三冠王とは、実は番狂わせの物語です。

彼らは皆、フィールドのパックマンでした。

2リーグ分裂後に三冠王を獲ったのは野村克也、王貞治、落合博満、ブーマー、バース、松中信彦の6人。

村上宗隆で7人目です。

最初から三冠王を狙える打者と騒がれてプロ入りするルーキーは、まずいません。

彼らもまたそうでした。

それどころか、三冠王を少しでも予感させる上々のスタートを切ったわけでもありません。

そんな傑物はまず、現れませんが、清原和博はその種の逸材だったかもしれません。

村上も含めて7人の三冠王は山岳小説のような成長物語を紡いで、そこに辿り着きました。

助っ人外国人という超即戦力で来日したブーマーとバースですら、一年目でその萌芽を見定めることは誰も出来ませんでした。

「お情けのテスト生」だった野村。「三振王」とヤジられた王。「そんな打ち方じゃプロは無理」とサジを投げられた落合。「金属バットに馴化しすぎてプロでは不向き」と烙印を押された松中…。

そして「ハズレ1位」の村上。

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落合に至っては、最初に三冠王を獲ったとき「三つともレベルが低すぎる」「たまたまライバル不在で獲れたラッキー三冠王」と揶揄されました。

それは、ある意味で事実でした。しかし、多くの専門家やファンは大きな間違いを犯していました。

三冠王に到達した打者は、ほとんど完成の域に達しているという勘違いです。

〝最初の〟落合は「3割2分5厘、32本塁打、99打点」という数字。

大きな間違いを犯した人の見立ては「三冠獲れたのは周りのレベルが低かったから。落合はこんなもん」というものでした。

前段は正しいかもしれません。しかし、後段は大間違いでした。「落合はこんなもん」ではなかったのです。

もちろん、あの性格です。成し遂げだ快挙にケチをつける声に対する反発・反骨は相当なものがあったでしょう。しかし、それだけで、わずか2年後に勘違いした人をひれ伏せさせることなど出来っこありません。

〝最初の〟落合は間違いなく、成長の過渡期にある未完成版だったのです。


さて、村上宗隆です。

落合よりも6歳も若い今の村上をまだまだ未完成版だと言って、誰が否定できるでしょうか?

いずれにしても、私たちは今シーズン〝最初の〟村上宗隆を目撃する僥倖に浴しました。

太平洋を渡るまでに、まだ少し時間が残されています。

〝次の〟村上、〝その次の〟村上、さらに落合超えの〝4度目の〟村上も見ることが出来るかもしれません。