試合決定の報を受けて、ブックメーカーのオッズも少しずつ整ってきました。

bet365の掛け率は、井上尚弥の勝利が4/11(1.36倍)、スティーブン・フルトン勝利が2/1(3倍)。

KO決着は井上が6/4(2.5倍)、フルトン17/2(9.5倍)。

判定までもつれ込むと井上が8/15(2.88倍)、フルトン10/3(4.3倍)。

フルトンが勝つとしたら、勝負を3人のジャッジに委ねるのが最も確率が高い、という見立てです。

井上がKOで、4つ目の階級のアルファベットタイトルを二つ同時に獲得するというのが、大方の予想。

その井上のKO勝利のラウンドは、立ち上がりの1〜3ラウンドが45/1(45倍)で最も配当が高く、4〜6ラウンドで35/1(36倍)、7〜9ラウンドで22/1(23倍)、10〜12ラウンドで8/1(9倍)と、ラウンドが深まるほどKOの確率が上がるという数字になっています。

フルトンの速い動きに、井上は無理せずに慎重にスタート、相手の動きを見極めながら徐々に攻撃を加速、Africana-Americanを削って終盤で仕留める…という、普通に考えても一番ありうる筋書きです。

井上が明白に有利と見られていますが、フルトン目線で【Tail-Wind〜追い風】と【Head-Wind〜向かい風】を考えてみました。

bell-round-1-215x300

【Tail-Wind】

①体格差

身長169㎝/リーチ179㎝のフルトンに対して、井上は165㎝/171㎝。

体格差は身長/リーチの骨格というよりも、123ポンドでデビューしてから10年、122ポンドのジュニアフェザー級に完全アジャストしているフルトンと、108ポンドでデビューして12年、115、118ポンドと刻んできた井上、という構図で見るべきでしょう。

フルトンにとっては10年、21試合を戦ってきた慣れ親しんだウエイトですが、井上にとってはチューンナップ無しの122ポンド、デビュー戦です。

しかし、フルトンはブランドン・フィゲロアとのWBCフェザー級暫定王者決定戦への出場が内定していたように、フェザー級に上げる既定路線を後ろ倒ししての井上戦。

ただでさえ早めの体重管理が求められる、キャリア初の異国での試合。減量がスムーズに行かないなんてことになると、フルトンの勝利はますます遠ざかります。



②スピード

「一瞬のスピードはこっちが上」という井上の発言からも、トータルのスピードはフルトンに軍配が上がるかもしれません。

井上が、その一瞬のスピードを活かして懐に飛び込めず、波打ち際にピン留めされるシーンが目立つようだと、フルトンのAプランに引き摺り込まれてしまいます。



③スタイルと身体能力

井上の世界戦19戦全勝17KOの破壊的なキャリアで、クオリティの高い相手はノニト・ドネアとオマール・ナルバエスくらいという、微妙すぎるロートルです。

井上にとってフルトンは、キャリア初の全盛期の強豪。

フルトンはパンチャーと相性の良いスピードのあるボクサータイプで、やはり井上が初めて拳を交える身体能力が高い(と言われている)Africana-American。

28歳のフルトンが、対戦時に30歳になっているモンスターをお祓いするジョーカーを持っている可能性は否定できません。

FullSizeRender

【Head-Wind】

①世界レベルの経験

フルトンが世界王者になったのは2021年1月、WBO王者アンジェロ・レオを36分間コントロールしました。その後、WBC王者ブランドン・フィゲロア、元WBA/IBF王者ダニー・ローマンといった質の高い相手を競り落としました。

しかし、世界戦の経験はわずか2年余り、たったの3試合しかありません。

一方の井上はフルトンがデビューした2014年にプロ6戦目でWBCジュニアフライ級のストラップを獲得。それから10年、19試合(全勝17KO)の全てが世界戦。

年齢差は二つだけですが、世界トップでの経験には比較にならない大きな差があります。



②大舞台での経験

ここでいう「大」舞台は競技レベルの高さではなく、大きな会場、大きな注目、大きなプレッシャーなどの「大」。

米国ではジュニアフェザー級は不人気クラスで、フルトンも全く注目されませんでした。

陽の目を見ることのなかったフルトンが、見たこともない景色に飲み込まれるのか、それともノニト・ドネアのように「こういう舞台で戦いたいとずっと思っていた」と奮い立つのか。



③完全アウエー

大舞台に飲み込まれなかったとしても、フルトンにとって日本は完全敵地。

クロスゲームでは勝ち目がないと考えるのが常識です。

「明白にポイントを取らなければならない」。拮抗した展開で前半を消化してしまうと、

力みが生じて墓穴を掘ってしまうかもしれません。

生贄に供されるような異様な雰囲気を、マニー・パッキャオのように楽しめることが出来るか。


▶︎▶︎▶︎フルトンのスピードと距離が井上を戸惑わせることが出来るのか?

もし、フルトンが長い距離をキープ出来ずにスピード負けするようなことがあると、つまらない試合になってしまいます。

フルトンの手足のスピードが、井上にとってキャリア最速であるのは間違いありませんが…。