WBCジュニアフライ級のベルトを返上した井上尚弥が、WBOジュニアバンタム級王者オマール・ナルバエスを破壊してプロ8戦目で2階級制覇に成功したのは2014年12月30日。

日本では「伝説の名王者」と喧伝されたナルバエスでしたが、綺麗な戦績とは裏腹に現実の世界評価は低く、PFP10傑にも数えられていませんでした。

フライ級とジュニアバンタム級で2階級制覇、それぞれのクラスで二桁防衛を果たしていたナルバエスが PFPの末席も汚せないという事実は、弱い相手ばかりを選んで、つまらない試合を繰り返してきたツケでもありました。

無敗のまま2階級制覇、それぞれ二桁防衛してPFPに入らないーーーこんな芸当は、ナルバエス以外に誰にもできません。 その意味では、まさに伝説です。

そんな〝伝説〟に圧勝してもPFPに入る道理はなく、井上が初めてPFPにランキングされたのは1年半後の2016年6月のこと。

1990年(電子版は2010年)からキックオフしたリング誌PFPはカオサイ・ギャラクシーや張正九、柳明佑、ユーリ・アルバチャコフ、マニー・パッキャオ、ノニト・ドネアが10傑入りを果たしていました。

歴史が浅い(1960年代にPFPランキングがあればファイテング原田は1965〜67年までの3年近く1位をキープしていた可能性大)とはいえ、日本人ボクサーは1人も入り込むことができませんでした。

この分厚い壁に風穴を開けたのは山中慎介と内山高志。

2015年、電子版で山中と内山が相次いでランクイン。山中は7位、内山は8位までランクを伸ばします。

このまま、井上が登場する2016年6月を迎えると日本人3人体制になるところでしたが、この年4月に内山がジェスレル・コラレスに大番狂せで敗れてしまい、ランクアウト。

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2016年10月、山中・井上の2人体制は意外な形で崩れてしまいます。ワシル・ロマチェンコらのランクインで井上が圏外に。

翌2017年には井上が再突入、再び山中・井上のコンビが復活したのも束の間、今度は神の左がルイス・ネリの凶拳に倒されてしまいランクアウト。

そこからは、井上の一人旅。2022年には1ヶ月足らずの刹那でしたが井上は日本人初の1位にの座に就き、2020年に田中恒成を破って井岡一翔がPFP入りしましたが、ジョシュ・テイラーやジャーメル・チャーロらに弾き出されて、現在は圏外。

こうして、日本人ボクサーの足跡を辿るだけでも、年に何百試合も行われる4団体17階級時代だからこそ、PFPが語られるのであって、これがオリジナル8の時代では年50試合がせいぜい。

PFPなんて妄想が入り込む隙はありませんでした。

ただ、もし60年代にPFPランキングがあれば、1964年、原田戦の前のエデル・ジョフレが1位だったのは、リング誌がのちに1960年代の1位に選んでいることなどから、ほぼ確実です。

そして、原田がジョフレ初戦に勝ってトップ10、もしかしたらトップ5以上もありえたでしょう。1966年、2度目の防衛戦でジョフレを返り討ちにした時点でPFP1位は間違いなく、1968年にライオネル・ローズに敗れるまでの2年間はPFPキングだった可能性大です。

もし、ジョフレ初戦でPFP1位に立っていたなら、PFPトップを3年間キープしたことになります。

こうした背景を考えると、フレディ・ローチの「(原田らレジェンドと井上を比べるのは)まだ早い」ということになるのでしょう。

原田の時代には存在しなかったジュニアフライ級やジュニアバンタム級を含めて3階級制覇したことで、井上は原田を数字で上回っていますが、原田のフライ、バンタムのUndisputed Title2階級制覇とは比べるものでないのは、敬虔な井上信者の脳でも理解できるのではないでしょうか?

その理屈では、スティーブン・フルトンのジュニアフェザー級も原田の時代には存在しなかった水増し階級に過ぎません。

一方で、JBCがIBFとWBOを認めた2013年以降の4団体時代で、井上尚弥が傑出した存在であることは、どんなアンチでも受け入れるしかない事実です。

現時点の井上が原田に勝っている要素は、一つもないのでしょうか?

原田が出来なかったオリジナル8でのUndisputed Title3階級制覇(バンタム・フェザー・ライト)を成し遂げれば、ローチもBWAAも文句なしで「日本史上最高」と認めるのでしょうか?

しかし、ジュニアフライ級と、ジュニアバンタム級、そして頃から始まるジュニアフェザー級での活躍、業績が全く考慮されないというのはおかしな話です。

フリオ・セサール・チャベスのジュニアライト級とジュニアウェルター級での実績を「全く意味がない。チャベスはライト級しか獲っていない」なんてことは、誰も言わないでしょう。

もちろん、チャベスは井上とは違い、質の高い強豪相手に勝利を積み重ねました。

井上の業績でどうしても目を引いてしまうのは、対戦相手の質です。もちろん、世界戦のほとんどはリング誌やESPNで「世界ランカー」と認められている実力者ですから、一般的な観点では対戦相手の質は決して低くはありません。

しかし、ここでの比較対象は長谷川穂積や西岡利晃、山中慎介とは全くステージの違う、1団体10階級時代の怪物、ファイティング原田です…。