リング誌電子版に、久しぶりのマーガレット・グッドマン女史のご登場です。
このブログでも何度か登場、書きかけのお話もありますが元ネバダ州アスレティック・コミッション専属のリングドクターで、VADAの創始者です。
リングドクター時代にアジアをフィールドワークした報告書で「アジアの軽量級選手の減量は健康どころか生命を危険に晒している」と警告、その例として挙げたボクサーの中にマニー・パッキャオがいたことは有名です。
リング誌でも、タイトルはその名もズバリ「FIGHT DOCTOR」。上の画像は「VADA:プロボクシングをクリーンなスポーツにするために」(2012年4月号)。
ざ〜っと拙訳。
**********
💉7〜8年前、私はリング誌に選手が目を負傷した時の対応について記事を書きました。
カネロ・アルバレスvsビリー・ジョー・サンダースの試合でもこのことが議論されていることに、少し失望してしまいました。
ボクシングの試合で主審やリングドクターが試合を止める場合、その要因となる情報はしっかり検証しなければなりません。
しかし①選手が自分の身を守れない、②選手の目が見えていない、③試合続行により後遺症が残るような大怪我につながる、と医学的見地から判断したら即刻試合を止めるべきです。
ボクシングは殺し合いではありません。
**********
グッドマン女史の主張は昔から一貫しています。「自分を弱くするような減量はするな。強くなれ」「後遺症の残る可能性がある怪我だと診断したら即ストップ」。
ただ、グッドマンがリングサイドにいたら、田中恒成や井上尚弥の重傷を負いながらの勝利は無かったかもしれません。
難しい問題です。
メディアとボクシングファンの勝手なワガママが生み出す問題は「まだやれるって選手が言ってるんだから止めるな!」と、もう一つあります。
「まだ出来たのにやめたな?死ぬまで戦う根性がないヘタレは引退しろ」という選手に向けて突き刺す軽蔑の槍です。
今回、コーナーで椅子に座ったまま棄権したサンダースはQUITTER(自分から戦うのをやめたヘタレ)という批判にもさらされています。
ファイターたるもの、斃れてのち止むべし。
自分の血を見るととたんに弱気になって棄権する〝逆ハグラー〟のウーゴ・ルイス。
テレンス・クロフォードに対して致命的なダメージを負ってないにもかかわらず足を押さえて自分から棄権したアミール・カーン。
8ラウンドのまでの公開採点を聞いて棄権したアントニオ・デマルコ。
勝てないとわかると露骨なサバイバルモードで完封負けを甘受するオマール・ナルバエスも、この軽蔑ランキングのレギュラーです。
また、ダウンを喫してトレーナーから「立て!」と発破をかけられながら首を振ったエマヌエル・ロドリゲスもQUITTERに数えて差し支えないでしょう。
今回のサンダースも、ノックアウトやストップされる前に椅子の上で試合を投げました。
グッドマン女史の観点からはもちろんですが、サンダースもQUITTERと軽蔑するのはどうなのでしょうか?
ご存知のようにサンダースはリング誌から「馬鹿PFP1位」に認定されるような愚か者です。
サンダースは、自分から膝をついて試合を放棄したダニエル・デュボアに対して「あいつはQUITTER。俺なら這ってでも戦う」と悪態をついていました。
直前にデッカいブーメランを投げちゃいました。
私も、ウーゴやナルバエスは尊敬できません。井上尚弥への入り方を間違い、大怪我をしたナルバエスはざまあみろ、です。
じゃあ、家族や友達ならどうか?
