での活躍を担保にしてMLBに渡るのではなく、最初から最高峰に挑戦して大きな結果を出すことへのこだわりは、あったのかもしれません。

そんなMLBへの思いはとてつもなく強固に見えましたが、彼は二刀流を提案されるとあっさりファイターズ入りに変節します。

ユニコーンを正確に表現するなら「140年に一人の天才」ではありません。大谷よりも純粋な才能があったタレントはこの間に何人も生まれていたはずです。

もしかしたら、あのイチローも防御率と打率でタイトルを獲れる可能性があったかもしれません。

ユニコーンを正確に表現するなら「140年に一人の挑戦者」でしょう。

精密な血液検査をして、自分に合っている食べ物、合わない食べ物を選別、食事の管理から厳格に行なっています。

炭水化物以外の栄養が足りている場合は、パスタに塩を一振りして食べる、そんな姿をWBCの宿舎で見たチームメイトは誰もが「自分はまだまだ甘かった」と痛感してしたと言います。

ほぼ全てのアワードは、ビデオメッセージで済ませてきました。画面に映る狭そうで簡素な部屋は、おそらくトレーニング施設の隅に急拵えで作ったものでしょう。

トレーニングのインタバル中に、チャチャっと済ませたのだと思われます。

落合が「野球に全てを賭けている」と言うところです。

高い評価を得て、華やかな舞台に立ちたいというのは、アスリートの自然な思いです。

「時間がない」と悩んだ川上も、大きなアワードには出席していました。

山川穂高の行動は夫や父親としては不適切でしたが、スター選手としては当たり前のことに思えます(傷害罪が確定したら問題ですが)。

美味しいものも滅多に食べられず、華やかな舞台でスポットライトを浴びたり、高いお酒や車に乗ったり、どこに行ってもチヤホヤされたり、女の子がたくさん寄ってきたり…そんなことから距離を置く、なんの贅沢もせず、野球しかない人生…肉体的にはほぼ拷問のような毎日…彼は何が楽しいのでしょうか?

「ニューヨークではどの店が好き?」。現地メディアにそう聞かれた大谷は「外に出たことがないのでわからない」といつものようにボソボソと答えました。

彼はメジャー何年目ですか?何度もニューヨークに行って、一度も外に出たことがないのですか?

大谷が知っているニューヨークは、ホテルとトレーニングルームと球場だけですか?

彼の人生、何が楽しいのでしょうか?

試合後のインタビューでも、勝ったのか負けたのかがわからないくらい、テンションが下がっています。

それなのに。

フィールドの中の大谷は他のどの選手よりも楽しそうにプレーしています。

彼に特別な才能があるとしたら、まずはその不屈の挑戦者魂です。そして競技を心の底から楽しめること。

野球の神様が大谷翔平を溺愛しない理由は、どこを探しても見当たりません。