今週末、これまた注目のカードが用意されています。

長らくボクシングファンを楽しませてくれているワシル・ロマチェンコと、2階級制覇を狙う中谷潤人の世界タイトルマッチがMGMグランドガーデンアリーナで行われるのです。

Saturday 20, May 2023

MGM Grand, Las Vegas, Nevada, USA
 
commission:Nevada Athletic Commission
 
promoter:Bob Arum (Top Rank), 
     Lou DiBella (DiBella Entertainment), 
     Devin Haney
 
matchmaker:Brad Goodman
 
 media:USA ESPN+  WOWOW


Devin Haney 
(Ring magazine Champion) 
vs. 
Vasiliy Lomachenko
 (Ring magazine No. 1)
 

 Lightweights 
(for Haney’s Ring/IBF/WBA/WBC/WBO titles)


Junto Nakatani (No. 6) 
vs.
Andrew Moloney (No. 8)
 

Junior bantamweights 
(for vacant WBO title) 
 


まずは、ライト級のUndisputed Championship。

24歳のデビン・ヘイニーと、35歳のワシル・ロマチェンコ、11歳差のBattle Of Age(世代の決闘)です。

135ポンドはヘイニーが全てのベルトを掌握しているUndisputed Championですが、ガーボンタ・デービスとシャクール・スティーブンソンも階級最強候補に目されており、その意味でヘイニーはUndisputed Champion(議論する余地のない王者)とはいえません。

かつてのPFPキングのロマチェンコも、劣化の程度によるとはいえ、この4強に絡む実力は十分。

現地時間土曜日夜のMGMグランドガーデンアリーナで試されるのは〝The Dream〟ヘイニーの方です。

ライト級が揺れているのは、2020年10月にWBA /WBC /WBOの3つのストラップを束ねていたウクライナのハイテクがテオフィモ・ロペスにまさかの番狂せで敗れてしまったことが震源地。

人気先行のテオフィモから、世界基準の実力も怪しいジョージ・カンボソス、そしてようやく明らかに実力のあるヘイニーとタイトルが落ち着いたのです。

米国ボクシングの没落というだけでなく、面白くない試合っぷりで集客力の弱いヘイニーでも、カンボソスなどではなく、ロマチェンコから王座を簒奪していたなら、ファンからの人気や認知が得られたはずです。

その意味でも、これはヘイニーの真の戴冠試合。



WHのオッズはヘイニーが2/5(1.4倍)、ロマチェンコ2/1(3倍)。アバウト2−1で、つまらないボクシングしか出来ない米国人が有利。

本人の公約通り、ロマチェンコを初めてストップするようなら〝事件〟です。

ロマチェンコはこの試合がちょうどプロ20戦目。

He finished his amateur career with a claimed career record of 396-1, with his only loss avenged twice.

アマチュア時代は396勝1敗、2007年世界選手権、決勝でアルバート・セリモフに敗れたのが唯一の黒星。

そのセリモフには2度雪辱。フランスのレキップ紙は「あらゆるスポーツで、これほどのパーフェクトレコードは見当たらない」と賞賛しました。

アマ戦績は小さな大会での成績は自己申告、虚々実々ですが、五輪や世界選手権の世界最高峰で実力を証明してきたロマチェンコの「396−1」は、ヒクソン・グレイシーの「永遠の400−0」とは天地の違いがあります。

アマチュアとプロは、ルールも違えば、世界チャンピオンの価値も雲泥の差です。

そして、プロアマ通じてあらゆるスポーツであり得ないAサイド、Bサイドという言葉が存在するのがプロボクシングという魔宮です。

ロマチェンコやゲンナジー・ゴロフキンがメキシコ人や日本人だったなら、2010年代の世界のボクシングシーンはもっと活況を呈していたでしょう。

しかし、悲しいかな、ロマはウクライナ人、GGGはカザフ人。米国に強固なコミュニティーなどあるわけもなく、どこにも居場所がないままのサーカスライフを強いられています。

もちろん、旧ソ連からの独立国が米国にファンベースがないのは、分かり切っていたこと。

ロマはTR傘下のマニー・パッキャオとのメガファイトが取り沙汰されたこともありました。ライト級でアップアップの姿を見ると「ウェルター級でパッキャオとは戦えない」と交渉に応じなかったのは、正解のようにも思えますが、個人的には残念でした。

GGGもミドル級でビッグネームが対戦を回避するなら、アンドレ・ウォードやセルゲイ・コバレフとの大勝負に挑む道もありました。

井上尚弥でも「ラスベガスが夢」と口にしたなら「アジア人の軽量級なんて全くお呼びじゃない」と逃げ帰ってくるんじゃなくて、ほとんど同じ骨格のガーボンタに喧嘩をふっかけろって話です。

こういうことを書くと、「誰でも彼でもパッキャオ基準で考えるな」と言われるでしょう。かつて「パッキャオみたいになりたい」と夢を語っていた井上も、今では「パッキャオだけは特別」と、夢を下方修正・縮小しています。

ロマチェンコも階級を上げるにしたがって輝きを失ってしまいました。

誰だってパッキャオになりたい、でも誰もなれない。それが仕方がないのはわかりますが、チャレンジする姿は見たい、そんな勝手な思いはあります。


ロマがアンダードッグになるのは、これが人生初です。プロアマ通じて20年以上のボクシング人生、35歳で迎える初めてのアンダードッグ。

いいですね、そして、それはもちろん、勝てば生涯初の番狂せを経験するということです。

オルランド・サリド、テオフィモと2度も番狂せを喰らって、自分がアンダードッグになったら順当に負ける、それではマイク・タイソンと同じ〝Disillusionment(幻滅)リーグ〟入りになってしまいます。

これは「タイソンvsレノックス・ルイス」のライト級バージョンです。 タイソンの場合は自分の方が若いという、逆パターンでしたが。 

ロマチェンコもまた、試されます。