アリやモラレス、ガッティ、ラファエル・マルケス、イスラエル・バスケスのような家族がいたら…想像しただけで気が狂いそうです。嫌です、あんなの家族にいたら。
逆に、ウーゴやナルバエスが家族なら「よく無事で帰ってきてくれた!」と抱きしめます。
結局、ボクシングファンは、他人の殺し合いを見たいだけの異常者なのかもしれません。
このブログでも何度か登場、書きかけのお話もありますが元ネバダ州アスレティック・コミッション専属のリングドクターで、VADAの創始者です。
リングドクター時代にアジアをフィールドワークした報告書で「アジアの軽量級選手の減量は健康どころか生命を危険に晒している」と警告、その例として挙げたボクサーの中にマニー・パッキャオがいたことは有名です。
リング誌でも、タイトルはその名もズバリ「FIGHT DOCTOR」。上の画像は「VADA:プロボクシングをクリーンなスポーツにするために」(2012年4月号)。
ざ〜っと拙訳。
**********
💉7〜8年前、私はリング誌に選手が目を負傷した時の対応について記事を書きました。
カネロ・アルバレスvsビリー・ジョー・サンダースの試合でもこのことが議論されていることに、少し失望してしまいました。
ボクシングの試合で主審やリングドクターが試合を止める場合、その要因となる情報はしっかり検証しなければなりません。
リングドクター時代、眼窩周囲を腫らして片目で戦う選手を救えなかった自分を恨めしく思ってました。
メディアやファンは顎を割られても戦い抜くモハメド・アリや、眼窩底骨折をものともせずに相手に襲いかかるエリック・モラレスに熱狂し、彼らに賛辞を送ります。
メディアやファンは顎を割られても戦い抜くモハメド・アリや、眼窩底骨折をものともせずに相手に襲いかかるエリック・モラレスに熱狂し、彼らに賛辞を送ります。
しかし①選手が自分の身を守れない、②選手の目が見えていない、③試合続行により後遺症が残るような大怪我につながる、と医学的見地から判断したら即刻試合を止めるべきです。
ボクシングは殺し合いではありません。
ボクシングファンは、試合がリングドクターの助言によって止められることを極端に嫌います。
観客からブーイングを浴びたり、飲み物を投げられてりするのは慣れています。しかし、ファイターから「どうして止めたんだ?」と泣きつかれるのは辛いです。
「死ぬ気で戦ってるんだから死ぬまでやらせてくれ」「今日初めて会った人間に自分の運命を決められてたまるか」…その憤りはわかります。
だから、ファイターには連れ添ったトレーナーの判断には素直に従って欲しいと思います。
あなたの大切な戦いを止めなければならない、そんな重大な危険があるのです。
サンダースのケースもそうでした。
マーク・ティブスは、キャリアがおしまいになるかもしれない怪我からサンダースを守ったのです。ティブスも立派でしたが、サンダースも立派でした。
観客からブーイングを浴びたり、飲み物を投げられてりするのは慣れています。しかし、ファイターから「どうして止めたんだ?」と泣きつかれるのは辛いです。
「死ぬ気で戦ってるんだから死ぬまでやらせてくれ」「今日初めて会った人間に自分の運命を決められてたまるか」…その憤りはわかります。
だから、ファイターには連れ添ったトレーナーの判断には素直に従って欲しいと思います。
あなたの大切な戦いを止めなければならない、そんな重大な危険があるのです。
https://www.youtube.com/watch?v=lPgCsGkky60&t=7s
サンダースのケースもそうでした。
マーク・ティブスは、キャリアがおしまいになるかもしれない怪我からサンダースを守ったのです。ティブスも立派でしたが、サンダースも立派でした。
もしコーナーがその判断をしなかったら、リングサイドの医師がその判断をすることになります。
リングドクターはラウンド間に特に目を診ようとします。
時間とリングサイドに上げる機材が限られているので正確な診断は難しいですが、視力と瞳孔の反応、全方向の眼球の動きを観察し、眼窩を触って異常がないか等をチェックします。
