昨年はボクシング・マガジンとリング誌が相次いで廃刊、長年愛読してきた私にとって痛恨の一年になってしまいました。

スポーツ専門誌が、紙媒体としてネットメディアに対抗することは、まず不可能です。

速報性に動画、情報量、持ち運びの軽さ(持ち運ぶ必要すらない)…ネットメディアは紙媒体にとってキラーの集合体です。

ただ、それはおそらく「序盤」だけの話です。

この戦いを12回戦に例えるなら、まだ第1ラウンドの途中、序盤も序盤です。

1979年に開局した世界最大のスポーツメディア、ESPNがインターネットを使ったプラットフォームと、紙媒体のESPNマガジンだけでなくネットメディアとして大きく成長したのは2000年代に入ってから。

DAZNがプラットフォームとしてだけでなく、メディアとスポーツ産業に乗り込んだのは2016年。

電網媒体はわずか10年ちょっとの間で、紙媒体を駆逐しました。

リング誌の場合は、ランキング操作による信用の失墜と米国ボクシング市場の衰退によって1989年にも1年間の休刊を余儀なくされるなど慢性経営難に喘いできました。

リング誌の廃刊を「ネットに駆逐された」というのは、都合の良い言い訳にも聞こえます。

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今夜はボクシングから離れて、今日、中野の古書店で購入したばかりの「週刊サンケイスポーツ」から、紙媒体の持つ魅力、「中盤」から「終盤」にかけてはネットメディアには欠落している圧倒的な特徴を発揮することを訴えたいと思います。

週刊サンケイスポーツは昭和33年(1958年)の創刊。もちろん、私など知る由もありません。

今日、購入した金額は500円。当時は30円、17倍近い値段で購入したことになりますが、物価上昇率を考えると、そこまで高い買い物ではありません。

さて、購入したのは昭和43年(1968年)7月29日号。

もし、週刊サンケイスポーツがネットメディアとして存続していたとしても、紙媒体の手触りはもちろん、雰囲気すら、今に伝えることはできないでしょう。

穿った見方をすると、紙媒体なら「当時と何も変わらないまま」手にすることができますが、ネットの場合は消失するどころか、改竄されることも当たり前に横行しています。

嘘を「つかない」のは、紙媒体です。

正確にいえば、嘘が「つけない」のが紙媒体です。 

そして、ネットメディアが絶対に伝えられないのは、手触りやサイズ、匂いです。

もちろん、近い将来、そういったものまで復元されるかもしれませんが、やはり作り手の都合による改竄は、おぞましいまでに横行するでしょう。

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これ↑は伝説にも程がある「天覧試合」を伝えるカラーページ。


天覧試合は、当時を知らない私も含めて多くの人が知識として理解している、日本スポーツシーン最高のクライマックスだけに、現代でもネットメディアで当時の熱狂を再現するのは難しくないかもしれません
。

つまり、あの日、あの時の長嶋茂雄と村山実の真剣勝負は、半世紀以上経った今も生々しく熱伝導されているのです。

そうです、この週刊サンケイスポーツは昭和43年7月29日号。昭和34年に行われた伝説から9年も経っているというのに、カラーグラビアで回想しているのです。 

長嶋は引退試合で「巨人軍は永久に不滅」と語りましたが、真実は「長嶋茂雄は永久に不滅」でした。

しかし…世の中は、冷めない熱を帯びた伝説だけで成り立っているわけがありません。

 紙媒体に出稿された広告などは、時代に使い捨てられる宿命を背負いながらも、往時を偲ばせる貴重な証拠です。

それは、ネットで一覧しても興味深いでしょうが、実物のリアリティには勝てません。

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この↑「広岡達朗夫妻のリッカーミシンの広告」なんて、どうですか?…なんてSNSで問いかけてる時点で、私も相当なアホですが、言いたいことは伝わってると思いたいです。

他にも、「へえ」と唸る広告や記事が満載です。

大袈裟ではなく、歴史の教科書です。

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このグラビア、「野球一筋の男 長嶋茂雄」も今ではちょっと考えられません。

「ファンレターが(自宅に)一日約70通」はまだしも、電話!が「30回はかかってくる」という、現代では理解不可能の時代です。

さらに、自宅に詰めかけたファンにサインする長嶋、あの時代にプライバシーなんてカタカナは存在しませんでした。

「多くのファンから見守られていると思うと幸福です」(長嶋)。 誤解を恐れずにいうと、まさに古き良き時代です。

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そして、これ↑は、王貞治と黒柳徹子の対談。「徹子の部屋」の紙バージョンです。


当時は「週刊サンケイスポーツ」だけでなく、「週刊スポーツFight」などスポーツ専門の週刊誌が複数発行されていました。 

ただ、その内容は8割方がプロ野球。

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五輪特集などもあったようですが、基本はプロ野球。

そして、残りの2割は相撲とプロボクシングでした。

それでも、ボクシングの世界戦を報じる号では大きくページを割いていたのは想像に難くありません。

ボクシングはメジャースポーツで、世界戦ともなると野球も相撲も凌駕する国民的関心事だったことは、他の文献などからも明らかです。

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 あの時代、長嶋茂雄は「大谷翔平」でした。いや…もしかしたら、それ以上の存在だったかもしれません。

そして、プロボクシングは1団体時代。

オリジナル8の階級制覇にはジュニアライト級とジュニアウェルター級が加わり、10階級となっていましたが、それでも世界王者は地球上に10人しかいない時代です。

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ボクシングは老若男女が楽しめるスポーツではありません。若い男性でも、拒否反応を示す人もいるでしょう。

しかし、現在の没落ぶりは、4団体17階級という、もはやスポーツとしての体をなしていない混沌が最大の原因です。



何はともあれ。「実体」のある紙媒体は、65年経った現在にも当時の肌感覚や温度を伝えてくれます。

それは紙でできたタイムカプセルです。 

この感覚は、ネットメディアで体感できることは、それこそタイムマシンでも発明されない限り、永遠に訪れないでしょう。