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東京は今夜も元気がありません。

この病み疲れた都市で、世界最大のスポーツの祭典が行われているだなんて…。

それでも毎日、テレビに釘付けです。

やっと辿り着いたハレの舞台で最高の結果を勝ち獲ったアスリート、大きな期待を背負いながらまさかの番狂わせに沈んだアスリート。

彼らは勝者だろが、敗者だろうが、いつだって必ず美しく輝いています。

個人的には内村航平、桃田賢斗、大坂なおみが沈んだシーンには、胸が震えました。

メダルの色に順番があっても、彼らに順番などつけられるわけがありません。

…醒めない熱狂は「彼も最強!」「彼女も一番輝いてる!」という感動が毎日更新される贅沢な時間が続いています。


そんなスター誕生に沸き立つお祭りの最中に、日本史上最強のアスリートを考えてみます。
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【長嶋茂雄】

現役時代は1958年〜1974年。この国が前だけを見て、走り続けていた時代にまさにオーバーラップします。

そんな時代背景があるとはいえ「日本列島を沸騰させた」という物差しでは、長嶋茂雄は絶対不世出です。

現在では「記録ではなく記憶に残る」高度経済成長時代の絶対的アイコンとして位置付けられていますが、当時の報道などを見ると、規格外の身体能力にこそ注目が集まっていだことがわかります。

「時代に恵まれただけの幸運なスーパースター」とやっかむ人でも、長嶋信者の言葉を笑い飛ばすことが出来るヒガミ屋が何人かでもいるでしょうか?

「長嶋茂雄が時代に恵まれたんじゃない。時代が長嶋茂雄に恵まれたのだ」。

高度経済成長。もし長嶋がいなければ、あの時代はただただ馬車馬のように働く無味乾燥で味気ない日々としてだけ記憶されていたのかもしれません。



【野茂英雄】
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NPBで1990〜1994年の5年間、MLBで1995〜2008年の14年間、マウンドで豪球とフォークボールをひたすら投げ続けた野茂英雄。

「後進に最も大きな影響を与えた」という点で、日本史上最高、最強のパイオニアです。

メジャーへの道標を打ち建て、NPBトップ選手の価値観を根本から変えた、革命の偉人です。

野茂がいなければ、私たちがイチローや松井、大谷翔平のMLBでの出色のパフォーマンスに酔い痴れることはなかったかもしれません。

野茂の前に道はなかった、のです。

それどころか「ここに道を作ってはいけない!」と立入禁止の有刺鉄線ががんじがらめに張り巡らされていたのです。

堅牢な鉄条網を引き千切り、太平洋を渡った野茂には「契約破りの違反者」「日本人が通用する世界じゃない」と誹謗中傷、罵詈雑言が財界やプロ野球関係者、発言力のある重鎮の多くから噴出しました。

あのとき、野茂は異端のヒールでした。

道がない、どころではありませんでした。

そして、野茂の後ろにこそ道が出来たのです。

野茂は異端などではありません。

そして、彼を異端と謗った数えきれない暗愚な人々は、恥も外聞もなく手の平を返しました。

彼が示してくれた道筋は、異端などではなく、よりレベルの高い場所をひたすら追い求める、まさに〝野球正教〟だったのです。



【イチロー】
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NPBで1992〜2000年、MLBで2001〜2019年までフィールドに全身全霊を捧げたアスリートの鑑。

事実上の国技である野球で、日本人が長らくコンプレックスを持っていたメジャーリーグに走攻守でクサビを打ち込んだ、日本人アスリートの最高傑作です。

首位打者2度、盗塁王1度、MVP1度、殿堂入り確実のMLB史上でも屈指の一番バッター。

努力と根性、不撓不屈の精神、日本スポーツの魂を具現化したアスリート、それがイチローでした。

「全ての失敗は技術の問題」。

運が悪かった。リズムに乗れなかった。怪我や緊張で体が動かなかった…。

どんな失敗も必ず技術が解決する。

その教義は石井慧のような捻くれ者すらも折伏させる、問答無用の真理として永遠に信仰され続けてゆくでしょう。


【大坂なおみ】
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世界の先進国で最も歓迎されているスポーツ、テニスの四大大会を4度制覇。

女子スポーツ史上最高報酬を毎年更新する女子版〝マネー〟。

先進国、欧米人基準なら、他の日本人の追随を許さない絶対女王は、日本史上最強のアスリートです。

社会的な発言はときに議論を巻き起こし、その存在感までもが日本人アスリートとしては群を抜いています。

視点を「日本史上最強アスリート」ではなく「世界=欧米で最も広く、高く認められた日本人アスリート」に変換するなら、その答えは大坂なおみの一択しかありえません。


【大谷翔平】
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長嶋茂雄、野茂英雄、イチロー、大坂なおみと比較するとまだ何も成し遂げていない27歳。

それどころか、規定投球回数にも規定打席にも一度も到達していない、準レギュラーの未熟な27歳です。

ただ、どんなに無理やり考えても、悪口はここまでしか思い浮かびません。

「開幕戦でホームランを2本放つと年間320発ペース」などなど…瞬間最大風速はなんとでも騙れます。

しかし、大谷の場合は100年前にベーブ・ルースが「不可能」と諦めた二刀流で、誰も見たことがない暴風を引き起こし続けているのです。

そして、シーズンを完うしていないものの、その山はすでに七合目に差し掛かっています。

それでも、風が凪ぐ気配は、全くありません。

ベースボールは、地球的にはテニスやサッカーとは比較にならないマイナースポーツです。

しかし、日本では事実上の国技で、歴史的にも最も多くの才能が集められ、最高峰MLBへの尊敬と憧憬は他のスポーツとは一線を画します。

米国の大メディアが連日、鬼か神かのように報じる大谷の活躍は、東京五輪真っ只中という現在でも全く色褪せることはありません。

まるで、終わらないオリンピックを、1人で戦っているかのようです。

MLBで主要タイトルを2度も獲得したイチローは日本人としては何十年に1人の傑出した存在でした。

野茂も松井秀喜も「日本人でよくぞ」という「日本人として規格外」の素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

それなのに、大谷は日本人枠で語るにはそのパフォーマンスにワビもサビも認めることが出来ません。

優れた日本人アスリートによく見られる、修行僧の悲壮なまでのストイックさも、彼からは微塵も伝わってきません。

彼がやっていることは「こんなことが出来る人間がいるのか?」という「人間として規格外」の次元です。

そして、彼を「日本の誇り」というのも違和感があります。

そんな狭量なことを言うと、米国のスポーツファンは「ショウタイムはお前たちだけの誇りじゃない」とあからさまに不機嫌になるでしょう。

長嶋茂雄の時代、野茂英雄の開拓魂、イチローの孤高、大坂なおみのテニス。

コロナの時代でも日本列島はおろか北米大陸も揺るがすことが出来るのです。

彼はパイオニアではありません。それは、後に続く者がいない、いや正確には誰も後を追うことが出来ない、という意味です。

日本史上最高のアスリート。

そんなちっぽけな概念を易々と破壊する物語の始まりを、今、私たちは目撃しています。

2021年。

この年は、東京2020でコロナと戦ったアスリート戦記として記憶されるでしょう。

そして、太平洋の向こう側で、人間として規格外の1人のアスリートが覚醒した年として。

いや、来年の今頃は「あれは覚醒なんかじゃなかった」と大騒ぎしているかもしれません。

まだ、たかが37本塁打です。2割8分の打者なんていくらでもいます。

シーズン後半に入ってやっと5勝なんて投手では、話になりません。

やっぱり、まだ覚醒前です。