何か一つでも異常があれば、議論の余地はなく、医師は試合を中止するよう主審に勧告しなければなりません。
腫れがひどくなってからでは、遅すぎます。リングドクターの多くは、骨折の場合は瞬時に腫れが始まることを知っています。
※主審は先日の高山勝成vsエルウィン・ソトと同じローレンス・コール。彼の一貫性がない裁きと、メキシコ贔屓は有名です。
時間とリングサイドに上げる機材が限られているので正確な診断は難しいですが、視力と瞳孔の反応、全方向の眼球の動きを観察し、眼窩を触って異常がないか等をチェックします。
何か一つでも異常があれば、議論の余地はなく、医師は試合を中止するよう主審に勧告しなければなりません。
腫れがひどくなってからでは、遅すぎます。リングドクターの多くは、骨折の場合は瞬時に腫れが始まることを知っています。
私はアーツロ・ガッティやモラレスなど、多くの選手の試合を見てきました。
ファンだけでなくメディアまでが、視力が低下しても戦い続けた彼らの不撓不屈の精神に拍手を送りました。
しかし、重大な怪我を負ったまま試合を続行させることは、選手のキャリアを終わらせ、一生視力が低下、ときには失明する可能性もあります。
2010年にマニー・パッキオと対戦したアントニオ・マルガリートは、目の負傷と眼窩骨折で選手生命を絶たれてしまいました。あの試合はどこかのタイミングで止めるべきでした。※
また、私が担当した1995年の試合では、ダニー・ロメロが眼窩骨折、ジョニー・タピアとの待望のタイトルマッチが延期されました。
ファンだけでなくメディアまでが、視力が低下しても戦い続けた彼らの不撓不屈の精神に拍手を送りました。
しかし、重大な怪我を負ったまま試合を続行させることは、選手のキャリアを終わらせ、一生視力が低下、ときには失明する可能性もあります。
2010年にマニー・パッキオと対戦したアントニオ・マルガリートは、目の負傷と眼窩骨折で選手生命を絶たれてしまいました。あの試合はどこかのタイミングで止めるべきでした。※
また、私が担当した1995年の試合では、ダニー・ロメロが眼窩骨折、ジョニー・タピアとの待望のタイトルマッチが延期されました。
眼窩/頬骨の骨折で何が起こるのか?
眼窩は、眼球を取り囲んで保護する骨のカップです。その骨の多くは紙のように薄いので、骨折は2-3箇所で起こることが多いです。
【図1】
眼球外筋の巻き込み【図1】:人間の眼球には7つの筋肉があり、6つは球・眼球を動かし、1つはまぶたをコントロールしています。眼窩底が骨折した「ブローアウト骨折」では、眼筋の一部が挟まれ、複視になったり、上下左右が見づらくなったりします。
このタイプの眼球/頬骨の損傷のその他の徴候には①目のかすみや視力の低下、②眼球結膜(白目の部分)の出血、③眼球の位置が異常で、眼窩の中や外に飛び出している、④頬やおでこのひどい腫れや変形、などが挙げられます。
眼窩への直接的な外傷は、網膜剥離や、最終的に視覚を司る視神経の後遺症を引き起こす危険があるのです。
私はサンダースの眼窩を実際に検査したわけではありません。現時点での彼の医療記録や状態を詳細に知っているわけでもありません。
ただ、トレーナーが介入しなければ、関係者全員が重大な過失を犯してしまう可能性があったことは間違いありません。
ただ、トレーナーが介入しなければ、関係者全員が重大な過失を犯してしまう可能性があったことは間違いありません。
眼窩骨折の場合、緊急に診断と治療を行えば、完治の可能性が一気に高くなります。
試合中に眼窩や頬骨の骨折が明らかになれば…その時点で試合を止めるべきなのです。
試合中に眼窩や頬骨の骨折が明らかになれば…その時点で試合を止めるべきなのです。
※主審は先日の高山勝成vsエルウィン・ソトと同じローレンス・コール。彼の一貫性がない裁きと、メキシコ贔屓は有名です。
グッドマン女史の主張は昔から一貫しています。「自分を弱くするような減量はするな。強くなれ」「後遺症の残る可能性がある怪我だと診断したら即ストップ」。
ただ、グッドマンがリングサイドにいたら、田中恒成や井上尚弥の重傷を負いながらの勝利は無かったかもしれません。
