井上尚弥とドミトリー・ビボル。

二人は無敗の世界王者ですが、表層的な実績は全く違います。

井上はジュニアフライ=108ポンド、ジュニアバンタム=115ポンド、バンタム=118ポンドの10ポンド幅で3階級制覇。

世界戦は19戦全勝17KO、現役・未来・過去の世界王者とは10戦全勝8KO。

対するビボルが王者に就いたのは、ライトヘビー=175ポンドだけ。

世界戦は10試合全勝ながら、KOはわずか2。現役・未来・過去の世界王者とは4戦してKOはゼロ。

数字上は32歳のロシア人と、29歳の日本人は並べて評価する対象ではありません。

FOTYの選考対象になるカレンダーイヤーの成績は二人とも2戦2勝ですが、井上が二人の王者を圧倒的な内容でKOしてUndisputed championになったのに対して、ビボルはWBA王者として二人の挑戦者に判定勝ちしたに過ぎません。

もちろん、軽量級と重量級の間には、世界的な層の厚さ、注目度という格差が重たく横たわっています。

ビボルは、ライトヘビー級に進出した現代最高のスーパースター、カネロ・アルバレスを撃破、そしてやはりメキシカンの人気者で無敗のヒルベルト・ラミレスにも完勝したインパクトによって、井上の数字的な優位を木っ端微塵に破壊してしまいました。

ESPNの見立てでは次点はデビン・ヘイニーでしたが、この地味なライト級のUndisputed championも今年2戦2勝、いずれも完勝とはいえ同じ相手に山場のない退屈な試合でした。

しかも、その相手はジョージ・カンボソスJr.。ポール・バトラーよりは遥かにマシとはいえ、39歳バージョンのノニト.・ドネアよりも下でしょう。

さらに、井上の前にジェシー・ロドリゲスを挙げているのも気分は良くありません。

バムはカルロス・クアドラスとシーサケット・ソールンビサイの古豪に勝利、圧倒的な内容が期待されたイスラエル・ゴンサレス戦はもたつきましたが、今年3戦全勝。

とはいえ、落ち目のクアドラスとシーサケットに、イスゴンです。FOTYの俎上に上げる神経が理解できません。

井上の「ドネア&バトラー」も偉そうなことは言えませんが、二人とも一応は対立王者でした。

ESPNは「日本の試合は夜中や明け方の放送になるから注目されない」と、米国再上陸を促すようなことを書いていますが、日本の軽量級が米国でやると報酬が極端に低く、会場も一気にショボくなるのでビジネスとして成立しないのです。

ESPNは、高額の放映権料をまたせしめたいのでしょうが、憧れ料まで支払った挙句に「無名」とか書く輩を儲けさせることなんてもうしません。

さて、ローマン・ゴンザレスにキングの座を2年間も預けるPFPと違い、軽量級には非常に厳しいFOTY。その傾向は歴史的にも一貫しています。

リング誌のFOTYはヘビー級に人材がいない年はミドル級やウェルター級という、偏った階級に分配されてきましたが、軽量級に光を当てることはありませんでした。


リング誌のFOTYは1928年のスタートから96年。フェザー級以下の軽量級でFOTYに輝いたのは1977年のカルロス・サラテただ一人だけ。


最も権威のある全米ボクシング記者協会(BWAA)のSugar Ray Robinson Awardも、ジュニアウェルター級のリッキー・ハットン(2005年受賞)でも「軽量のボクサーが大健闘」と形容されたほどです。フェザー級以下は全く眼中にない状況です。

その日本は、ライト級ですら「重量級」と表現されることもある、栄養失調国です。

BWAAでは、2012年にノニト・ドネア(ジュニアフェザー級)、2016年にカール・フランプトン(フェザー級)と、二人も軽量級から選ばれています。

IMG_4522

個人的には、井上尚弥にバンタム級でこのFOTYの最軽量記録を更新して欲しい思いも少しはありましたが、たいした話じゃありません。

井上がジュニアフェザーやフェザー級でFOTYに輝くよりも、ジュニアライト級で獲る方がワクワクします

フェザー以下でFOTYを獲っても「誰に勝ったか」が微妙な相手ばかりになってしまうのは容易に想像できますが、ジュニアライトで選ばれたのなら、相当に名前の通った猛者に勝っているはずですから。