リプレイ検証が様々な議論を呼ぶのは当然です。

リプレイは試合の事実を正確に捉えることはできますが、勝負の流れを読むことは出来ません。

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2018年4月7日。ラスベガスのハードロックホテルで行われたIBFスーパーミドル級タイトルマッチ。

ジェームズ・デゲールがカレブ・トゥルアックスに雪辱、4か月前にロンドンで奪われたタイトルの奪回に成功した一戦でした。

第3ラウンド、デゲールの右目上がパックリとカット。

主審は、先日のジョシュア・フランコvsアンドリュー・マロニーのリプレイ検証をしたロバート・バードでした。

バードは「「パンチによるカット」とジャッジ 。しかし、主審より離れたリングサイドのボブ・バーネット(ネバダ州アスレティック・コミッション=NSAC担当責任者)から見ても、バッティングがあったのは明らかでした。

試合はデゲールが判定勝ちを収めたものの「明らかな誤審が目の前で起きたことに内臓が飛び出そうになった」というバーネットは、NSACチェアマンのアンソニー・マーネル3世に、1年前から実験的に取り組んでいたリプレイ検証の本格的導入を進言しました。

"I have the utmost respect for them, but referees can't see everything," 

「主審には全幅の信頼を寄せているが、彼らでも全てが見えるわけじゃない。ボクシングはリプレイ検証を取り入れない唯一のスポーツになっている」。

バーネットが旗振り役となって、リプレイ検証のノウハウを確立させるための専門チームが結成されます。

現役・元レフェリーを中心に構成されたメンバーはケニー・ベイレスやジェイ・ネイディ、ジョー・コルテス、トニー・ウィークス、ビック・ドラキュリッチ、リチャード・スティール、そして件のラッセル・モーラ。

さらに、元NSACでレギュレーションの経験を積み、現在はUFCの関連部署で指揮を執るマーク・レイトナーも参加、NSACがマネジメントするリプレイ検証は、順調に経験と実績を積み重ねてブラッシュアップされているように見えましたが…。

正確なリプレイ検証で絶対欠かせないのが様々な角度から撮影することや、主審や選手の声まで拾うことで「反則」があったかどうかだけでなく「悪意」あったかどうかまで推測できるのです。

バーネットのリプレイ検証のための設備面を充実させる提案を、ボクシングをオンエアする米国3大メディアのESPNやShowTime、FOXは好意的に受け止めてくれました。

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その矢先に起きてしまったのが、先日の「幻のヘッドバット事件」です。

2年前に「ヘッドバットをパンチ」と判定したバードは、今度は「パンチをヘッドバット」と見てしまったのです。 

試合直後からメディアの取材に口を閉ざしてきたバーネットでしたが、月曜日になってラスベガスのローカルラジオ番組"TC Martin Show"で自身の見解を語っています。

「14の角度から撮ったカメラから、第1ラウンドに両者の頭が当たった瞬間が 2度あった」としながらも「マロニーのジャブがダメージを大きくしたのは疑いようがない」。

カメラの角度から「頭が接触した場面」 はあるでしょう。しかし、それを言い出すと多くの試合で「このダメージはパンチではなくヘッドバット」がまかり通る事になりかねません。

「選手が頭を押さえるような明らかなヘッドバットではないが、リプレイでは2度両者の頭部が触れ合っている。そしてマロニーのジャブがフランコの右目に数10発命中した」。それが、事実です。

そして、事実を把握して最終的なジャッジを下すのが人間です。

フランコの右目がシャッターを下ろしたのはヘッドバットが原因か?それともパンチか?

マロニーの正確なジャブがなければ、フランコの右目は塞がらなかったのか?それともマロニーのパンチが当たらなくても、右目は腫れて塞がっていたのか?

NSACの不手際、お粗末さは「決定的瞬間のリプレイをすぐに見せなかった」「180秒の検証に約30分も費やした」ことです。

そして、さらに本質的な問題は「ヘッドバットによる怪我」という結論に至る大前提である「選手が頭を押さえるような明らかなヘッドバットではないが、リプレイでは2度両者の頭部が触れ合っている。そしてマロニーのジャブがフランコの右目に数10発命中した」という事実を把握して検証を進めていたのか、ということです。

そうであるなら、マロニーも陣営もあの判定を受け入れるべきです。

しかし、 そうでないなら、もはや「不手際」のレベルではありません。バードらリプレイ検証に関わったスタッフは更迭されてしかるべき無能集団です。

もちろん、バーネットの「44年も前の1976年にいち早くリプレイ検証を取り入れたNFL でさえ日々改善を迫られ、進歩している。まだ散り組み始めたばかりの我々に課題が山積しているのは当然」「リプレイ検証が無かった時代とどちらが良いかは明らか」「いつか完璧になるのか?NFLですらそうはなっていない。だから、改善しながら完璧に近づけていくのだ」という言葉には納得です。

ただ、今回の問題は主審と検証担当の能力が低かったことが最大の問題だと思うのは、彼らの〝前科〟から生じる偏見や気のせいでしょうか?