8月20日 サウジアラビア ジッタ

WBA/IBF/WBO/IBO世界ヘビー級タイトルマッチ

©︎オレクサンダー・ウシク
vs
アンソニー・ジョシュア

この夏最大のメガファイトが、週末に迫りました。

カネロ・アルバレスと世界の人気を二分するアンソニー・ジョシュアが、〝ヘビー級のハイテク〟オレクサンダー・ウシクへの雪辱に挑む大一番。

ジョシュアには「アンディ・ルイスJr.」という〝前科〟と〝実績〟があります。

〝メキシコのバター・ビーン〟に距離を潰され、パンチャーズ・チャンスを許してしまったのは、2019年6月1日。米国初上陸を派手な勝利で飾るはずのマディソン・スクエア・ガーデンが、悪夢の舞台でした。

それでも、2019年12月7日、サウジアラビア・リディヤでの再戦はスピードとテクニックの勝負に持ち込み、ルイスを封じ込め、贖罪を果たしました。


そして、昨年9月25日にトットナムのホットスパースタジアムをフルハウスにしたウシクとの初戦。まさかの判定負けを喫してしまいます。

ジョシュアのキャリアに付けられた二つの黒星には〝伏兵〟に番狂わせを起こされたという共通点がありますが、その内容は全く異なります。

ルイス戦は不用意なパンチを被弾した「油断」であった一方、ウシク戦は「慎重」に戦ったがために相手の土俵、スピードとテクニック勝負に引き摺り込まれてしまいました。

ルイスとの再戦ではスピードとテクニックで雪辱を果たしたジョシュアでしたが、ウシクとの再戦では攻撃的なパワー勝負を挑もうとしているのは、ロベルト・ガルシアを新トレーナーに招聘したことからも明らかです。


ルイスとの2試合は、中途半端な打撃戦に巻き込まれた危険な初戦から、スピードとテクニックを全面に出したアウトボクシングの安全策という流れでした。

しかし、今回は安全策で初戦を落としたウシクに、危険な打撃戦で対抗しようとしているのです。

ジョシュアがウシクより優れているのは、両拳のパワー。それを存分に発揮出来ず、ウシクのスピードとテクニックに付き合ったから初戦を落とした、という見立ては正しいように見えます。

身長やリーチ、体格差は距離の問題です。リーチの短さはクロスレンジでのパンチの回転とスピードで圧倒的に有利となります。

また、身長・リーチの短さは肉体の圧縮を意味し、パワーや耐久力が増すことが多いのですが、これはヘビー級を除く減量16階級に言えることで、ヘビー級には通用しません。

タイソン・フューリーの長身と長いリーチは、減量階級では体の薄さと当たれ脆さにつながるケースがありますが、ヘビー級はそんな公平なトレードオフとは無関係の残酷な世界です。

ウシクとジョシュアにも残酷なまでの体格差が、再戦でも変わらず横たわっています。

しかし、大きければ大きいほど有利なヘビー級ですが、巨人にも死角があります。ジョシュアも、二つの深刻な死角があることをすでに晒してしまっています。

一つは、どんな巨人も抱えているスタミナの問題。

巨大な肉体を動かすエネルギー量は、軽量級の比ではありません。ローマン・ゴンサレスやファン・フランシスコ・エストラーダのようにフルスロットルで12ラウンド36分間パンチを繰り出せる巨人など、世の中に存在しません。

ジョシュアが今回やろうとしている序盤から積極的に攻撃を仕掛ける戦略は、中盤までにある程度のダメージを与えないと、スタミナ消耗から終盤に失速、逆転を喰らう危険を孕んでいます。

さらに危険なのが、二つ目の死角、打たれ弱さです。

フューリーとジョシュアの決定的な違いは、打たれ強さ、耐久力です。

打たれ弱いジョシュアにとって、力ずくてウシクを攻め落とす作戦は大きなリスクも伴います。

もちろん、ジョシュアのパンチがまともにヒットしたら、そこで試合は終わります。

対するウシクなも、ロシアによる母国ウクライナ侵略という大きなストレスを心身に抱えながらリングに上がらなければならないという不安材料があります。

現在のオッズはウシク勝利が11/18(1.61倍)、ジョシュア15/8(2.88倍)とウシクが明白に有利と見られています。

個人的には、初戦ほど一方的なジョシュア有利とは思いません。

再戦でもジョシュアの巨体をウシクが36分間コントロール出来るのか?となると、相当に難しい仕事になりそうです。

兎にも角にも、非常に興味深い一戦になります。