1/50のオッズが叩かれた〝ミスマッチ〟でしたが、圧倒的有利と目されたシャクール・スティーブンソンの戦い方は煮え切らないものでした。
「こんな試合しか見せないから、ボクシングの世界でアフリカ系アメリカ人は衰退してしまったんだ」。米国の黒人=African American=が敗北を喫したり、面白くない試合をするたびに囁かれる言葉です。
現在、世界王者のストラップを持つAfrican Americanはゲイリー・ラッセルJr.(WBCフェザー)、ジャメル・ヘリング(WBOジュニアライト)、ガーボンタ・デービス(WBAジュニアライト)、デビン・ヘイニー(WBCライト)、エロール・スペンスJr.(WBC/IBFウェルター)、テレンス・クロフォード(WBOウェルター)、ジャーメル・チャーロ(WBA/WBC/IBFジュニアミドル)、ジャモール・チャーロ(WBCミドル)、デメトリアス・アンドラーデ(WBOミドル)の9人。
21世紀になっても、African Americanが世界地図、少なくとも米国のボクシングシーンで大きな存在であることに変わりはありません。
それでも、モハメド・アリからシュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、マイク・タイソンとリレーされたスーパースターのトーチはオスカー・デラホーヤに持ち去られてからはフロイド・メイウェザーが掌握した時期を除くとAfrican Americanは完全に舞台の袖に追いやられてしまいました。
スーパースターが生まれる中重量級で、旧ソ連圏とロシアのボクサーがAfrican Americanを駆逐するのも、今では珍しい風景ではなくなりました。
バーナード・ホプキンスは没落の理由について「五輪ボクシングの地上波生中継が廃止」「police athletic league organization(警察署を拠点としたボクシングの大会運営)の閉鎖」などを挙げ、最も影響が多いのは「両親、特に母親が反対すること」と語っています。
これまでも、自分の子供がボクシングをすることを歓迎する親は少数派でしたが、African Americanの生活水準が上がると「やるなら球技にしておくれ」というのが、以前よりもより鮮明になってしまいました。
「スラムから抜け出すにはボクシングしかない」時代は終わりました。それでもまだ、ボクシングは選択肢に残っているかもしれません。しかし、それは最後の選択です。
ボクシングは危険で報酬が低いのに対して、他のどのスポーツよりも規律が求められます。上達するのに厳しい練習を長く積み重ねなければなりません。
そして、その対価は特に軽量級では世界王者でもアルバイトしてた方がマシということも少なくありません。
「楽して儲かるボクシングしたい」のなら、五輪を目指したりせずにYouTuberになることです。けして、真面目にボクシングを選んではいけません。
真面目にボクサーになったら人気階級のヘビー級ですら、最初の報酬は1000ドル前後。母国の五輪でメダルを勝ち獲ったフロイド・メイウェザー、あのマネーですらデビュー戦はたったの2500ドルでした。
黒人戦士が駆逐される風景をホプキンスは「この傾向に歯止めはかからない。東ヨーロッパの選手はアマチュア経験が豊富なだけでなく、African Americanよりもハングリーなのだから、勝ち目はない」と諦めています。
「African Americanは人気面でもメキシカンに完全に取って代わられた。ホワイトホープなんて悠長に言ってた時代が懐かしい。いまやブラックホープが求められる時代だ」。
ブラックホープといってもスティーブンソンやデービス、チャーロ兄弟、アンドラーデでは、希望の火なんて灯せるわけがありません。彼らのつまらないボクシングは、灯を消してしまいかねません。
「私がボクシングを始めた頃、ジムはいつも熱気が充満していた。何人もの若いAfrican Americanが目をぎらつかせながら練習に励んでいた」「モハメド・アリはもちろん、シュガー・レイ・レナードやマイク・タイソンが生まれることも、もうないだろう」(ホプキンス)。
関西の田舎町で私がボクシングに惹かれた80年代、超人に見えたトップ選手は軽量級を除いて、全員がAfrican Americanでした。
クロフォードなんかは売り出し方によっては「カネロがスタジアムに集める観客よりも少ないPPV」とバカにされるまでの喜劇的な不人気にならなかったとも思いますが、華が無いのもまた事実です。
米国のマーケットにもかかわらず、カネロやパッキャオと同列に語れるAfrican Americanが一人もいないというのはもはや大惨事です。
デオンティ・ワイルダーがタイソン・フューリーとのラバーマッチを制して、アンソニー・ジョシュアも倒すと救世主誕生となりますが、それも〝一代限り〟。African Americanの復興ではなく「ワイルダーの復活」だけにとどまってしまうのは、ヘビー級のトップ戦線を見渡せば明らかです。
このままAfrican Americanの系譜は絶たれてしまうのか?