難しい問題です。
メディアとボクシングファンの勝手なワガママが生み出す問題は「まだやれるって選手が言ってるんだから止めるな!」と、もう一つあります。
「まだ出来たのにやめたな?死ぬまで戦う根性がないヘタレは引退しろ」という選手に向けて突き刺す軽蔑の槍です。
今回、コーナーで椅子に座ったまま棄権したサンダースはQUITTER(自分から戦うのをやめたヘタレ)という批判にもさらされています。
ファイターたるもの、斃れてのち止むべし。
自分の血を見るととたんに弱気になって棄権する〝逆ハグラー〟のウーゴ・ルイス。
テレンス・クロフォードに対して致命的なダメージを負ってないにもかかわらず足を押さえて自分から棄権したアミール・カーン。
8ラウンドのまでの公開採点を聞いて棄権したアントニオ・デマルコ。
勝てないとわかると露骨なサバイバルモードで完封負けを甘受するオマール・ナルバエスも、この軽蔑ランキングのレギュラーです。
また、ダウンを喫してトレーナーから「立て!」と発破をかけられながら首を振ったエマヌエル・ロドリゲスもQUITTERに数えて差し支えないでしょう。
今回のサンダースも、ノックアウトやストップされる前に椅子の上で試合を投げました。
グッドマン女史の観点からはもちろんですが、サンダースもQUITTERと軽蔑するのはどうなのでしょうか?
ご存知のようにサンダースはリング誌から「馬鹿PFP1位」に認定されるような愚か者です。
サンダースは、自分から膝をついて試合を放棄したダニエル・デュボアに対して「あいつはQUITTER。俺なら這ってでも戦う」と悪態をついていました。
直前にデッカいブーメランを投げちゃいました。
私も、ウーゴやナルバエスは尊敬できません。井上尚弥への入り方を間違い、大怪我をしたナルバエスはざまあみろ、です。
じゃあ、家族や友達ならどうか?
アリやモラレス、ガッティ、ラファエル・マルケス、イスラエル・バスケスのような家族がいたら…想像しただけで気が狂いそうです。嫌です、あんなの家族にいたら。
逆に、ウーゴやナルバエスが家族なら「よく無事で帰ってきてくれた!」と抱きしめます。
結局、ボクシングファンは、他人の殺し合いを見たいだけの異常者なのかもしれません。



コメント
コメント一覧 (6)
誰かが言ってましたが昔は大物喰って次の試合からはより大きな報酬を得ようと死ぬ気で頑張ったが今はカネロと試合する事が目標 最終到達点になっていて勝敗は二の次になっていると
フシ穴の眼
が
しました
テニスやマラソンの途中棄権でもヘタレという批判は無いと思います。
格闘技にこの様な批判をする人の背景には「フィジカルで何とかなる」「自分でも出来そう」という軽視する心理があるように感じます。
フシ穴の眼
が
しました
どこまで行ってもボクシングやMMAがメジャースポーツになれない理由。
格闘技大好きだけど、ぶっちゃけ職場じゃ言いにくいもんねww
フシ穴の眼
が
しました
全く同感です。ウーゴ・ルイスやナルバエスがもし身内なら?ってお話も。
井上尚弥がパヤノを倒した試合で「秒殺」という見出しが各メディアで踊りましたが、私はこの言葉が大嫌いです。ファイターへの敬意を微塵も感じない。
メディアもファンもそんなレベルなので、そろそろボクシングという前時代的な競技は廃止にしたほうが良いとすら感じはじめました。
それでもまだまだ見たいカードがたくさんあるんですけどね!
フシ穴の眼
が
しました
格闘技はKOが魅せるドラマチックな光景と、それ以外によるアクシデントストップの見た目の落差が大き過ぎるが故に、ストップするタイミングは難しいですね。
骨が破壊されて続行不可能によるストップ、という文脈だと、ストップされた側の弱さが浮き上がってしまうので、強烈な打撃により骨を破壊した為にKO勝ち、といった口語体や映像による文脈表現のチェンジと巧みな印象操作によって、選手が守れたりしないかな、とかも考えてしまいますが、起源として斃れるまでやるんだ、がある以上現実的には無理でしょうな。
フシ穴の眼
が
しました