今回はせっかくなので、英国BBCの試合レポートから。

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オレクサンダー・ウシクが、敵地ロンドンで素晴らしいパフォーマンスを見せアンソニー・ジョシュアを撃退、3団体統一ヘビー級世界王者に。

34歳のウクライナ人は、トッテナム・ホットスパー・スタジアムに集まった65,000人のファンの前で、地元の英雄を完全に封じ込めました。

公式採点は117-112、116-112、115-113と3者ともウシク、ジョシュアはキャリア2度目の敗北。

タイソン・フューリーとのメガファイト交渉が失敗に終わったジョシュアが選んだのは、WBOの指名挑戦者で元クルーザー級の完全統一王者、ウシクでした。

ジョシュアにとっては楽な相手と見られましたが、思いがけない展開と結末に大観衆は凍りつきました。

エディ・ハーンは、BBC Radio 5 Liveのインタビューで「ジョシュアが眼窩骨折した可能性がある」と語り、短いスパンでのリング復帰を否定。

ハーンは「ジョシュアが9ラウンド以降、右目が見えないと伝えたように、不用意に被弾してしまった」と説明しています。

ジョシュアは、判定が発表された後、すぐにリングを降りましたが、ツイッターに「目の前でこの世界が崩れ落ちたとしても、前向きに生きようぜ!」と書き込み、元気なところを見せましたが…。

"Keep positive even if the world's crumbling in front of you! London I love you & thank you each and every time!"
 

ジョシュアはリラックスした表情でリングイン、試合開始ゴングが鳴ったときには集中力に満ちた表情をしていましたが…。

ウシクの実力は、私たちの想定を越えていたことが、すぐに明らかになります。

34歳のウクライナ人は序盤からフェイントとハイテンポの攻撃を駆使してジョシュアをコントロール。自分よりもはるかに大きな相手にプレッシャーをかける場面を何度も作りました。

パワーで勝るジョシュアが何度か放った威嚇のパンチは、ウシクが簡単にブロック、左右前後に自在に動いててかわします。ウシクはジョシュアのミスを誘い、作戦通りの完璧なゲームプランを遂行して見せたのです。

第3ラウンド、ウシクの左クロスにジョシュアがグラつき、楽勝ムードの65,000人がざわつき始めます。

ウシクは自信に満ち溢れ、ロンドンのジョシュア・サポーターはどう応援していいのかに戸惑い、いつか爆発するはずの「AJコール」はついに巻き起こることがありませんでした。

ジョシュアのボディにウシクが嫌な表情を見せたときは、ボディーに攻撃を集めましたが、それはおそらくBプランでもない、一貫性の無いその場しのぎでした。


第6ラウンド、ジョシュアの強烈な右にウシクが怯んだように見えましたが、ペースを簡単には渡さず打撃戦を展開。

そして7ラウンド、ウシクが見事なフェイントで左フックを王者の顎にヒット、後方によろけさせました。

もう、この時点でどちらが優れたボクサーなのか、そしてジョシュアに残された勝機がラッキーな一撃に絞られてしまったことに誰もが気付いてしまいました。

スコアカードはウシクが明白に優勢。

ジョシュアはその差を縮める効果的な攻撃が出来ません。ジョシュアのコーナーは「前に出てウシクを捕まえろ」と声を張り上げますが、それが出来るだけの力量はジョシュアになく、それをさせない技量をウシクは十分に持っていました。

第9ラウンド、ジョシュアはウシクをロープに詰めるシーンを作りますが、終了間際に顔面を強打され鼻血を出してコーナーに戻ります。

チャンピオンシップラウンド、11ラウンド。ジョシュアはカットした右目が腫れ、ウシクも左目上から出血。それでもウシクの動きは落ちません。消耗が激しいのは王者の方です。

最終ラウンド、挑戦者がスパート。王者にはこの攻撃に対応できるだけのエネルギーは残っていません。もう1ラウンドあれば、ストップされていたかもしれないという大ピンチに陥った最終回が終了。

観客は、KOしか勝ち目のないジョシュアに「倒せ!」と声援を送りましたが、倒されそうなのはジョシュアでした。

3人のジャッジはすべて挑戦者。ジョシュアの短い第二次政権は、一時政権と同じく番狂わせを起こされて幕を閉じました。

この完敗でジョシュアは大きな岐路に立たされました。この先、ジョシュアがどうするのかはわかりません。

再戦条項を行使する可能性が高いと言われていますが、この敗北はTKO負けのアンディ・ルイスJr.戦よりもはるかに傷が深い内容です。

さらに、ジョシュアの2敗はいずれも小柄な選手に振り回されたもの。

ウシクは1発の威力こそありませんでしたが、大男の周りを縦横無尽に動き回り、ジョシュアのスキを正確に突き続けました。
 
ジョシュアにはウシクという難題の答えを最後まで見つけることができないまま、泥沼でもがいているだけでした。

この敗北は、ヘビー級の偉大な選手としてのレガシーを台無しにするかもしれません。31歳、全盛期のはずの世界ヘビー級王者が下の階級から上がってきた小さな挑戦者に翻弄されてしまったのです。

これで、世界中が渇望してきたジョシュア対フューリーの試合は完全に死にました。もし、いつか実現してもその商品価値は下落しています。

ジョシュアが予定通りに勝利し、フューリーが来月ラスベガスでデオンタイ・ワイルダーとの第3戦に勝利すると、ボクシング史上最大の試合が来年初めにも決定していたかもしれないというのに。

もはや、ウシクとの再戦に勝ったとしても、英雄の帰還にはなりません。今夜、ロンドンでジョシュアが失ったのはアルファベット団体の3本のベルトだけではないのです。

そして、土曜の夜に行われた試合を見る限り、ウシクとの再戦に勝つのは不可能に思えます。ルイスJr.に負けたのは、間違った戦術を選択したからでしたが、今夜は恐らくそうではありません。


エディ・ハーンは敗因を「ジョシュアがウシクに必要以上の敬意を払いすぎたため」としていますが、そうではありません。敬意を払わざるをえなかったのです。

もし、再戦でウシクがあと5〜6ポンド、3㎏弱のビルドアップに成功したなら、ジョシュアは倒されるでしょう。


ハーンは「トニー・ベリューが敗因に挙げた『考えすぎて疲れてしまった』というコメントは正しい。この3、4日はウシクにナーバスになってしまい、彼に敬意を払いすぎてしまい、それがリング上で噴出してしまった」とも語っています。

確かに考えすぎて、迷路にはまり込んだのですが、それはジョシュアが勝手に考えすぎたのではなく、ウシクにその状態に追い込まれたからに他なりません。 

ハーンは「ジョシュアは再戦で勝つ方法を考えている。どうすれば彼に勝てるのか、どうすれば上達できるのか、という答えを考えているはずだ」と強がりますが、その答えを見つけるのは至難の業です。

なぜなら、そもそもその答えなど存在しないのかもしれないのですから…。