続きます。
「こんな試合しか見せないから、ボクシングの世界でアフリカ系アメリカ人は衰退してしまったんだ」。米国の黒人=African American=が敗北を喫したり、面白くない試合をするたびに囁かれる言葉です。
現在、世界王者のストラップを持つAfrican Americanはゲイリー・ラッセルJr.(WBCフェザー)、ジャメル・ヘリング(WBOジュニアライト)、ガーボンタ・デービス(WBAジュニアライト)、デビン・ヘイニー(WBCライト)、エロール・スペンスJr.(WBC/IBFウェルター)、テレンス・クロフォード(WBOウェルター)、ジャーメル・チャーロ(WBA/WBC/IBFジュニアミドル)、ジャモール・チャーロ(WBCミドル)、デメトリアス・アンドラーデ(WBOミドル)の9人。
21世紀になっても、African Americanが世界地図、少なくとも米国のボクシングシーンで大きな存在であることに変わりはありません。
それでも、モハメド・アリからシュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、マイク・タイソンとリレーされたスーパースターのトーチはオスカー・デラホーヤに持ち去られてからはフロイド・メイウェザーが掌握した時期を除くとAfrican Americanは完全に舞台の袖に追いやられてしまいました。
スーパースターが生まれる中重量級で、旧ソ連圏とロシアのボクサーがAfrican Americanを駆逐するのも、今では珍しい風景ではなくなりました。
バーナード・ホプキンスは没落の理由について「五輪ボクシングの地上波生中継が廃止」「police athletic league organization(警察署を拠点としたボクシングの大会運営)の閉鎖」などを挙げ、最も影響が多いのは「両親、特に母親が反対すること」と語っています。
これまでも、自分の子供がボクシングをすることを歓迎する親は少数派でしたが、African Americanの生活水準が上がると「やるなら球技にしておくれ」というのが、以前よりもより鮮明になってしまいました。
「スラムから抜け出すにはボクシングしかない」時代は終わりました。それでもまだ、ボクシングは選択肢に残っているかもしれません。しかし、それは最後の選択です。
ボクシングは危険で報酬が低いのに対して、他のどのスポーツよりも規律が求められます。上達するのに厳しい練習を長く積み重ねなければなりません。
そして、その対価は特に軽量級では世界王者でもアルバイトしてた方がマシということも少なくありません。
「楽して儲かるボクシングしたい」のなら、五輪を目指したりせずにYouTuberになることです。けして、真面目にボクシングを選んではいけません。
真面目にボクサーになったら人気階級のヘビー級ですら、最初の報酬は1000ドル前後。母国の五輪でメダルを勝ち獲ったフロイド・メイウェザー、あのマネーですらデビュー戦はたったの2500ドルでした。
黒人戦士が駆逐される風景をホプキンスは「この傾向に歯止めはかからない。東ヨーロッパの選手はアマチュア経験が豊富なだけでなく、African Americanよりもハングリーなのだから、勝ち目はない」と諦めています。
「African Americanは人気面でもメキシカンに完全に取って代わられた。ホワイトホープなんて悠長に言ってた時代が懐かしい。いまやブラックホープが求められる時代だ」。
ブラックホープといってもスティーブンソンやデービス、チャーロ兄弟、アンドラーデでは、希望の火なんて灯せるわけがありません。彼らのつまらないボクシングは、灯を消してしまいかねません。
「私がボクシングを始めた頃、ジムはいつも熱気が充満していた。何人もの若いAfrican Americanが目をぎらつかせながら練習に励んでいた」「モハメド・アリはもちろん、シュガー・レイ・レナードやマイク・タイソンが生まれることも、もうないだろう」(ホプキンス)。
関西の田舎町で私がボクシングに惹かれた80年代、超人に見えたトップ選手は軽量級を除いて、全員がAfrican Americanでした。
クロフォードなんかは売り出し方によっては「カネロがスタジアムに集める観客よりも少ないPPV」とバカにされるまでの喜劇的な不人気にならなかったとも思いますが、華が無いのもまた事実です。
米国のマーケットにもかかわらず、カネロやパッキャオと同列に語れるAfrican Americanが一人もいないというのはもはや大惨事です。
デオンティ・ワイルダーがタイソン・フューリーとのラバーマッチを制して、アンソニー・ジョシュアも倒すと救世主誕生となりますが、それも〝一代限り〟。African Americanの復興ではなく「ワイルダーの復活」だけにとどまってしまうのは、ヘビー級のトップ戦線を見渡せば明らかです。
このままAfrican Americanの系譜は絶たれてしまうのか?
続きます。


コメント
コメント一覧 (3)
「閉鎖的」この言葉が今のボクシング界をよくも悪くも端的に表しています。
フシ穴の眼
が
しました
学費、寮費諸々、年何百万もの費用が全部ターダーで一流大学に行けますからね。
ボクシングではなんもない。北京五輪を目指していたクロフォードもまたしかり。
アフリカ系だって学歴上がってきたし、あちらではスタート地点に立つのにまず学歴だし。
ただ、1950年代まではNCAAでボクシングの大会もやってて人気あったそうですけど。
フシ穴の眼
が
しました